大谷翔平の完封、「10・2決戦」、西武連覇… パ・リーグ優勝決定試合を振り返る

2019年のパ・リーグは西武が逆転優勝を飾った【写真:安藤かなみ】

直近6年間の優勝決定試合を一挙に紹介、壮絶なV争いを繰り広げたパ・リーグ

 愛するチームが優勝を決めた瞬間というものは、やはりファンにとってはかけがえのない思い出となるものだ。グラウンド上に歓喜の輪が広がり、監督やチームの中心選手たちが胴上げされる。過酷なシーズンを戦い抜いた選手たちにとっては、前シーズン終了直後から目標に向けて取り組んできた努力が報われた瞬間にもなるだろう。

 日程やマジック対象チームの結果によっては、試合に敗れても優勝が決まったり、試合のない移動日に優勝が決まるというケースも存在する。だが、近年のパ・リーグにおいては、マジック対象チームの結果を待つことなく、自力で勝って優勝を決めるケースが多くなっている。

 そこで、今回は直近6年間の優勝決定試合を一挙に紹介。ファンにとっても印象深いであろう激闘のペナントレースに決着をつけた一戦と、そこに至るまでの背景をあらためて振り返っていきたい。

○2014年10月2日 ソフトバンク対オリックス(ヤフオクドーム)

 この年はソフトバンクとオリックスがシーズン最終盤まで熾烈な優勝争いを繰り広げ、10月2日にゲーム差なしの状態でシーズン最後の直接対決を迎えた。この試合がシーズン最終戦となるソフトバンクは勝てばその時点で優勝決定、シーズン142試合目のオリックスはこの試合に勝てば残り2戦を1分け以上で乗り切れば優勝と、まさにペナントの行方を決める大一番だった。

 ソフトバンクはこのシーズンに黄色靭帯骨化症から復帰した大隣憲司氏を先発に立て、不屈の左腕も6回無失点という素晴らしいピッチングで首脳陣の期待に応える。対するオリックスはまだ1失点だった先発のディクソン投手を4回2/3という早い段階で交代させ、優勝争いの原動力となっていた強力リリーフ陣にスイッチ。救援陣もその期待に応えてソフトバンクに追加点を与えず、試合は息詰まる投手戦となっていく。

 大隣氏は2回に細川亨捕手の犠飛で挙げた1点のリードを守ったままマウンドを下りるが、オリックスも代打の原拓也内野手が7回に森唯斗投手から同点タイムリーを放ち、試合を振り出しに戻す。その後は両チーム共にリリーフ陣が好投し、試合は同点のまま延長戦に。オリックスは10回表に2死満塁の絶好機を迎えるも、サファテ投手が踏ん張って勝ち越しを許さず。直後の10回裏に今度はソフトバンクが1死満塁とサヨナラのチャンスを作ると、続く松田宣浩内野手の打球は左中間へ。大激戦となったペナントレースは、劇的な一打で幕を閉じた。

○2015年9月17日 ソフトバンク対西武(ヤフオクドーム)

 前年は壮絶な優勝争いの末に僅かな差で優勝を勝ち取ったソフトバンクだったが、この年は投打に盤石な戦いぶりを披露。6月から首位を快走し始め、8月を迎えるころには既に独走態勢へと入っていた。対する西武は6月までは優勝争いに加わっていたが、7月15日から悪夢の13連敗を喫して大きく後退。9月を迎えた時点ではロッテとの3位争いが佳境を迎えている状況だった。

 試合はソフトバンクが武田翔太投手、西武が高橋光成投手の先発で始まった。ソフトバンクは初回に4番・内川聖一内野手の適時打で先制すると、3回には松田宣と長谷川勇也外野手の2者連続本塁打でリードを3点に広げる。対する西武も5回に鬼崎裕司氏の適時打で1点を返すが、6回には野選と明石健志外野手の犠飛でホークスがさらに2点を追加する。

 武田投手は7回1失点という見事な投球を見せてマウンドを降りたが、2番手の森投手が中村剛也内野手に2点適時二塁打を浴び、わずか1アウトしか取れずに降板する事態に。それでも3番手の五十嵐亮太投手がきっちりと火消しに成功してそれ以上の失点は許さず、9回はサファテ投手が無失点で締めくくって試合終了。シーズンを通じて圧倒的な強さを見せつけた福岡ソフトバンクが、リーグ連覇を達成した。

2016年は日本ハムが怒涛の15連勝をマークし追い上げ、大谷翔平投手が完封

○2016年9月28日 日本ハム対西武(西武プリンスドーム)

 リーグ3連覇を狙ったソフトバンクは序盤から快調に首位を走り、前評判通りの戦いぶりで独走態勢を築いていた。対する日本ハムは開幕から数か月はなかなか調子が上がらず、5月が終了した終了時点で勝率.520、順位は3位。首位に立っていたソフトバンクとは、最大で11.5ゲームという大差をつけられていた。

 しかし、日本ハムは6月19日から7月11日まで球団新記録となる怒涛の15連勝を記録するなど、中盤戦に入ってから猛烈な追い上げを見せ、8月25日にはついにシーズン初の首位浮上を果たす。その後も両チームは一進一退の戦いを続けたが、敵地で行われた9月21日からの直接対決で連勝を飾った日本ハムが一気に優位な状況に。優勝マジックを点灯させてからはその数を順調に減らしていき、マジック「1」の状況で28日の試合を迎えた。

 この試合の先発マウンドを託された大谷翔平投手は初回から鬼気迫る投球を見せ、西武打線を全く寄せ付けない。打線の援護は4回にレアード選手が放ったソロによる1点のみだったが、この日の大谷投手にとってはその1点で十分だった。許した安打は5回に森友哉捕手に打たれた1本のみ、四球を含めた走者もわずかに2人。9回を15奪三振で完封というまさに完璧なピッチングを見せ、チームを歓喜の瞬間へと導いた。

○2017年9月16日 ソフトバンク対西武(メットライフドーム)

 この年はスタートダッシュに成功した楽天が序盤から首位を走り、2013年以来となるリーグ優勝に向けて快進撃を演じた。しかし、王座奪還を狙うソフトバンクも徐々に調子を上げていき、熾烈なデッドヒートが繰り広げられていく。さらに、7月から8月にかけて13連勝を記録した西武も上位2チームを猛追。8月中旬まで、三つ巴の優勝争いが続いた。

 しかし、シーズンが終盤に差し掛かるにつれて、厚い選手層を誇るソフトバンクが底力を発揮。徐々に他の2チームを引き離して独走態勢を築いていき、勝てば優勝という状況まで持ち込んで、楽天をかわして2位に浮上した西武との直接対決に臨んだ。試合はこの年にシーズン最多勝に輝いたソフトバンク・東浜巨投手と、自己最多タイのシーズン11勝を記録した西武・野上亮磨投手の投げ合いとなった。

 西武は2回裏に山川穂高内野手のソロで1点を先制するが、ソフトバンクは4回表に柳田悠岐外野手の2ランで一気に試合をひっくり返す。続く5回表には3本の適時打で4点を奪い、7回にはデスパイネ外野手のソロで1点を追加。東浜投手は6回1失点の好投で救援陣にバトンを託し、モイネロ投手と岩嵜翔投手も無失点リリーフを見せる。9回にサファテ投手が外崎修汰内野手の適時打で2点を失ったものの、それ以上の失点は許さず逃げ切り。ソフトバンクが2年ぶりのリーグ優勝を果たした。

○2018年9月30日 西武対日本ハム(札幌ドーム)

 この年の西武は序盤から看板の強力打線が猛威を振るい、圧倒的な打力を武器にリーグを席巻。開幕8連勝を記録して早くも一歩抜け出すと、そのまま快調に貯金を積み重ねていく。シーズン中盤までは日本ハムが、終盤にはソフトバンクが追撃を見せたものの、いずれもメットライフドームで行われた直接対決でしっかりと差を広げ、付け入る隙を与えなかった。

 優勝マジック「1」の状況で迎えた札幌ドームでの一戦は、先発のウルフ投手が4回1/3を4失点(自責点3)と試合を作れず。打線も6回に栗山巧選手が放った犠飛の1点のみに抑えられ、1対4で敗戦。自力で優勝を決めることはできなかった。しかし、マジック対象チームだった2位のソフトバンクが同日の試合でロッテに敗れたため、西武の優勝が決定。2008年以来、ちょうど10年ぶりとなる頂点に立った。

今シーズンは西武が連覇を達成、優勝決定試合でも強力打線が爆発

○2019年9月24日 西武対ロッテ(ZOZOマリン)

 前年(2018年)は開幕から一度も首位の座を譲らずにリーグ優勝を勝ち取った西武だったが、連覇を狙った2019年は複数の主力選手が抜けた影響からか、7月終了時点でリーグ3位となかなかエンジンがかからず。一方、リーグ王座奪還に燃えるソフトバンクは7月に混戦状態から一歩抜け出し、前回優勝を飾った2シーズン前と同様の独走態勢を築きつつあった。

 しかし、西武はここから王者の意地を見せる。8月中旬から急激に調子を上げてAクラス争いから一気に抜け出し、首位のソフトバンクを猛追。最大で8.5ゲーム差あった状態から着々と差を詰めていき、9月11日には130試合目にしてシーズン初の首位浮上を果たす。その後も獅子軍団の勢いは衰えず、いよいよシーズン142試合目のロッテ戦に勝てば優勝というところまでこぎつけた。

 この試合で先発マウンドを託されたのは、自身10連勝中と絶好調のニール投手。持ち味の打たせて取る投球で6回3失点(自責点1)と試合を作り、打線は2回に3本の適時打で5点を先制。3回にも山川の43号2ランで2点を追加し、その後も攻撃の手を緩めずに加点していく。12対4という大差で9回裏を迎えると、最後は守護神の増田達至投手が3者凡退で締めて胴上げ投手に。昨季とは真逆の大逆転優勝というかたちで、リーグ連覇を達成した。

 このように振り返ってみると、一つの興味深い傾向が見えてくる。札幌ドームで試合に敗れたのちに胴上げを行った西武も含め、過去4年間の優勝チームは全て敵地でリーグ優勝を決めているのだ。本拠地のファンの前で胴上げがしたいという思いは多くの選手や関係者に共通するところだが、全てがそこまで思い通りにはいかないということか。

「パーソル パ・リーグTV」では、2013年以降のパ・リーグにおける優勝決定試合を、1試合丸々配信していく予定だ。歓喜に酔いしれたあの瞬間を、もう一度味わってみてはいかがだろうか。(「パ・リーグ インサイト」望月遼太)

(記事提供:パ・リーグ インサイト)

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