人生会議

 啓発ポスターを世に出した途端、「待った」がかかったのは厚生労働省にはあまりに予想外で、衝撃が大きかったのだろう。11月下旬に公表した翌日には予定していた自治体への発送を中止したのだから▲人生の終末期にどのような医療やケアを受けるのかを事前に家族や医師と話し合っておく「人生会議」の啓発ポスター。吉本興業に委託して作成、芸人の小籔千豊さんが病院のベッドに横たわる患者を演じた▲「大事なこと何にも伝えてなかったわ」などと、元気なうちに家族と十分に話し合っていなかったとして「人生会議」の必要性を呼び掛ける内容なのだが、がん患者団体などから「患者や遺族への配慮が足りない」と抗議の声が上がった▲厚労省は指摘を受け止めてポスターの掲示を停止し、普及・啓発の進め方を再検討すると決めたのだが、今度はネット上で「何が問題なのか」と逆抗議の書き込みが相次ぐ事態となった▲賛否が入り交じる状況は多様な死生観の表れなのかもしれない。とはいえ、厚労省の調査では、終末期の医療について話し合っている人は4割という▲誰もが自分らしく生き、自分らしい最期を迎えたいと思いつつ、なかなか口にしにくい話題なのだろう。その意味で、今回の騒動は家族らと話すきっかけとなるのかもしれない。(久)

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