『増補20世紀メディア年表+21世紀』江藤茂博編著 あの年の流行やヒット

 年表は面白い。何年に何が起こったかを羅列した文字列を眺めているだけで、思わぬ発見や驚きがある。20世紀の文化や流行、ヒット情報をふんだんに盛り込んだ本書。つい読みふけってしまう。

 1901年から平成が終わる2019年までの各1年間の出来事を(1)映画・アニメ(2)IT・テレビ(3)文芸・出版(4)芸能・サブカル(5)社会・世相の5ジャンルに分けて見開きで表示している。

 ふーん、へー、ほほーの連続だ。1901年、電話交換手はすべて女性となり、東京・日本橋に赤い郵便ポストが初めて置かれた。1930年代から文化・芸能が次々「禁止」「統制」されるなか、小津安二郎の映画は年間数本公開されている。41年「国策に合う美人を認定する新女性美制定第1回研究会開催」とある。なんだ、これは?

 ジャンルを横断して眺めると、その年が立体的に立ち上がる。阪神・淡路大震災と地下鉄サリン事件が起こった95年、アニメ「新世紀エヴァンゲリオン」の放送が始まり、野茂英雄がメジャーデビューした。

 編著者の“偏向”や項目の“欠落”を見つけるのは、ちょっと意地悪な年表の楽しみ方だ。江藤淳の著作はいくつかあるが、小林秀雄の著作が見つからない。「ニュースステーション」の放送開始(85年)、名作漫画の萩尾望都『ポーの一族』(74年)や岩明均『寄生獣』(90年)の記述がない——。

 20世紀はメディアが進展し、それに伴う文化が爆発的に開花した100年だった。私たちはそのただ中を生きてきたことをあらためて知る。

(言視舎 2200円+税)=片岡義博

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