5年連続2桁勝利右腕・バウアーが来日! 野球界の未来へロッテ吉井Cらと意見交換も

レッズのトレバー・バウアー【写真:Getty Images】

バウアーが「ボールの変化量」のマトリックスを見ながら自身の球種について解説

 法政大学多摩キャンパスで行われた日本野球科学研究会第7回大会2日目では、大物メジャーリーガーがサプライズで登壇した。

 日本野球科学研究会は、野球に関する広範な研究を専門とする研究者と、プロ、社会人、大学、高校などの野球指導者、トレーナー、企業の研究者などによる研究会。毎年1回、研究会のメンバーが一同に会し、成果を発表する大会を開催している。

 今大会のテーマは「普及と育成 そのカタチ」

 2日目の「情報提供」では、「科学的知見を誰が、誰に、どう伝えるのかWebメディア『Baseball Geeks』の役割とその影響」と題し、国学院大学准教授でバイオメカニクスの研究者である神事努氏が登壇。科学的知見が指導現場で活用されない「Bridge the Gap」を解決するために、Webメディア「Baseball Geeks」を立ち上げた経緯を紹介。

 さらに「Baseball Geeks」にかかわる編集者の黒田俊氏、原稿を寄稿するアナリストの森本崚太氏と国立スポーツ科学センタースポーツ研究部研究員の森下義隆氏が、ウェブメディアで専門情報を発信することの課題や問題点について話した。

 森本氏はトラッキングデータに基づくデータ解析が専門だが、MLBでこれを活用して投球の改善を図るメジャーリーガーには菊池雄星投手や、トレバー・バウアー投手がいると説明。ここで森本氏は「今日はバウアー投手が来ています」と、サプライズでバウアー投手を紹介した。

U-12侍ジャパン監督の仁志敏久氏も登場し自身の経験を語る

 今季、インディアンスとレッズで11勝を挙げたバウアー投手は「ボールの変化量」のマトリックスを見ながら自身の球種について解説。神事努氏の「回転軸」についての質問にも答え、トラッキングデータを自身のプレーに活かしていることを紹介した。セッションの終了後、バウアー投手は、大会に参加していたロッテ吉井理人コーチとも意見交換をしていた。

 シンポジウム2では「普及のカタチ」として、ジャイアンツアカデミーの石田和之氏が未就学児、小学生に対するアカデミーや普及活動について紹介、元日本野球会議の柳俊之氏が、日本野球協議会で導入をめざしているライセンス制度について紹介した。

 シンポジウム3では、秋田県教育庁保健体育課 主任指導主事で高校野球担当の野中仁史氏が甲子園で負け続けてきた秋田県代表を、県の野球界を挙げて強化した経緯について紹介。また前出の柳俊之氏が、北海道野球協議会での野球振興活動について紹介した。

 大会を締めくくる講演2では、「日本と海外での育成」と題し、侍ジャパンU12監督の仁志敏久氏が登壇、自身が経験した米独立リーグやマイナーリーグでの練習、そしてドミニカ共和国の少年野球について紹介。翻って日本で仁志氏が、U12の選手たちをどのように選考しているか、そして選手にどのように接しているかを紹介した。

 仁志氏は「子どもに教えすぎるのは良くない。気づかせるために待つことが大事」「子どもと指導者がべったりくっつくのは危険、一定の距離を取るべき」など、指導法について丁寧に説明した。

 今年も2日間、非常に中身の濃い大会となった。高校球児から指導者、大学の研究者、プロ野球関係者までもが一堂に会し、野球の未来を語り合うこの会の重要性は今後ますます高まるだろう。(広尾晃 / Koh Hiroo)

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