49歳の今から始める「老後資金2000万円をつくる術」

読者のみなさんからいただいた家計や保険、ローンなど、お金の悩みにプロのファイナンシャルプランナーが答えるFPの家計相談シリーズ。

今回の相談者は、老後資金2000万円を貯めたいという49歳の共働き主婦。毎月の収支は赤字でボーナス補填する家計です。現在の貯蓄は200万円、目標を達成することはできるのでしょうか。FPの鈴木さや子氏がお答えします。

老後資金として2000万円を貯めるためのアドバイスをお願いします。

家計は私が担っており、正社員として働いています。60歳定年ですが再雇用で65歳まで働く心づもりでいます。夫はパート勤務です。夫の年齢は50歳で、なかなか今から正社員になるのは難しく、今後もこのままパート勤務の可能性が高いです。

長女は高3、長男は小6と、まだまだこれから教育費もかかります。子ども2人の大学費用は、それぞれ500万円を学資保険などで確保しております。足りない場合は、その時期に家計から捻出することになると思っています。

現在の貯蓄額は、定期預金の200万円のみです。毎月貯蓄に回している10万円を投資信託などに回したいのですが、なにしろ初心者のため何から手をつけたらいいのかわかりません。現状の生活費の無駄を省き、少しでも老後の資金を増やせるようなアドバイスをいただけないでしょうか?

〈相談者プロフィール〉

・女性、49歳、既婚(夫:50歳、パート)

・子ども2人:18歳(来春から私立大学生)、12歳(来春から公立中学生)

・職業:会社員

・居住形態:持ち家(マンション)

・毎月の世帯の手取り金額:65万円

・年間の手取りボーナス額:300万円

・毎月の世帯の支出目安:70万円

【支出内訳の目安】

・住居費:15万円

・食費:15万円

・水道光熱費:2.5万円

・教育費:10万円

・保険料:5万円

・通信費:4万円

・車両費:なし

・お小遣い:10万円

・日用品:3万円

・その他:5万円

【資産状況】

・毎月の貯蓄額:10万円

・現在の貯蓄総額:200万円、ほか学資保険を積立中

・現在の投資総額:なし

・現在の負債総額:2000万円(住宅ローン)


鈴木:毎日のお仕事で家計を支えながら、子育てに家事に頑張っていらっしゃるお姿が目に浮かびます。

上のお子様の大学入学を控え、教育費も山場を迎えていますね。このタイミングでその先の老後資金に目を向け対策を考えるのは、なかなかできないこと。すばらしいです。貯金目標も明確にされていますので、達成に向けて何ができるかを考えていきましょう。

2000万円を16年間で貯めるための「2つの計画」

まずは、目標達成のために、どのくらい貯めていけばよいかざっくりと試算してみましょう。

<ケース1:同じ金額を積み立てる>
16年間同じ金額を預貯金にて積み立てた場合は、毎月いくらずつ積み立てればよいでしょうか。

2000万円÷16年間÷12ヵ月≒10.4万円

まさに今貯めていらっしゃる毎月の金額と同じ10万円ですので、投資にまわさなくても65歳時には2000万円になることがわかります。

<ケース2:教育費の減額に合わせて積立金額を増やす>
今は教育費が多くかかっていますが、4年後には上のお子様は独立され、教育費負担がかなり減るでしょう。それとともに積立金額を増やすという方法も有効です。

たとえば、今から4年間は月3万円、その後6年間は月6万円、その後6年間は月20万円積み立てれば、16年後に2000万円貯まります。お子様が二人とも独立すれば、教育費、生活費ともに大きく支出が減りますので、貯金のスピードをあげるのは大変ではありません。むしろ、ずっと同じ金額で積み立てるより、ケース2の方法の方が現実的とも考えられます。

毎月貯める10万円をすべて老後資金に充てようとは思わずに、教育費がかかっているうちは、そのうち一部を老後資金にまわすくらいの気持ちで大丈夫ですよ。

年間ではなく“毎月の収支”を黒字化する

さて、毎月10万円貯蓄されているとのことですが、家計の内容をみると毎月の収支は赤字となっています。今の家計は、毎月の赤字になる金額分を、ボーナスで補填している状況です。年間収支がプラスになっているので良さそうに見えますが、早いうちにこの状況を脱し、毎月の家計を黒字に転換することを目指しましょう。そうした方がよい理由が2つあります。

・ボーナスがあるから…と日々の生活費が膨らみがちになってしまい、結果ボーナスからの補填分が多くなり貯金額が減るため

・ボーナスがない生活になった途端に、家計がピンチになるため

ご相談者様、旦那様は現在49歳、50歳と、ご心配されている老後が少しずつ近づいてきており、今後は生活レベルを上げ過ぎずにできるだけ抑えていくフェーズに入っていきます。

支出の内訳のうち、すぐに見直しが可能そうな項目は、通信費(4万円)と食費(15万円)、その他の支出(5万円)です。一方、教育費やお小遣いなどについては、このままで良いでしょう。大学入学後、毎月の支出は今より減ると思われますが、学費以外にかかるものも多いものです。余裕のある予算を立てておくと、必要になったときに出せるので安心です。

通信費については、業務でどうしても使う場合は難しいですが、格安スマホ等に変更できる人だけでもチャレンジを。4人家族であれば家の通信費を合わせて2.5万円くらいまで減らせます。

また、食費も4人家族にしては少々高めです。事情がある場合は別ですが、いま一度ムダな食材など買っていないか、外食は多すぎないか等チェックしてください。外食費含め10万円くらいまでは減らせるとよいですね。その他の支出についても、不必要なものがないかチェックしてみましょう。

この例では、比較的手を付けやすい項目を見直し、全体で7.5万円支出を減らしたことによって、3万円の黒字を生み出すことができましたが、支出を見直す項目はもちろん自由です。大切にしたい(=お金をかけたい)項目は何か、ご家族で話し合い、優先順位の低いものから見直しするのがおすすめです。

まずはiDeCoで「お金を育てる」

毎月の家計が黒字になれば、月々の積み立てが可能になりますね。老後資金を作るには、冒頭の例のようにすべて預貯金でも良いですが、一部を資産運用とすることで、もう少し育てられる可能性が出てきます(減るリスクももちろんあります)。

老後資金のように10年以上先に使うお金を作る場合は、今使えるお金を増やすためにも、「一部を投資にまわし、残りは預貯金で」など組み合わせるのが良いでしょう。

まず老後資金を作る手段として外せないのが「iDeCo(個人型確定拠出年金)」です。掛金が全額所得控除となるため、所得税や住民税を大きく節税ができるのがウリ。現在49歳のご相談者様であれば、今の制度では11年間積み立てができ、利益が出た場合でも非課税となります。会社員の場合は、上限金額が年額27.6万円(月額2.3万円)ですので、毎月2.3万円積み立てするとよいでしょう。

注意するべき点は、一度始めると原則やめられず、掛金を0円にすることはできても、加入している間ずっと運営管理手数料がかかること。そして、60歳までは一切引き出せないこと、51歳以降に始めると、60歳から受取開始ができないことがあげられます。

iDeCoに加入できる金融機関選びにおいては、できるだけ運営管理手数料が低いところ、信託報酬が低めの投資信託が多いところを選ぶとよいでしょう。なお、お勤め先にて企業型確定拠出年金等に入っている場合は、iDeCoに加入することができないこともあります。

つみたてNISAも組み合わせて非課税制度をフル活用する

iDeCoだけでは11年間で約300万円しか貯まりません。そこで20年間非課税で積立運用できる「つみたてNISA」を組み合わせるといいですね。つみたてNISAには、iDeCoのような所得控除はありませんが、使いたいときにいつでも一部解約して現金化できるため、老後資金に留まらず教育費としても使えるといったフレキシブルな使い方が可能です。

上限金額である年40万円をボーナスからつみたてNISA口座に移して、毎月3.3万円ずつ投資信託を買い付ける方法がやりやすいでしょう。

iDeCoもつみたてNISAも、世界中に投資できるように分散して投資信託を選ぶのがおすすめ。あらかじめ世界分散されているバランスファンドを1本買うのも一手です。つみたてNISAで20年間買い付け続ければ、元本だけで800万円。2000万円までもう一歩です。

税制優遇のある制度をできるだけ活用した上で、残りについては預貯金で着実に資産形成しましょう。昨今は、主にネット銀行にて、預金の金利を高く設定できるサービスや、都市銀行の10倍以上の高金利で預けられる定期預金などが提供されています。マメな人なら、できるだけ金利が高めの銀行を選び預け替えしていくと効率的です。

また金利は高くはありませんが、一部のネット銀行の「自動定額積立」サービスもおすすめ。毎月指定した日に、給与口座から指定した金額をそのネット銀行口座に自動的に移してくれるため、強制的に貯金できるのです。毎月4.4万円を11年間、iDeCoの掛金払込が終わる11年後からの5年間は5.4万円を貯め続けたら、約900万円。合計2000万円となりましたね。

まずは黒字家計にすることと、iDeCoやつみたてNISAといった非課税制度をフル活用するところから始めてみましょう。

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