北朝鮮、重犯罪者の恩赦を実施も意図は不明

北朝鮮当局は先月初め、大規模な特別赦免、つまり教化所(刑務所)で受刑している人を減刑または釈放する恩赦を取った。しかし、通常とは異なって特別な理由なく行われた措置で、その意図をめぐって議論を呼びそうだ。

この情報を伝えた咸鏡北道(ハムギョンブクト)のデイリーNK内部情報筋によると、赦免が行われたのは10月初め。「元帥様(金正恩党委員長)のご配慮」という理由で、突如として赦免が実施され、主に長期間収容されていた人が釈放された。市民は「一体何が起こっているのかわからない」と首を傾げている。

北朝鮮は、太陽節(4月15日の金日成主席の生誕記念日)、光明星節(2月16日の金正日総書記の生誕記念日)、朝鮮労働党創建日(10月10日)、人民政権創建日(建国記念日、9月9月)などの政治的に重要な記念日や、整周年(5や10で割り切れる年)などに赦免を行ってきた。

例えば、2015年には、8月15日の光復(日本の植民地支配からの解放)70周年と、10月10日の2回に分けて赦免が行われた。歓迎する声が上がった一方で、対象者が少なすぎる、刑期が短い人、栄養失調などの病気になった人ばかりが対象となっているなどと言った不満の声も上がった。

しかし、今回は刑期の長い服役者を主な対象としている点で従来の赦免とは異なっているという。例えば、清津(チョンジン)で乱闘事件を起こし、相手に怪我をさせて懲役15年の判決を受けて服役していた30代男性が6年で出所することになった。このように、重い犯罪を犯して5年以上服役していた若い世代の服役者が釈放された。

教化所当局は、赦免の対象者に「金正恩氏の愛とご配慮」などという内容の教育を、釈放の2ヶ月前から毎朝、行ったという。

「元帥様のご配慮で生まれ変わったのだから、社会復帰しても萎縮することなく昔のことは忘れて一所懸命働け」、「今からでも遅くないから、党が要求する通りに熱心に働けば労働党にも入れて真人間になれる」などといった内容だった。

保安署は、再犯防止のために統制と教育を随時行い、政府の指示で職場への配置もすぐに行われる予定だという。

今回の赦免については、国際社会からの人権問題の提起を意識したか、あるいは国際社会の制裁で資金、食糧などが不足し教化所の運営に問題が生じている、など様々な理由が考えられるが、今のところハッキリしたことはわかっていない。


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