「お足」はどうか

 交通費を「お足(あし)代」という時がある。足は車などの移動手段を指している。「お足」ならば俗にお金のことをいい、まるで足が生えたかのように行ったり来たり、財布を出たり入ったりするからといわれる▲すばしっこく逃げる「お足」を後ろから追い掛ける。江戸の昔、追う方も、追われる方も、韋駄天(いだてん)のように走ったのは、おそらくこの時期から年の瀬にかけてのことだったろう▲代金はツケにして、盆や暮れに集金する「掛け売り」が普通だったという。歳末が近づくと取り立てる側は勇み立ち、相手はどうにかして逃げ回る。激しい攻防もあったらしい▲そのためか、江戸の呉服屋は掛け売りなしの即売に乗り出した。「現金安売り」と称して繁盛したという。今でいうと、店舗の「大創業祭」などが関心を引く売り文句だろう▲この時期、米国の年末商戦の号砲となる「ブラック・フライデー(黒字の金曜日)」にちなんだセールも流通、ネット通販などで少しずつ広がっている。「黒字」といくかどうか▲売り上げが振るわないとされる11月の商戦に火がつけばいいが、歳末、正月にかけて安売りが連続すると効果は薄まるとも聞く。「お足」の駆けっぷりはどうだろう。繁盛を願い、小欄の「黒い三角」を右肩上がりに並べてみたが、効果の程は保証できません。(徹)

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