《四角友里×マーモット》コラボウェア10年目!ウェア作りへの熱い想いとは? 日本でアウトドア用のスカートを広めたことで知られるアウトドアスタイル・クリエイターの四角友里さん。自然体なキャラクターと心から自然を愛する姿勢に、男女問わずファンが多いカリスマ的存在です。そんな四角さんはアウトドアブランドのマーモットとコラボウェアを作り始めて今年で10周年。そこで改めてウェア作りへの思いや、アウトドアの楽しみ方について話を聞いてきました。

山好き女性から圧倒的な支持を得て10年目

アウトドアスタイル・クリエイターの四角友里さんは、アウトドア用スカートを広めたことで知られる、山好き女性のカリスマ的存在。
そんな四角さんは、2010年からアウトドアメーカーのマーモットとコラボレーションし、女性向けのウェアをプロデュースしています。しっかりとした機能性がありつつも、山でもオシャレでいたいという女性心を捉え、女性から絶大な支持を得ているのです。

今回は「コラボレーションウェア発売10年目」というタイミングに合わせて、改めて四角さんの山との出会いやアウトドアウェアの選び方や考え方、ウェア作りへの情熱など、気になることを、根掘り葉掘り聞いてきました。

プロフィール
四角友里さん
「大好きな自然と、自分らしいスタイルで繋がりたい」というメッセージを掲げ、執筆、トークイベント、アウトドアウェアのプロデュースなどの活動を続ける。2014 年には、マーモットとのコラボウェアで、世界的なアウトドアコンテスト「APEX Awards」を受賞。着物着付け師としての顔ももつ。著書に『デイリーアウトドア』、『一歩ずつの山歩き入門』、『山登り12カ月』など。

コラボウェアを作るまでの地道な活動とは

今回は、マーモットのプレスルームをお借りし、今シーズンのウェアを見せていただきながら、色々とお話を伺ってきました。
まずは、どんなきっかけでマーモットとコラボウェアを作ることになったのか、四角さんとマーモットとの出会いからお聞きします。

ライター
相馬

そもそも、マーモットとはどんなご縁で繋がったのですか?

四角さん

最初の出会いはイベントでしたね。
2009年の「ヤマケイ涸沢フェスティバル」でトークイベントをやらせてもらった時に、マーモットの方がいらしていて。
そこで「一緒にウェアを作りませんか?」と声をかけてもらったんです。

ライター
相馬

その頃の四角さんは、雑誌やトークショーなどで「アウトドアシーンでスカートを履くメリット」を広めていた時期でしたよね。

自分でウェアをプロデュースしてみたいという気持ちはもともとあったんですか?

四角さん

実は2005年までは雑貨メーカーで商品企画の仕事をしていました。そのため、”もっとこういうウェアがあったらいいのに…”という着想はありました。

初期の頃は、収集し研究した山スカートのメリット・デメリットを企画書にまとめ、それをアウトドアメーカーやショップ、メディアの方など、お会いするアウトドア関係者に片っ端から渡していました。

ライター
相馬

じゃあマーモットの方から涸フェスで声をかけられて、まさに「渡りに船」という感じだったんですね。

四角さん

そうなんです。実はこう見えて、下積み時代は長かったので(笑)。

ウェアへの考え方が変わった、ニュージーランドでのトレッキング

ライター
相馬

2009年ごろって、少しずつ女性向けのおしゃれなアウトドアウェアが、日本でも広まってきた時期でしたよね。
それまで四角さんは、何を着てキャンプや山歩きに行っていたのですか?

四角さん

私が初めて山歩きらしいことをしたのが2003年。初めて上高地に行ったんです。

そのころは、登山用のチェックのシャツに普通のトレッキングパンツを履いていました。選択肢がなかったので、とりあえず女性らしいかな?とチェックの山シャツと赤いフリースで。

ライター
相馬

今に比べてアウトドアウェアは地味でしたよね。
アウトドアにおしゃれを求めちゃいけないみたいな感じもあったのかな…と。

四角さん

当時は、男性向けのアイテムをそのまま女性向けに色を赤やピンクにしたようなアイテムばかりで、選択肢はあまりありませんでした。

ライター
相馬

そんな中、どうやって「ファッション性もある、女性向けのアウトドアウェアがあればいいのに…」という発想にたどり着いたのですか?

四角さん

転機となったのは、2004年に初めてニュージーランドでトレッキングをしたときなんです。

2時間くらい歩いて山小屋に泊まるというコースだったんですが、その山小屋で、スカートを履いている女性を見て。

ライター
相馬

すでに海外には、アウトドア用スカートがあったんですね。

四角さん

速乾性のある素材のアウトドア用スカートでした。
大きなザックを背負って、何日もかけてトレッキングをしているというその女性が、たくましくてカッコイイのに可愛らしさもあって…。
私が目指したいのはこれだ!と。

ライター
相馬

「機能性もしっかりあり、デザイン性やファッション性もあるウェア」ということですね。

四角さん

そうです。そのトレッキングの後にさっそくアウトドア用のスカートを探し始めました。

帰国してからも、個人輸入できる海外のブランドで買ったり、当時吉祥寺にあったドイツのアウトドアブランド”ジャックウルフスキン”のアウトレットで、アウトドア用のサファリワンピースを買ったのを覚えています。

ライター
相馬

そのワンピースを四角さんが着ていたのは、私もよく覚えています。

四角さん

あとは、アウトドアメーカーが出している化繊素材のスカートやキュロットなども買いました。

そこから3〜4年くらいは、地道にアウトドアで使えるスカートをひたすら集めては、キャンプやトレッキングで履いてみる、ということを繰り返していましたね。

なかなか想いが伝わらず、厳しい言葉に悩んだ時期も

今では多くのファンから支持されている四角さんの活動ですが、初めは厳しい言葉をかけられた時期もあったとか。
そんな時期をどのようにして四角さんは乗り越えたのでしょうか?

ライター
相馬

アウトドア用のスカートを広めるという活動をしていく中で、周りの反応が厳しい時期もあったと伺いました。

四角さん

個人での活動でしたし、登山のプロではない初心者だったわけですから、かなり風当たりは強かったですよ。
「スカートなんかで山に行ったら死ぬぞ」と言われたりしました。

ライター
相馬

でも四角さんは、「スカートで3,000m級の難しい山に行こう!」と言ってるわけではなかったですよね?

四角さん

そう、スカートを広めたいというよりも、選択肢を広げ、山の楽しみ方を増やしたかったんです。
こんな素晴らしい自然が日本にはたくさんあるのに、”ハードルが高く感じて一歩踏み出せないでいる女性たち”って実はたくさんいるのではないかと。

その最初の一歩を踏み出すきっかけとして、スカートなどの可愛いウェアがあればいいな、と思っていました。実際、足さばきが良く、着替えやトイレが楽…というメリットがあり、便利な山道具と確信していたので。

ライター
相馬

そういうことをブログなどでも発信しているうちに、それに共感してくれる女性ファンも増えていったんですよね。まさに私も四角さんのアウトドアに対する考え方に共感した1人なんですが…。

”それぞれが楽しいと思える方法で楽しめばいい”というのは、今では当たり前ですが、当時そういう考え方を発信した人はあまりいなかったように思いました。

四角さん

私のブログを読み、自分が山に行った時の写真をメッセージとともに送ってくれる女性たちが増えていくのが、とても励みになりました。

また、活動していくうちに、私の考え方を理解して応援してくれるアウトドアのプロの方も少しずつ増えていきました。

ライター
相馬

そういうことが、「ウェアをプロデュースしたい」という想いを後押ししたのですね。

10年間変わらないのは「機能性とおしゃれの共存」

年に2回コレクションを発表している四角さん。毎回、これまでのアウトドアウェアへの先入観を覆す、四角さんらしいアイテムを数多く発表しています。
年々進化しているように見える四角さんのウェアですが、変わらず大事にしていることは何なのでしょうか?

ライター
相馬

10年間ウェアをプロデュースされてきたわけですが、ウェア作りにおいて、四角さんが大事にしていることはなんですか?

四角さん

私にとってアウトドアウェアは、山に行く「礼装」だと考えています。もともと着付け師の仕事もしていたので、そこから影響を大きく受けました。

日本の礼装は、相手のことを敬い、その場にふさわしいものを着ていく”ハレの日”のためのものですが、アウトドアウェアもそれと一緒かな……と。「相手に対する想いを装いで表現する」という考え方は、機能性と精神性のどちらも大切にできると感じました。

ライター
相馬

その日に登る山に合った機能をきちんと兼ね備えた上で、自分らしくいられる装い」ということでしょうか。

四角さん

そうです。
機能性もあり、心も満たされるようにと考えて作っています。

ライター
相馬

四角さんが作るウェアは、自然の中にある色を使っていたり、自然の中に溶け込める色やデザインだったりするものが多いですが、それも、自然へのリスペクトの表れなんだなと感じます。

四角さん

女性って、どこかに出かけるときに、「何を着ていこうかな」と何日も前から考えてワクワクしたりしますよね。気に入った洋服ならなおさらワクワクして、大好きな山へ行くことの楽しさが何倍にもなります。

それもまた、お気に入りのウェアを着ることのメリットの1つだと思うんです。

ライター
相馬

確かに、旅行の時などにも、わざわざ新しい服を買ったりします。それくらい女性にとって何を着るかは大事ですよね。

四角さん

だから、どのウェアも一般的な日本人女性が着たときに、”ちょっと素敵に見える”ということを意識していますね。

旅先や山で撮った写真を後から見返した時も、自分が自分らしい姿と笑顔で可愛く写っていた方が嬉しいですしね。

ライター
相馬

そうそう、そのためにもウェアは大事(笑)。

もともとモデルのような体型の方ではなく、「普通の女性が可愛く見える」というのがポイントなんですね。

四角さん

あともう1つ、気に入ったウェアを着るメリットとして、「山歩きのここぞというときに元気が出て頑張れる」ということもあると思います。

ライター
相馬

では、四角さんの10年間のウェア作りで変化した部分はありますか?

四角さん

自分自身が登る山のレベルが少しずつ上がっているので、それに合わせて変化したというのはあると思います。

ただ、今でも体力は無いし、自信がないので、それを補ってくれる機能を持たせたウェアにしています。
そこに、どうおしゃれをプラスするかが、腕の見せどころかな…と。

「こんな場所に行って欲しい」を毎シーズンのデザインに

山スカートで知られる四角さんですが、コラボレーションではパンツやショートパンツ、ワンピース、ザックもありと、毎シーズンまったく違ったアイテムを作り出しています。
それらは全て、四角さんの想いや、ストーリーが感じられるものばかり。

どのようにして生み出しているのでしょうか?

ライター
相馬

毎シーズンのコンセプトやデザインは、どのようにして決めているのですか?

四角さん

そのときに私が「こんな場所に行って欲しい」「こんな景色を見てもらいたい」という想いをデザインに落とし込んでいます。
その前年に、自分が歩いた山が大きく影響していることもありますね。

ライター
相馬

では、今シーズン特におすすめのアイテムがあれば教えてください。

四角さん

10年の節目である今年は、1年を通じて「日本の山の風景」を表現したいという想いがあり、春夏は高山植物、秋冬は私が今までに訪れた山小屋をイラスト化して柄にしました。
山小屋柄のアイテム、おすすめです。

ライター
相馬

かなりリアルなイラストですね。

四角さん

そうなんです。だから、山小屋の方に許可をいただきました。早くこのウェアを着て報告に行きたいです(笑)。

山小屋があることによって、自然だけじゃなく、そこに人との出逢いが生まれる。山小屋を通じで紡がれていく山の物語があると感じ、それを伝えたいなと思ったんです。

ライター
相馬

一方で、今シーズンは里山歩きや旅行などにも着ていけるような、スカートとシャツのセットアップも出されています。今日着ているのがそうですよね。
これもまた四角さんらしいなと感じました。

四角さん

最近は標高の高い山を縦走したり、冬山にも登ったりしていますが、やっぱり里山歩きも好きなんですよね。
そういうときに着たいウェアとして作りました。

例えば”日光の戦場ヶ原を散策し、金谷ホテルのレストランで食事をする”、といった旅ができそうでしょ?

ライター
相馬

確かに、そういう具体的な旅の行程が連想できますね。これなら、このまま町歩きしても、おしゃれなレストランに入っても違和感なさそうです。

私もどちらかというと、のんびりした里山歩きが好きなので、とても共感できます!

四角さん

ウェアからどんなふうに山を楽しむのか、新しい山の歩き方を提案していければな、と思っています。

一番思い入れのあるアイテムは、最初に作ったスカート

ライター
相馬

ちなみに、これまで手がけたウェアで、最も思い入れのあるもの、または記憶に残っているものはありますか?

四角さん

やはり最初に作らせてもらった山スカートでしょうか。この商品は、色を変え、素材をマイナーチェンジさせながら、今でも定番商品として販売され続けているんですよ。

ライター
相馬

それはすごいですね。四角さんの「こんなスカートが欲しい」という思いを全て詰め込んだスカートですね。

四角さん

そうなんです。かなり考え抜いて機能的に作ったので、ずっと愛用してくれている人も多いです。

ライター
相馬

10年経って改めて見てみても、まったく古く感じませんね。

四角さん

毎年出しているので、この機会に10年分を並べて見てみたいなってちょっと思いました(笑)。

これから先も、好きなものを身につけて自分らしく

ウェアやファッションの面だけではなく、日本での女性のアウトドアの楽しみ方を牽引してきたとも言える四角さん。
最後に、今後の野望について聞いてみました。

ライター
相馬

では、今後やりたいことなどはありますか?

四角さん

私ももうすぐ40代になるんですよ。だから、10年後、20年後に自分が何を着ればいいのかが気になっています。

ライター
相馬

確かに、女性は40代になると急に今まで着ていたものが似合わなくなったりします。自分自身を振り返ってみても…。

四角さん

年齢を重ねても、好きなものを身につけて、無理せず自分らしく楽しんでいたいですよね。

ライター
相馬

50代、60代と女性は体型も変化する中で、上手におしゃれを楽しみたい気持ちは誰にでもあると思います。四角さんがどんなウェアを提案してくれるのか、楽しみです。

四角さん

あと最近考えているのは、男女でコーディネートできるようなアイテムを作ってみたいですね。
ペアルックまではいかないけど、リンクコーデのような、そんなアイテムがいいですね。

ライター
相馬

それは素敵ですね。
そんな風に夫婦やカップルで長く山を楽しめたらいいですよね。

改めて四角さんのウェア作りへの想いをお聞きし、四角さんが手掛けるウェアがなぜ素敵なのかがよくわかりました。誰にでも似合うようにと工夫された中にも、斬新さや新たな発見を毎シーズン見せてくれる四角さんのウェア。
10年という節目を経て、今後、どんなふうに進化していくのか、ますます楽しみになりました。

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