松田龍平が芥川龍之介役で大きい収穫も「作品はウィキペディアで…」

NHK総合、BS8K、BS4Kで12月30日に同時放送される「ストレンジャー~上海の芥川龍之介~」(午後9:00)の試写会が行われ、主人公の芥川龍之介を演じた松田龍平、脚本の渡辺あや氏らが登壇した。

本作は、今から約100年前の1921年に、大阪毎日新聞の特派員として中国・上海を訪れた芥川の姿を、その紀行文をまとめた「上海游記」をもとにドラマ化したもの。映画「十三人の刺客」で日本アカデミー賞最優秀撮影賞を受賞した北信康氏を撮影監督に迎え、ほぼ全編にわたり上海で撮影された。英語字幕をつけた国際放送版も制作され、芥川の小説世界と当時の中国の現実を交錯させながら、20世紀に刻まれた日中の精神的交流を世界に発信していく。

完成した作品を見た松田は「とても見応えがあって満足しています」と感想を語り、「100年前の上海にタイムスリップしたようなすてきな経験をさせていただきました」と笑顔。そして、旅を通して芥川が得たものが、どういったものだったと想像するか聞かれると「この旅の6年後に彼は自殺をしてしまうのですが、そのことがずっと胸の中にありました。最後に着ていた服が上海で買ったお気に入りの服だったのはなぜだったのか考えたんですが、物語の最後に花の匂いをかいで、いい匂いだと感じる部分がありますが、(いい匂いだと感じたのは)やっぱり生きていたいと思っていたからなんじゃないかなと思いました」とその心境を推測。

また渡辺は「混乱する上海でさまざまな経験をしたことで、それまでは政治についての議論には加わらなかった彼が、考えざるをえなかった、語らずにいられなかったんだと思います。それまでしてこなかったことをしたということを思うと、作家としても人間としても最後に命を燃やした瞬間だったのではないかなと思います」とイメージしながら執筆作業にあたったことを明かした。

また、役作りについて松田は「芥川にとって初めての海外だったので、僕が初めて海外に行った時はどうだったかなと考えました。あまり日本人のいない場所で視線を感じたり。1人の男として違う環境に行った時に人として何を思うのか考えました」と自分に引き寄せながら演技していたそう。中国での撮影については「180人ぐらいの中国スタッフが協力してくれたんですが、とにかくパワーがすごかった。言葉も通じない中、日本のスタッフと協力しながら、“いい作品を作りたい”という一つの目的、一つの気持ちがあるだけで、言葉の壁を悠々と越えていました。中国のスタッフの方々は現場でずっと叫んでいるような感じで。日本のスタッフもその影響を受けながら撮影していて、最後の方は声がかれちゃっている人もいました(笑)。僕の共演者も中国の役者さんがほとんどでしたが、とても楽しかったです」と撮影を振り返った。

さらに「芥川の印象や、なじみのある芥川作品は?」との質問に、少し間をおき、「困ったなあ…」と小さな声でポツリ。続けて「あまりなじみがなかったというか。なのでWikipediaをたくさん見て調べたり…本当に恥ずかしいんですが、それぐらいです」と照れ笑い。最後は「芥川の人生の中でもほんの短い旅の話なんですが、短くて、それでいて濃厚な上海の旅を演じることができたのは、僕にとって大きい収穫だったんじゃないかな。そうポジティブに考えています(笑)」としみじみと語っていた。

© 株式会社東京ニュース通信社