核廃絶への思い短歌に込め 元教諭の上田さん 歌集「生きる!」出版 南島原で精力的に平和活動

自費出版した歌集を手にする上田さん=南島原市口之津町

 長年、平和活動に取り組んでいる熊本県出身で元中学教諭の上田精一さん(82)=長崎県南島原市口之津町在住=が初めての平和歌集「生きる!」(青風舎刊)を自費出版した。2004年以降に詠んだ約2千首の中から600余首を厳選。反戦平和と核廃絶への思いを短歌に込めた作品で「私の遺言のようなもの。これからの国を担う若い世代に読んでほしい」と話している。

 国語の教員だった上田さんは、作文や演劇などの指導を通して平和教育に取り組んできた。退職後も勤務地だった人吉市で護憲を掲げる九条の会の活動をけん引。映画上映などの文化活動にも関わった。

 元々「万葉集」や石川啄木、与謝野晶子らが好きだった。知人の勧めで04年に本格的に短歌を始め、新日本歌人協会に入会。毎月、8首投稿するなど約15年で2千首を詠んだ。

 体の自由が利かなくなる重い病と闘う妻、廸子(みちこ)さん(80)との夫婦2人での生活が困難となり、昨年1月に次女の嫁ぎ先の南島原市に妻とともに転居。現在は介護の傍ら、県映画センター理事や九州平和教育研究協議会副会長を務めるなど新天地で精力的に活動を継続している。

 歌集は9章に分けて収録し、各章にエッセーを入れ、詠んだ背景も解説。第3章の「寂(せき)として日本政府の声なしICANノーベル賞受賞の報に」や、第4章の「頭(かしら)から魚は腐るの謂(いい)もあり政権腐敗はまさに極まる」など、その多くが反戦平和や世相を詠んでいる。

 また、廸子さんが詠んだ60余首も第2章「共に生きて」に収めた。中でも「私の人生を表している一首」と言うのが、あとがきにある「生ききたるジグザグ道のわが行路ただ真っ直ぐは反戦の道」だ。

 上田さんは「最初で最後の歌集。憲法9条が空洞化されていく現状にいたたまれなかった。蟷螂(とうろう)(カマキリ)の斧(おの)かもしれないが、あえて世に問うた。9条が生かされる世の中になれば」と願っている。

 歌集は四六判、235ページ、2千円(税別)。全国の書店で注文、購入できる。

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