手塚治虫「ばるぼら」単行本未収録作をふくめオリジナル版で初刊行!

稲垣吾郎、 二階堂ふみ主演にて、 2020年に映画公開が予定されている『ばるぼら』。 この作品は1973年から74年にかけて、 小学館の雑誌『ビッグコミック』に連載された作品である。

人気小説家・美倉洋介の元へ、 ある日新宿で知り合ったフーテンの少女バルボラが転がり込んでくる。 じつはバルボラには不思議な力があり、 彼女がつきあう芸術家はその才能が大きく開花するのだ。 だが彼女に見捨てられた芸術家はスランプに陥り地の底へと落ちていく。 1970年代という混沌とした時代を背景として、 芸術とは何か、 創作とは何かというテーマに手塚が真正面から挑んだ意欲作である。 1970年代以上に混沌とした現代……明るい未来がまったく見えず不安と迷走の中を生きる現代人にこそ読んでもらいたい名作だ。

手塚は1960年代から70年代にかけて、 『ビッグコミック』など主に青年コミック誌に発表した一連の作品の中に、 人間の欲望や悪の心を赤裸々に描いた作品が多くある。 近年、 そうした人間のダークな側面にスポットを当てた手塚作品群に注目が集まっている。 その作品の中でも『ばるぼら』は、 物語の完成度やテーマの深さ、 表現の鋭さなど、 あらゆる面でこれら一連の作品の中核を成す代表作と言える傑作なのである。

本書は、 その『ばるぼら』を雑誌連載当時のまま復元し「オリジナル版」として刊行する初の単行本となる。 判型を雑誌と同じB5判とし、 過去の単行本に収録されなかったトビラや削除されたページなど全て連載時のまま復元。 単行本化の際に改変されたり削除されたセリフも全てオリジナルに戻している。製版のための原本には、 手塚プロダクションに保管されていた手塚治虫の生原稿を使用。 最新のデジタルスキャンで版を起こし、 最盛期の流麗な手塚タッチを雑誌掲載時をはるかに超えたクオリティで完全再現している。 ただしごく一部の失われたカットについては雑誌からスキャンして復元することで、 あくまでも連載オリジナル版にこだわっている点も強調しておきたい。

巻末には全集未収録、 単行本初収録の大人向けダークファンタジー短編5編を収録。 1960年代から70年代という時代を手塚がどう見ていたのか、 どのような世相の中で『ばるぼら』が描かれたのか、 その参考の一助となるような作品群を厳選している。 『ばるぼら』を読み解く資料として、 16ページにわたる解説とコラムも充実。

・『おいつめられた男』(1963年)※単行本初収録

・『異法人』(1969年)※全集未収録

・『大松右京のラプソディ』(1973年)※単行本初収録

・『ゴミ戦争』(1973年)※全集未収録

・『人身御供』(1976年)※単行本初収録

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