【おんなの目】 銃弾より一本の用水路

 四日、アフガニスタン州都ジャララバード近郊で中村哲医師の乗った車が武装集団に襲撃され、中村さんは亡くなられた。この報に愕然とした。何故? アフガニスタンの人々の笑顔の為に尽くされてきたのに。私は壁に二枚の写真を貼っている。2015年に中村医師の活動を支援する「ペシャワール会」の会報にあったものだ。一枚は“用水路建設前のガンベリ砂漠(2008年以前)”灰色の砂を足で踏み固めたような荒野が広がっている。もう一枚は“用水路到達6年後のガンベリ砂漠”。立ち並ぶ緑の木々、作物の植えつけられた黄緑色の農地も見える。二枚が同じ地のものとは思えない。

 中村医師の−命の源は綺麗な水と食料だ−の指導の下、現地スタッフと一緒に築かれた灌漑用水路。お蔭で土地は潤い豊かに復活した。2019年には、総植樹数は100万本に達し、65万人が帰農できた。

何があっても ただ水やり/褒められても くさされても/ただ水やり/誰が去っても 倒れても/ただ水やり/嬉しくても 疲れていても/ただ水やり/風が吹いても 日照りでも/ただ水やり/邪魔されても 協力されても/ただ水やり/誰が何と言おうと ただ水やり/魔法の薬はありません    (中村哲)

 中村医師の志はきっと引き継がれる。殺し合いはもう終わりだ。

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