山下健太、雨のバーレーンでTS050初ドライブ。新人勢最速も最初は「無線に答える余裕もなかった」

 WEC世界耐久選手権恒例のルーキーテストが12月15日、前日の8時間レースの興奮が冷めやまぬバーレーン・インターナショナル・サーキットで行われ、TOYOTA GAZOO Racingの7号車トヨタTS050ハイブリッドを初ドライブした山下健太が総合2番手/新人勢最速タイムをマークした。総合トップタイムは同車のレギュラードライバーである小林可夢偉が記録している。

 WECの公式イベントであるルーキーテストは、世界でもっとも優れたレベルの若手ドライバーにスポーツカーの経験を与えることを目的に例年、暮れのバーレーンで行われているもの。

 2年ぶりの開催となった2019/2020年のテストには、シリーズがノミネートしたニック・デ・フリース(TOYOTA GAZOO Racing)、ミケル・ジェンセン(シグナテック・アルピーヌ・エルフ)、ヨブ・バン・ウィタート(ポルシェGTチーム)、ビンセント・アブリル(チーム・プロジェクト1)の4名全員がそれぞれに振り分けられたチームの車両で規定の30周をラップ。

 この他、テストに参加したレベリオン・レーシングやGドライブ・レーシング、AFコルセ、アストンマーティン・レーシングなど、各チームが独自に起用した“ルーキー”たちもウエット~ダンプ路面で行われたテストでプロトタイプカーまたはGTEマシンをドライブしている。

 そのなかのひとりである山下は、デ・フリースとTOYOTA GAZOO Racingのリザーブドライバーを務めるトーマス・ローランとともにTMGトヨタ・モータースポーツGmbHを訪れ、事前にシート合わせとトヨタTS050ハイブリッドのシミュレーター訓練を受けてこの日を迎えた。

 15日のテストは午前と午後の2セッションが設けられたが、午前中は2度に渡って豪雨がサーキットを襲う難しいコンディションとなった。そんななかで1分44秒867のトップタイムをマークしたのは1号車レベリオンR13・ギブソンをドライブしたノルマン・ナト。総合2番手には7号車トヨタをドライブする可夢偉が続いた。

 ルーキー勢ではハイクラス・レーシングの33号車オレカ07・ギブソンに搭乗したヤン・マグヌッセンが、1分50秒568というタイムで総合5番手/LMP2クラス2番手につけ新人勢最速に。同2番手はアルピーヌに乗り込んだジェンセン、これにGドライブ・レーシングの26号車アウルス01をドライブしたロベルト・メリが続いている。

 午後のセッションはダンプ路面で行われたが、こちらは天候が安定したことも手伝い、午前中の走行を見合わせた多くのドライバーがコースに出てタイムを記録。山下はこの状況下で34周をラップし、可夢偉が記録した1分43秒264から0.811秒差、ルーキー勢最速タイムとなる1分44秒075をマークしてみせた。

 午前と午後あわせて44周を走った山下はテスト後「TS050ハイブリッドに乗る機会を与えて頂いて本当に感謝しています」とコメント。

「まずはステアリング上のスイッチが沢山あり、指示どおりに操作するのに精一杯で、チームラジオに返答する余裕もなく大変でした」

「そこに慣れるとある程度走れるようになり、新品タイヤも2セット使わせてもらい、ラップタイムも向上していきました。でも、まだ覚えなければならないことが多く経験が必要です。今後も機会があれば乗りたいです」と語った。

■ニック・デ・フリース「トヨタTS050ハイブリッドの走行性能は信じられないレベル」

8号車トヨタTS050ハイブリッドに乗り込むニック・デ・フリース
TOYOTA GAZOO Racingの7号車トヨタTS050ハイブリッドを初ドライブした山下健太

 山下と同様に、WECでは普段LMP2マシンをドライブしているデ・フリースは「今回のテストは本当にエンジョイできた」と新人勢3番手となったテストを振りかえった。

「この機会を与えてくれたTOYOTA GAZOO RacingとWECに感謝している。TS050ハイブリッドの高いグリップ力に驚かされた。四輪駆動とトラクションコントロールによる走行性能は信じられないレベルなんだ!」

「ドライブの感覚はまったく自然で、燃料カットや異なるブースト戦略にもすぐ馴染めた。僕にとって未知の経験でしたが、本当に楽しかったよ」

 また、2017年のルーキーテスト以来、2年ぶりにトヨタTS050ハイブリッドに乗り込んだローランは「久しぶりのドライブとなったが、再びチームとともに働けたのがうれしく、走行を楽しめたよ」と喜んだ。

「僕が初めてTS050ハイブリッドをドライブしたのは2年前のここバーレーンだった。この地でふたたびこのテストに参加できたのは良かった。僕たちは新品タイヤ1セットを使用し、その後何度かロングランテストをこなしたんだ。TS050ハイブリッドは好調でテストはうまくいったよ」

 前日のWEC第4戦バーレーンで今季3度目のワン・ツー・フィニッシュを飾ったトヨタTS050ハイブリッドは、WECが現行LMP1規定に代わるル・マン・ハイパーカー(LMH)規定を2019/2020年シーズンから採用するため、今ルーキーテストが同地でのラストランとなっている。

ハイクラス・レーシングからWECルーキーテストに臨んだヤン・マグヌッセン
2年ぶりにトヨタTS050ハイブリッドでのテスト走行を行ったトーマス・ローラン
ウエット路面となったバーレーン・インターナショナル・サーキットを走行する7号車トヨタTS050ハイブリッド
レーシングチーム・ネーデルランドの29号車オレカ07に乗り込んだハリソン・ニューウェイ
WECに選ばれた4人の“ルーキードライバー”。左からビンセント・アブリル、ヨブ・バン・ウィタート、ニック・デ・フリース、ミケル・ジェンセン
WEC第4戦バーレーンにスポット参戦し、ルーキーテストにも参加したGドライブ・レーシングの26号車アウルス01・ギブソン
レベリオン・レーシングの1号車レベリオンR13・ギブソン

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