否定の連続、自尊心失う

第1部 そこにある病理 幼少期(2)親子関係

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池本さんは取材に応じた理由をこう明かした。「親から逃げてもいいよって伝えたい。頑張りすぎたら、病気になるよ」(本文と写真は関係ありません)

 ツイッターでつぶやくことが生活の一部になっている。

 〈今日はメンタルちょっとつらいな〉。心のままにスマートフォンの画面をなぞると、すぐに反応が返ってくる。〈好きな音楽を聴いて癒やされて〉〈運転に気を付けてね〉

 いくら望んでも親から掛けてもらえなかった温かい言葉が、そこにはあった。

 40代のシングルマザー、池本香織(いけもとかおり)さん=仮名。そううつ病、パニック障害、解離性障害-。幾つもの精神疾患を抱えている。

 精神科医からこう繰り返し言われてきた。

 「親といると病気がひどくなるよ。親の人生じゃなくて、あなたの人生なんだから」

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 けがをしても、テストでいい点数を取っても満点でなければ、母から否定された。「ばかだね」。チック症のような症状が表れ、頭髪を抜いたり手を刃物で傷つけたりした。

 中学生の時にいじめが始まった。「一族の恥さらし。勉強ができないからいじめられるんだ」。母の言葉に追い詰められた。家にも学校にも居場所が無く、自殺を図ったが死ねなかった。そのことでまた母からののしられた。味方になってもらえないことが、何よりつらかった。

 親から逃げたい一心で、10代で結婚、第1子が生まれた。戻らない体形を、母らは「醜い」と罵倒した。食べ物を拒絶するようになり、うつの診断が下った。数年前、仕事を通じて知り合った交際相手と再婚した。「障害児が生まれる」「堕ろせ」。母からは第2子の出産を反対された。

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 暴力や暴言など発達時期の不適切な養育によって、脳の成長そのものに影響が生じることが近年の研究で明らかになっている。

 NPO法人県カウンセリング協会の丸山隆(まるやまたかし)理事長は「身近な人のやり方を取り込んで子は成長する」と言う。「体罰を受け続けた子は問題の解決策として暴力を肯定してしまう。暴言を言われ続けた子は自己否定の感情から自身が幸せになることを妨げる」。周囲との関係性の中で愛着をつくり直し、自尊感情を回復する作業が重要だという。

 今、池本さんは就学前の子どもと2人で暮らす。病気を抱えて仕事と育児をどう両立すればいいのか。「死にたい」。そうこぼしたとき、「ママがいないと無理」と言ってくれたわが子に言ってしまうことがある。「ばかじゃない」「生まなきゃ良かった。死んじゃえばいいのに」。負の連鎖を断ち切りたいのに、親に言われた言葉をぶつけてしまう。

 〈私と同じ思いを子どもにさせてる。もう虐待なのかな〉。葛藤も、病状も、子どもの成長もありのままツイートする。〈子どもへの愛情は人一倍でしょ〉〈気付けているから、あなたは違う〉

 スマホの画面がそう諭してくれる。

 【ズーム】幼少期の発達の重要性 人は生物学的だけでなく社会的な要因でも病気になる。世界保健機関(WHO)は幼少期をその一つに挙げる。「この時期の発育不良や愛情不足により生涯を通じて病気がちになったり、成長後も情緒不安定を招いたりする恐れがある」