老舗の名 消滅惜しむ 経済効果に期待も メモリードが「道具屋」買収

 皇室も利用した諫早観光ホテル道具屋が長年親しまれた老舗の看板を下ろした2日、市民から惜しむ声が上がった。一方、買収した冠婚葬祭大手メモリードの知名度を追い風に、地域経済へのプラス効果を期待する声も相次いだ。

 2日朝、正面看板の取り外しが始まり、夕方までに新しい名称「ホテルフラッグス諫早」に掛け替えられた。先月24日、米寿と叙勲を祝う会を開いた市内の嶋田博さんは「家族の祝い事や法事、趣味グループでよく使った。広くて明るく、屋根付き駐車場があり、便利だった」と思い出が詰まった場所を惜しむ。

 発祥は明治時代、嫁入りたんすなどを扱う道具屋。1928年に旅館に替わり、1957年の諫早大水害を経て、1959年、八天町から現在地に移転。上皇ご夫妻が皇太子時代を含め4回、天皇陛下は5年前の皇太子時代に宿泊され、格式の高さと存在感で知られた。昨年秋から経営不振がささやかれたが、従業員以外には伏せたまま、静かに引き継いだ。藤原貞明社長は「地域の皆さまに大変お世話になった」と取材に答えた。

 諫早市内の同業他社は地場大手の進出を警戒しつつ、“共存共栄”を模索。1日最大約1500人の宿泊受け入れ能力のうち、道具屋が約2割を占めただけに、諫早市旅館ホテル業組合の本田一修組合長は「キャパシティーが縮まる可能性もあり痛手。新経営者に組合加盟を呼び掛けたい」と話す。

 各種団体の会合は道具屋を含む3施設の持ち回りが慣例だが、メモリードの互助会組織を基にした幅広いサービスで勢力図が変わる可能性がある。さらに、新ホテルを含めたメモリードグループは婚礼でも長年のノウハウを生かし、シェア拡大を見込む。

 諫早観光物産コンベンション協会の酒井明仁会長は「長崎市に奪われていた婚礼などを呼び戻す契機にしてほしい」、諫早商工会議所の黒田隆雄会頭は「残念だが、切磋琢磨(せっさたくま)して諫早の活性化に尽くしてほしい」と述べた。

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