
病気を治療しながら働く人に対する支援について考えるセミナーが長崎市内で開かれ、がんを経験したサッポロビール(東京)人事部プランニング・ディレクターの村本高史さん(55)が講演した。「治療と仕事の両立支援は企業にとって大きなチャンスになる」と積極的に取り組むように呼び掛けた。
村本さんは10年前に頸部(けいぶ)食道がんを発症。8年前に再発し、声帯を含む喉頭を全て摘出した。
村本さんは、企業が両立支援に取り組む利点として、生産性の維持のほか、安心して働ける環境を保証すれば社員の士気向上につながることなどを挙げた。両立支援は、まずは本人の気持ちに寄り添い、対話を大切にすることが重要だと指摘。周囲の業務負担が増えないように配慮することも必要と述べた。
サッポロビールの取り組みも紹介。仕事を続けながら治療する場合と休職する場合を併記したガイドブックを作成したことや、治療との両立に便利な短時間勤務制度を導入したことなどを説明した。
セミナーは21日に長崎労働局が初めて開催。長崎県内企業の人事担当者ら約80人が参加した。同局によると、労働者の定期健康診断で、2018年の本県の有所見率は62.4%と、全国平均の55.5%を大きく上回っており、疾病を抱えながら働く人の増加が懸念されている。