『お嬢さん』(2016年)や『毒戦 BELIEVER』(2018年)で見せた冷や汗演技が印象的なチョ・ジヌンが『完璧な他人』(2018年)に続きコメディに挑戦した『王と道化師たち』が、シネマート新宿・シネマート心斎橋にて開催中の劇場発信型映画祭「のむらコレクション」(通称:のむコレ)にて公開中だ。
チョ・ジヌンのキョドり演技が秀逸な手堅く笑える朝鮮王朝コメディ!
史劇コメディ『風と共に去りぬ!?』(2012年)などユーモラスな人間ドラマ作品を手掛けてきたキム・ジュホ監督が、ハ・ジョンウ主演『いつか家族に』(2015年)に続いてチョ・ジヌンとタッグを組んだのが、再び朝鮮王朝を舞台にした史劇コメディ『王と道化師たち』。朝鮮王朝の最高官職のひとつ領議政(ヨンイジョン)であるハン・ミョンフェが、謀反によって甥を謀殺し王位に就いた世祖の不名誉な風説を否定するべく、怪しい詐欺集団に任務を強制する……というのが物語の導入だ。
話術が巧みな主人公マ・ドッコ(ジヌン)率いる詐欺集団のメンバーは、アクロバティックな軽業師やトリックを得意とする奇術師、占い師もどきの巫女、写実描写が得意な絵師というラインナップ。まるで遊び人ばかりでパーティーを組んだRPGみたいな雰囲気。キャラの立った俳優陣が並んだだけで面白いし、それぞれの特技を活かすシーンが序盤にしっかり用意されているのも気が利いている。
ちなみに世祖(首陽大君)とハン・ミョンフェは実在の人物で、韓国映画ファンには『観相師-かんそうし-』(2013年)でお馴染みだろう。本作では、ミョンフェがドッコたちに任務を強制したところから物語が展開していくのだが、そのオーダーは「“天の意志”は大王にあることを民に知らしめよ」という無茶な内容! しかし、仕事中に現行犯逮捕されたドッコたちに選択の余地はなかった……というか精一杯カッコつけつつ、王朝の任務をこなしてデカい見返りを得ようと目論むのだった。
史実ベースながらキャラ立ちしたキャスト陣のおかげでユルく楽しめる!
厳しい身分制度があった朝鮮王朝が舞台、しかも成果が上がらなかったり任務に失敗すればいつ殺されてもおかしくないだけに、基本的にはシリアスな状況。しかし、そもそも緊張感のないドッコたちの風情、そして王の評判を上げるため様々な奇策を凝らす様子が可笑しく、おかげで終始ユル~い雰囲気でお話は進んでいく。そんなこんなで順調に任務をこなしていたドッコたちだったが、やがてミョンヘから無茶なオーダーを振られてしまう……。
本作は冒頭で示される通りフィクションではあるが、これまでたびたび映像化されてきた史実をベースにしているため重厚感はかなりのもの。ミョンヘ役のソン・ヒョンジュ、ドッコの師匠マルボ役のチェ・グィファなど、韓国映画界の名バイプレイヤーたちが顔を揃えている点にも注目したい。そして何より、チョ・ジヌンの貴重なキョドり演技とドヤ顔を堪能しておこう。
『王と道化師たち』はシネマート新宿・シネマート心斎橋にて開催中の劇場発信型映画祭「のむらコレクション」(通称:のむコレ)にて2019年11月20日(水)より公開中
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