佐世保で質屋が外国人に人気? 東南アジアの国出身者 存在浮上 新たなビジネスチャンスも

外国人の訪問が多い佐世保の質屋。取り扱うのはジュエリー類が多い=佐世保市常盤町、ぜに屋佐世保店

 佐世保では質屋を利用する外国人が多い、といううわさを耳にした。取材してみると、東南アジアのある国の経済事情と、新たなビジネスチャンスが眠っていることが浮かんできた。

 長崎県佐世保市常盤町のぜに屋佐世保店。ネックレスや指輪がショーケースに並べられていた。「常連は東南アジア系。ジュエリーを持ってくる人が多いです」。こう話すのは奥村大夢(ひろむ)店長。月500件の利用のうち、3割は外国人という。ほとんどは東南アジア系だ。本店(長崎市)の外国人の割合は1割に満たない。

 質屋は担保となる品物を預かり、それに見合った金額を融資するシステム。このほか指輪や時計といった品物を売買する店もある。奥村店長によると、東南アジア系の利用者は数万円から数十万円相当の品物を預け、お金を借りる場合が多いという。「生活費といった感じ。日本人より気軽に利用している」
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 さらに調べると、ある国の存在が浮上した。

 実は、佐世保にはフィリピン人が多く暮らしている。佐世保市国際政策課によると2018年度末現在、米海軍関係を除き住民票のある外国人では2番目に多い335人(全体の18.7%)。2013年度(167人)と比べ約2倍に増えている。

 フィリピン人はなぜ質屋に通うのだろう。

 佐世保市在住のフィリピン人、ジン・サラメラさん(46)は「ジュエリーが好きで、本物を安く手に入れられるから、よく利用する。売れば簡単にお金が手に入るので、便利な場所」と語る。

 フィリピン経済に詳しいアジア経済研究所開発研究センターの柏原千英・主任調査研究員は「質屋はフィリピン人にとって、親族・友人に次ぐ、身近な借入先の一つ」と説明する。柏原氏によると、フィリピンには約1万2千店の質屋がある。日本の約1600店(全国質屋組合連合会)と比べ約8倍に上る。

 フィリピンでは、所得が不安定なため銀行口座やクレジットカードを持てない成人が約7割を占める。質屋で家電や時計、貴金属などを担保にして借り入れをする人もいる。「借り手の情報を適切に管理すれば、日本でも顧客層になり得るかもしれない」。柏原氏は分析する。

 身近に感じなかった質屋だが、世界中に浸透したビジネスモデルという。自分の持ち物の価値が気になってきた。

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