デグロムは昨年10勝9敗でサイ・ヤング賞を受賞した
ナショナル・リーグのサイ・ヤング賞はニューヨーク・メッツの右腕、ジェイコブ・デグロム投手が受賞した。2年連続2度目。成績を見るとかなり異色の受賞といえる。
サイ・ヤング賞は沢村賞とは異なり、先発投手だけでなく救援投手も選考の対象になる。救援投手の中には10勝以下でサイヤング賞を受賞した例もあるが、先発投手ではそういう例はなかった。
サイ・ヤング賞受賞の先発投手の勝利数 少ない方から5傑
1 10勝9敗 2018年 ジェイコブ・デグロム(メッツ/ナ・リーグ)
2 11勝8敗 2019年 ジェイコブ・デグロム(メッツ/ナ・リーグ)
3 13勝7敗 1981年 フェルナンド・バレンズエラ(ドジャース/ナ・リーグ)
3 13勝12敗 2010年 フェリックス・ヘルナンデス(マリナーズ/ア・リーグ)
5 15勝7敗 2009年 ティム・リンスカム(ジャイアンツ/ナ・リーグ)
デグロムは、これまでにない少ない勝ち星で投手最高の栄誉であるサイヤング賞を2年連続で受賞したのだ。
かつてはMLBでも「20勝投手」は、優秀な投手の代名詞だったが、セイバーメトリクスが広く受け入れられるようになってから「勝利」は、「運」の要素が強く、必ずしも投手の実力を反映した指標とはみなされなくなっている。
ナ・リーグの投手勝利数
1 S・ストラスバーグ(ナショナルズ)18勝6敗 209回 防御率3/32
2 M・フリード(ブレーブス)17勝6敗 165回2/3 防御率4/02
3 D・ハドソン(カージナルス)16勝7敗 174回2/3 防御率3/35
4 C・カーシヨウ(ドジャース)16勝5敗 178回1/3 防御率3/03
5 L・カスティーヨ(レッズ)15勝8敗 190回2/3 防御率3/40
18 J・デグロム(メッツ)11勝8敗 204回 防御率2/43
変わる評価基準、勝利数よりもセイバー系の新たな指標をより重視する傾向
ナの最多勝はナショナルズのストラスバーグ。デグロムは18位タイだった。勝敗差もわずか「3」で、これだけを見ればチームへの貢献度も高いとは言えない。しかし、多くの指標でデグロムはリーグ上位につけている。()はリーグ順位。
防御率 2.43(2)
投球回 204回(3)
奪三振数 255(1)
奪三振率 11.3(4)
WHIP※ 0.97(2)
被打率 .207(4)
※1イニング当たりに被安打、四死球で許した走者数。
そして打撃、投球、守備の総合指標であるWARではこうなる。
1 J・デグロム(メッツ)7.3
2 S・ストラスバーグ(ナショナルズ)6.3
3 J・フラハーティ(カージナルス)5.9
4 M・シャーザー(ナショナルズ)5.8
5 M・ソロカ(ブレーブス)5.7
ナ・リーグのサイヤング賞投票では、デグロムは207.0ポイントを獲得。2位のストラスバーグは53.0ポイントだから、圧勝だった。MLB担当記者は、11勝投手のデグロムを圧倒的に指示したのだ。
この投票結果から、現在のMLBのジャーナリズムが、勝敗など従来の指標ではなく、セイバー系など新たな指標をより重視していることが端的に表れている。このあたりも日本とは大きく違うと言えるだろう。(広尾晃 / Koh Hiroo)