AI・ビジネス専攻を新たに設立する麗澤大学が目指す人材育成とは?

麗澤大学は2020年4月から、従来の経済学部経営学科会計ファイナンス専攻をリニューアルし、AI・ビジネス専攻としてスタートさせることを発表しました。それに先駆けて2019年9月には、麗澤大学AI・ビジネス研究センターを新たに設置するなど、着々と準備を進めています。AIとビジネスという斬新な組み合わせによる教育コンテンツの確立を目指す同大学には、どのような狙いがあるのでしょうか。

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麗澤大学が新たに設置するAI・ビジネス専攻で目標に掲げているのは、AI技術をビジネスや金融などの分野に応用できる文理融合人材「AIビジネスプランナー」の育成です。近い将来、日本ではIT技術者が慢性的に不足することが予想されていますが、少子高齢化や人口減少などの社会問題に対処するためには、AIを駆使したソリューションを提案できる人材の育成が不可欠だと同大学では考えています。AI技術そのものを研究・開発するハイエンドのエンジニアではなく、AIを社会の中にどのように組み込んで、ビジネスに応用していくかを発想することのできるミドルクラスのスキルを有する人材育成を中心に据えているのが、このAI・ビジネス専攻の特徴です。特に、企業の統計分析やマーケティング部門、金融機関、IT関連企業などで、こうしたAIビジネスプランナーと呼ばれる人材が今後求められるようになる、と同大学は予測しています。

AI・ビジネス専攻では、数学、統計学、プログラミングなどの基礎科目を通じて、AIを実現する手段の一つである機械学習の原理を理解・応用できる知識の習得を目指します。同時に、実社会でAIをビジネス分野に応用している著名な研究者や経営者を招いての講義「AIビジネス入門」も実施し、AIを学ぶ際に心がけるべき課題についての理解を促進します。

また、同大学が従来から重視している会計と英語に関するカリキュラムも、さらに充実させていくとのこと。学生が卒業するまでに、ITやAIに関する資格と金融系の資格を2つ取得する「ダブル・クオリフィケーション」を達成することを目標に掲げています。資格取得のために、すでに資格を取得した学生の先輩によるサポートや教員による授業時間外の指導なども積極的に行っていきます。

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2019年11月12日には、麗澤大学AI・ビジネス研究センターの設立を記念した公開講演会が、同大学内で開催されました。徳永澄憲学長と上村昌司経済学部長の挨拶の後、同大学の特任教授でAI・ビジネス研究センターのセンター長を務める清水千弘氏による基調講演「失われる職業・AIは人間を超えることができるのか?」が行われました。

清水氏は、AI技術のこれまでの歩みをふりかえりながら、ビッグデータやディープラーニングなどの先端技術によるAIの飛躍的な発達と、多種多様なデータの蓄積と速やかな分析によって「見える化」された社会のさまざまな事象や側面が、人間の判断に大きな影響を及ぼすことなどについて、豊富な事例紹介を交えて解説しました。AIによる新たな価値観が複数もたらされる「マルチラリティ」の時代に適応し、新たな文化を作り出していくには、社会の中でAIをいかに使いこなすかをデザインすることのできる人材が必要になる、と清水氏は話しています。

麗澤大学がAI・ビジネス専攻で挑戦する新たな教育プログラムは、これからのIT社会に欠かせない人材の育成につながることが期待されています。

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