【ウールってインナーでしょ?】固定概念を覆す、冬の「保温行動着」としての実力は!? インナーによく使われる天然素材のウール。でも最近はミッドレイヤー=保温着に使用されることも増えてきています。ウールの持つ防臭や調温調湿機能って、ひょっとしたら「行動保温着」としても優秀なのでは?!その実力の検証と、冬の低山におすすめしたい「ウール行動着」を紹介します。

ベースレイヤーの実力はご存知の通り。ミッドレイヤーではどうなの?

ウールのウェアといえば、思い浮かぶのはベースレイヤー。

でも、ちょっと待ってください! 最近はミッドレイヤー=保温着として着られるウールのウェアが増えてきているのです。その理由は、ウールが持つ調温調湿機能。寒くなく暑すぎないから、寒い季節のハイクにぴったりなんです!

ミッドレイヤーを紹介する前に、ウールの機能をおさらい

ウールは、人類が1000年以上前からアウトドアウェアに用いてきた素材です。1980年代に化繊のアンダーウェアや、フリースジャケットが開発され、登山やアウトドアウェアは化繊中心となりました。ですが、21世紀に入ってから、再びウール、中でも細くてソフトで肌にやさしいメリノウールのウェアが増加しており、化繊に勝るとも劣らない機能性が、注目を集めています。

ところでメリノウールのウェアが持つ機能、知っていますか? ポイントは大きく次の2つです。

__①「天然のエアコン」と呼ばれる「調温調湿性」
__メリノウールとはメリノ種の羊の毛のこと。寒暖差の激しい土地で育てられ、夏の暑さにはウールの通気性や吸保湿性が、冬の厳しい寒さには保温性が機能。常に快適な状態に調温調湿する特性があり、それがアウトドアウェアに活用されているのです。ムレにくく、寒くないので「天然のエアコン」とも呼ばれています。

②長時間着ても臭わない「防臭効果」
ウールはその繊維の表面に水分が残りにくい素材です。そのため、臭いの原因となるバクテリアや菌の繁殖も起きづらい。つまり臭くなりにくいのです。だからベースレイヤーで愛用するハイカーも多いのですが、汗をかいても洗濯できないのはミッドレイヤーも同じ、臭わないのは、うれしい機能です。

ウールの「ちょうどよいあたたかさ」は行動保温着にぴったり

保温着を着て歩いて、暑いと思ったことありませんか?

晩秋から冬、そして春先かけて、登山をする際に保温着は必須アイテムです。ただその季節でも晴れていて風も弱ければ、防寒着を着て歩いていると汗をかいてしまうこともあります。で、防寒着を脱いだら、今度は寒い・・・なんて経験ありませんか? 危うく低体温に陥る危険もあるんです。

ムレにくいから冷えにくい。それって行動時にちょうどいい!

寒い季節の登山では、汗をかかないようにすることが基本です。そこで活躍するのが、最近話題になっている行動保温着。

厚手の中綿ジャケットのような休憩時や高山で着る防寒着ほどの保温力はありませんが、この行動保温技は保温着のフリースジャケットより軽量コンパクトで、適度な保温性を兼ね備えています。行動保温着には化繊の薄手中綿ジャケットが使用されることが多いです。

今回紹介するウールのミッドレイヤーは、ウールの調温調湿機能が働くため、汗をかいてしまうような行動時の保温着にもぴったりなんでです。

ダウンや化繊中綿、フリースとの違いを比べてみよう!

適度な伸縮性で動きにフィット

※このジャケットの表地は化繊ですが、ジャケット全体としてストレッチ性を備えています

ウールには天然のストレッチ性があり、動きを邪魔しません。化繊とウール混紡のウェアもほとんどがストレッチ性を装備。一般的なフリースや中綿ジャケットよりもタイトなデザインが多く、スポーティな雰囲気です。

嵩張らないコンパクトさも魅力

行動保温着として機能するだけに、比較的薄手で軽量コンパクトに折り畳めるものばかり。あたたかい季節なら十分に防寒着としても役立つ保温性なので、このコンパクトさは魅力です。ダウンや化繊の中綿ジャケットを持って行くほどの寒さじゃないんだけれども・・・という時に、役立つのがウールの保温着です。

濡れても保温力が落ちない中綿ジャケットもあり

セーターのように編まれたウェアがウールのイメージですが、それだでなく羊毛を封入した中綿ジャケットもあります。化繊の中綿同様に水に濡れてもダウンのように保温力が落ちることがないのが特長です。

これは使える!ウールのミッドレイヤー4選

素材にメリノウールを用いたウェアをはじめ、ウールを中綿や裏地に、さらに化繊との混紡等、その特性を活かしたミッドレイヤーを4アイテム紹介しましょう!

マウンテンハードウェア|ダイヤモンドピークサーマルフーディ

メリノウール 97% 、ポリウレタン 3%を混紡した素材を採用。身体にぴったりフィットするフーディで、運動性も抜群。ベースレイヤーとしても、ミッドレイヤーとしても着られる一枚。

薄手なので、大して保温力がないだろうと着てみると、ワッフル地が空気を溜め込むからか、意外なほどにあったかい。袖口にはサムホールも備え冷気の侵入をシャットアウト。薄手のシェルをアウターに着て寒風を抑えれば、真冬も低山なら快適に歩けそうです。トレイルランやファストハイクもするハイカーなら、試してみる価値大です。

スマートウール|メリノスポーツフリースフルジップハイブリッドフーディー

外側に丈夫なポリエステル、内側に肌触りの良い起毛メリノウールを使ったフーディ。生地に厚み、コシがあり、しっかりした着心地です。またフード、肩、胸にはナイロンを重ねて風雨の侵入を抑えてくれます。アウトドア的な雰囲気も演出。

ウールとポリエステル混紡だけれどもナチュラルな風合いが強く出ていて、それでいて適度な伸縮性もあって動きやすさも装備。スマートウールというとソックスのイメージが強いけれど、人とは違ったウェアを探しているなら、コレ、おすすめです。

アイスブレーカー/ディセンダー ロングスリーブ ジップ (メンズ)

メリノウール84%にナイロンとポリウレタンを混紡。メリノウールを裏起毛のフリース状に仕上げたREALFLEECEを素材に使用。着心地、肌触り、そして見た目に、フリースとはまるで違う高級感があります。

ストライプのように凹凸のある起毛裏地は通気性と保温性をアップ。表地は重ね着しても滑りやすいジャージー調、袖口にはサムホールを設け、伸縮性とともに、運動性をしっかり確保。山はもちろん街でも、涼しい季節にいつも着ていたと思わせるジャケットです。

マーモット|ウールラップトレックジャケット

マーモットらしい色使い、デザインのジャケットは脇と袖にウールとポリエステル混紡、中綿にウールとポリエステルを封入。表地が風を防ぎ、ちょっと寒いなぁと感じる気温でも、歩いているとまったく寒くない。まさに真冬の低山の行動保温着にピッタリ。

「TWO IN ONE」システムと呼ばれるマーモットのアウターにぴったりジョイントできる仕様を採用しています。でも今回、一番最初に紹介したマウンテンハードウェアのフーディをインナーに合わせてみたら、これがとても調子がよかった。薄手のダウンジャケットと同程度の保温力、コンパクトさながら、運動性、快適さは、こちらのほうが上。山の万能防寒着といえそうです。

機能だけじゃない!ウールで環境にもやさしくなれます

天然の調温調湿機能と防臭機能があり、またメリノウールは細くてソフトでチクチク感がなく、また伸縮性もあり登山の動きを邪魔しない。そんな高機能に加えて、昨今ウールが素材としてクローズアップされている理由は、環境にやさしいから!

ウールは年1回の羊の毛刈りで手に入れられる、再生可能な天然素材。しかも生分解して土に還るため、化繊のようにマイクロプラスチックのような問題を引き起こしません。あまり知られていませんが、フリース等のウェアは洗濯する度にマイクロファイバーと呼ぶプラスチックの繊維を海へと流し汚染してしまっているそうです。

ウールの保温着を着ることは環境にもやさしく、山好きであっても、海を汚さないための一助になることなんです。

それでは皆さん、よい山旅を!

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