新幹線殺傷初公判「殺すつもりでやった」 起訴内容認める

殺傷事件を受け、小田原駅に長時間停車した東海道新幹線のぞみ265号=2018年6月9日午後11時半ごろ、小田原市

 新横浜-小田原間を走行中の東海道新幹線で昨年6月、乗客の男女3人が殺傷された事件で、殺人や殺人未遂などの罪に問われた無職小島一朗被告(23)の裁判員裁判の初公判が28日、横浜地裁小田原支部(佐脇有紀裁判長)であった。被告は「殺すつもりでやった。間違いありません」と述べ、起訴内容を認めた。

 検察側は冒頭陳述で、被告の生い立ちを説明。両親との仲が良好とは言えず、祖母宅に引き取られた後も家出を繰り返していたとした上で、「被告はいつしか、社会内で一人で生きていくことが難しいと感じ、刑務所に入りたいと思うようになった」と述べた。事件の半年前から、被告が祖母宅を出て長野県内の公園などで寝泊まりする生活をしていたことも明らかにした。

 凶器のなたは事件前日に同県内のホームセンターで購入したと指摘。事件当日は岡谷駅から東京駅に移動した後、新横浜-名古屋間で犯行に及ぶことをあらかじめ計画して新幹線に乗り込んだとし、周到に準備を進めてきた無差別殺人との見方を強調した。

 検察側によると、被告は17年に2度、精神科病院に入院。発達障害と診断されたが、起訴前の検察側の精神鑑定では他者に対して不信感を募らせる猜疑(さいぎ)性パーソナリティー障害の診断にとどまり、検察側は「障害の影響を過大に評価すべきでない」と強調した。

 弁護側は「事実関係に争いはない」としつつも、背景事情を巡って検察側と認識が異なる面があり、今後の被告人質問などで明らかにしていきたいとした。

 起訴状などによると、被告は昨年6月9日夜、東京発新大阪行きのぞみ265号(16両編成)の12号車で、20代の女性2人をなたなどで傷つけ重軽傷を負わせ、止めに入った兵庫県尼崎市の会社員梅田耕太郎さん=当時(38)=の首や足を切りつけるなどして殺害した、とされる。

 罪状認否で被告は、女性2人に関して「残念なことに、殺し損なった」と、梅田さんについては「見事に殺しきった」とも述べた。

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