今年は不調も明治神宮大会で“復活”「この試合、楽しかった!」
ソフトバンクからドラフト3位指名を受けた津森宥紀投手(東北福祉大)が26日、仙台市内で入団交渉を行い、契約金6000万円、年俸1100万円で合意した(金額は推定)。
大学野球を引退してから10日。ソフトバンクのユニホームに袖を通し、帽子をかぶった津森は「実感が湧いてきました。少しずつプロの世界に近づいてきている感じはあります」と笑顔を見せた。
和歌山東高から東北福祉大に進学し、1年春からマウンド経験を積んできた。リーグ戦や大学選手権で腕を磨き、2、3年と侍ジャパン大学代表で日の丸も背負った。昨年の大学選手権では大黒柱として14年ぶりの優勝に貢献。全4試合、18回2/3で防御率0.00の好成績を収めた。
ところが、さらなる飛躍を期待された今年は不調に陥り、秋には右手人差し指を痛めた影響などで本来の投球ができなかった。「強気の投球」が持ち味だが、気持ちは空回りした。それでも、リーグ戦の最終節で人生初の満塁弾を浴びて「スッキリした」。明治神宮大会の東北地区代表決定戦、大会前のオープン戦で復調の兆しを見せると、今月16日の明治神宮大会初戦(東海大戦)で「魂の50球」を披露した。
東北福祉大は5-8の7回表に同点に追いつき、その裏、津森の出番が回ってきた。この日のストレートはキレが抜群で、東海大打線を寄せ付けなかった。7、8回で5つの三振を奪うパーフェクトピッチング。味方の援護を待った。
しかし、勝ち越しができない。そうこうしているうちに9回。1死から味方のエラーやミスが続発。2死満塁とされた。そして、50球目のストレートで投ゴロに打ち取ったが、打球は高く跳ねた。津森自らが冷静に捕球し、一塁へ送球したが、やや逸れてセーフ。8-9のサヨナラ負けで、津森の大学野球が終わった。
打者12人で打たれた安打はゼロ。四死球もゼロで三振は6つ奪った。自責点もゼロながら、失点1で負け投手。試合には敗れたが、プロに向けて希望は見せた。「この試合、楽しかったです!」。大会後、津森はそう言った。
守護神・森の“弟子入り”志願、甲斐野からも「この1年どうだったか聞いてみたい」
ソフトバンクは、チームにはいない右のサイドスロー、気持ちを前面に出した「ケンカ投法」、球持ちの良さを評価して指名した。今年の不調も織り込み済みだったため、仮契約の席で福山龍太郎アマスカウトチーフは「神宮大会で復調してきた。持ち味のボールの強さと投げっぷりの良さが存分に出ていたと思うので、改めていい縁があってよかったなと思いますね」と安堵。そして、プロ入り後に身体作りをすることで「球威もプラスアルファで出てくる」とさらなる成長を期待する。
「持ち味を生かして抑えたい」と西武打線との対戦を望んだ津森。中村剛也内野手や山川穂高内野手と右の大砲が並ぶだけに、福山アマスカウトチーフも「一番の強敵・西武さんのクリーンナップといい勝負をしてほしい。小細工や出し入れではなく、球威で圧倒していくような形でどんどん投げ込んで、バッターが嫌がるくらい胸元を突くピッチングをしてほしいですね」と話した。
役割については「理想とする働き場所は勝ちゲームのセットアッパー」と福山アマスカウトチーフ。津森もその自覚は十分で森唯斗投手への弟子入りを志願する。「どのように身体のケアをしたり、試合に合わせていったりしているのかなどを聞いてみたいです」。ルーキーイヤーの2014年から6年連続で50試合以上に登板する守護神から心得を学ぶつもりだ。
また、心強い“先輩”もいる。ルーキーながら65試合に登板した甲斐野央投手とは大学代表でチームメイトだった。プレミア12を観戦しながら改めて「凄いな」と尊敬。「この1年どうだったかを聞いてみたい。一緒に活躍したいなと思っています」と再会を心待ちにしている。津森は2、3年と大学代表を経験したが、4年生の今年は選出されず、悔しい思いをしただけに「そこでも、一緒にプレーしたいなという気持ちがあります」と将来の侍ジャパン入りも視野に入れる。
成長の階段を登ってきた東北福祉大のユニホームを脱いでから3日後、津森は練習を再開した。陸上トラックを3キロ走るが、設定されている12分を切ることができない。「短距離や中距離はいいんですけど、長距離は苦手」と、マウンドとは逆に弱音がポロリ。1年目の目標は「1軍にいって、中継ぎをしっかりと任せてもらえる投手になりたいです」と津森。3キロのタイム走もプロでの活躍につながる1歩だ。(高橋昌江 / Masae Takahashi)