その日は突然やって来る、「親の介護」は初動が大事

超高齢化の時代となり、親の介護について心づもりをしている人は多いことでしょう。

介護離職は社会問題にもなっています。しかし、頭ではわかっていても、実際に介護が必要になった時に何から手をつければいいのか分からない人もいるのではないでしょうか。


病院の相談室を活用しよう

先日、筆者の母が入院したことで、初めて介護保険の要介護申請を経験しました。制度について、頭では理解しているつもりでしたが、何から手をつければいいのか戸惑ったこともあり、今回は介護保険についてお話しさせていただきます。

筆者の両親はともに80代。意思能力に問題はなく、日頃は夫婦2人で自立して生活をしています。

今回、母が足の外科手術で入院することになりました。当初、術後10日程度で退院できるだろうと軽く考えていたところ、退院まで約1ヶ月かかることが手術後に判明したのです。

そこで改めて、自宅で1人暮らしをすることになった父や、退院後の母が自宅で日常生活を送るには暫くは介助が必要ではないかと感じました。

この状況を誰にどうやって相談をすればいいのか?ネットで検索してみましたが、断片的な情報は得られるものの要領を得ません。そこでたまたま思い出したのが、病院内で働くソーシャルワーカーの存在です。

早速、母の病院でソーシャルワーカーに相談できるか確認をしたところ、病院内の「医療福祉相談室」 に所属する看護師の方に退院までサポートをいただけることになりました。

筆者の家と実家は比較的近距離ではありますが、行き来するには1時間以上かかります。仕事をしながら毎日通うことは厳しい状況です。家族の現状を含めて相談したところ、介護サービスを利用も必要となるだろうから、高齢者相談センター(地域包括支援センター)の窓口に相談することを勧められました。

このように右も左もわからない状況で、入院中の病院内で母の状態も把握した上でのアドバイスを受けることができたことは大きな安心につながりました。

この経験からお伝えしたいことは、親が入院しているうちに、「医療福祉相談室」(病院によって名称は異なるかと思います)などにまずは相談されることをオススメします。

介護保険を使うにはどうしたらいいの?

介護保険の仕組みを見てみましょう。介護保険を利用するといろいろな介護サービスを自己負担1割〜3割で受けることができます。

40歳以上の人であれば、毎月の健康保険料から介護保険料を合わせて納めているのはご存じでしょう。介護サービスを利用できる区分は年齢によって2種類に分かれています。

上表を参照するとお分かりかと思いますが、介護サービスは誰でも利用できるわけではありません。市区町村から派遣された認定調査員が審査を行い、面談をして、「介護が必要な人」と認定を受けて初めて利用できるのです。認定は、以下の手順で行われます。

申請 → 認定調査員による訪問調査 → 介護認定審査会で判定 → 認定結果の通知

申請から認定まで筆者の母の場合は約3週間かかりましたが、大体、3週から4週で結果がわかるようです。

介護認定前に介護サービスが必要な場合はどうするの?

高齢者相談センター(地域包括支援センター)に相談し母の要介護認定の申請を行うことになりました。結果的に要介護1と認定されたのですが、認定前から介護サービスを利用することになりました。

退院時の介助や退院後の通院介助にヘルパーをお願いしたのです。この段階では介護認定を受けていないので、全額私費扱いでの利用になります。ちなみに利用料金は1時間当たり3,000円でした。

ヘルパー介助を利用するに当たっては、まずはケアマネージャーを探してサポート依頼から始めるのです。親の介護をしている友人たちに聞いたところケアマネージャー探しが重要とのことでしたが、実家の周りで介護サービスを利用している人はいないため口コミ情報を得られず、残されたのはローラー作戦でした。

高齢者相談センターで手に入れた事業者リストを片手に1件ずつ連絡をしてなんとかケアマネージャーを確保しました。その後はケアマネージャーを中心に、父と母、ヘルパー、高齢者相談センター担当者、病院の医療福祉相談室・担当者と適宜面談を行い、介護認定が出た後に居宅介護支援事業所と契約を交わし無事に介護サービスを受けることができるようになったのです。

介護認定が出るまで私費利用になる可能性も抱えながら介護サービスを利用することになるため、利用する介護サービスについてはケアマネージャーとよく話し合いました。

もちろん介護認定が出れば、申請時に遡って介護給付を受けることができます。介護給付については、介護度合いに応じて1ヶ月当たりの利用可能な上限額が決まり、交付される負担割合証に基づき利用者負担分を支払うことになります。

介護サービスを初めて利用するには数回に渡る面談や書類のやり取りが必要となりますので初めての場合は大変に思われるかもしれません。また、行政によっては独自の高齢者在宅サービスを提供しています。

筆者の母の場合、要介護1〜5に「通院支援サービス」があったので、通常は介護保険サービス対象外のサービスに介護給付があり自己負担が軽くなりました。

現状、親の介護が必要でない場合にも、親の居住地域の地域包括支援センターの場所を確認すること、そして、高齢者サービス関連の冊子に目を通しておくことを筆者の体験を通してオススメしたいと思います。

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