スロバキアに桜並木を 日本との絆つくりたい  交流100年、寄付募る80歳女性の思い

スロバキアでのコンサートで歌うマスミ・オーマンディさん(右端)=2019年9月

 東京五輪・パラリンピックが開かれる2020年は、日本と東欧のスロバキア(旧チェコスロバキア)が国交を樹立してから100周年に当たる。それを記念してスロバキアに桜の木を贈ろうと、東京都杉並区の英会話学校副校長で、音楽を通じて同国と交流があるマスミ・オーマンディさん(80)が寄付を募っている。「桜を見た人が日本を思い、寄贈した私たちは『桜を見に行こう』と訪れる。そんな絆が生まれてほしい」との願いからだ。(共同通信=山脇絵里子)

 桜を贈る計画は在スロバキア日本大使館が両国の交流100周年記念事業の一環として、ゆかりのある企業や個人、同国の自治体に協力を呼び掛けた。大使館によると、費用は全額寄付でまかない、500本が目標。20年春と秋に首都ブラチスラバや各地の地方都市に植樹する計画という。

 米国人の夫と共に長年、英語教育に情熱を注ぐ傍ら、60代からはジャズ歌手としても活動するオーマンディさん。傘寿を迎えた今も現役で、1年の半分以上は米国や欧州、日本国内でのコンサートに飛び回る。約3年前、スロバキアの音楽家と知り合ったのが縁で行き来するうちに桜の寄贈計画を知り、大使館に協力を申し出た。

 スロバキアは1993年に旧チェコスロバキアから分離した人口約500万人の小さな国。「素朴で優しく、日本人に気質が似ている」という。「約100年前に日本から贈られた米国ワシントンの桜並木のように、長く愛され、交流のシンボルになってほしい。子どものいない私が、スロバキアの子どもたちの未来に桜を残すお手伝いができたらうれしい」とオーマンディさんは話す。

 桜の木1本の寄贈と植樹に計数万円の費用が見込まれるため、寄付は1口2万円で、連名でも可。今月20日ごろまで受け付け、いったん大使館に送る。問い合わせ先はパシフィックイングリッシュクラブ内の「マスミ オーマンディ教育・文化活動の会」まで。電話03(5306)5991。

マスミ・オーマンディさん

 ▽取材を終えて

 「すごいパワフルなマダムです」。知人にそう紹介され、会いに行ったマスミ・オーマンディさんは80歳という年齢を全く感じさせない、エネルギーの塊のような女性だった。60代から人前で歌い始め、70代でジャズのCDをリリース。「何歳になっても何でも挑戦できる」を体現する人が、今は日本とスロバキアの懸け橋になろうと奔走している。スロバキアの首都ブラチスラバは中東欧の玄関口ウィーンに近い。植樹した桜が満開の花を咲かせる頃に、記者も足を運んでみたい。

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