読者のみなさんからいただいた家計や保険、ローンなど、お金の悩みにプロのファイナンシャルプランナーが答えるFPの家計相談シリーズ。
今回の相談者は、カードの支払いに追われ貯蓄できないという24歳の独身男性。外貨建て投資信託や貯蓄型保険を活用しているといいますが、手元に預貯金がないため不安に感じているようです。FPの渡邊裕介氏がお答えします。
仕事柄、会食や飲み会が多くカード払いをすることが多いので、その支払いに追われ生活が困窮しています。住居費は社宅のため5000円が給与天引きされています。最近、外貨建て投資信託の積立を始めましたが、以前から外貨建て貯蓄型保険にも加入しているため、固定費が重くなかなか貯金ができません。何を見直したらいいのでしょうか。
<相談者プロフィール>
・男性、24歳、未婚
・職業:会社員
・居住形態:社宅
・毎月の手取り金額:15万円 (住居費0.5万円天引き後)
・年間の手取りボーナス額:100万円
・毎月の世帯の支出目安:14万円
【支出の内訳】
・住居費:なし(給与天引き)
・食費:5万円
・水道光熱費:1万円
・教育費:1.6万円
・保険料:1.5万円
(外貨建て貯蓄型保険)
・通信費:0.6万円(格安スマホ)
・お小遣い:3万円
・奨学金:1.6万円
【資産状況】
・毎月の貯蓄額:3.5万円
(外貨建て積立投資信託)
・ボーナスからの貯蓄額:なし
・現在の貯蓄総額:なし
・現在の投資総額:3.5万円
(外貨建て積立投資信託)
・現在の負債総額:約200万円
(第二種奨学金)
渡邊:こんにちは。ファイナンシャルプランナーの渡邊です。カードの支払いに追われて生活が困窮しているため、家計の見直しをしたいというご相談です。カードの利用によって、家計のコントロールが難しくなっているようですね。
まずはじめに、ご相談者は外貨建て貯蓄型保険や外貨建て積立投資信託を活用しており、毎月の貯蓄ができていないわけではありません。逆に強制的に貯蓄をされており、そういった意味では賢いやり方をされています。
ただ、普通預金など、いわゆる現金で貯めておらず、保険や投信のみでの貯蓄となってしまっており、手元の貯蓄がないため不安が大きくなっているようです。
貯蓄の仕組みを作るのにも順序があるので、今回は、貯蓄の順序と、カードを利用する際の家計をコントロールするコツについて整理していきましょう。
貯蓄の仕組みは「先取り」が鉄則
まず、貯蓄の仕組み作りですが、多くの方が毎月生活して余った分だけ貯蓄をしています。しかし、これではなかなか貯まりません。計画的に貯蓄をしていくためには、収入から目標とする貯蓄額を先に引いて、残りで生活をするのが鉄則です。
収入-生活費=貯 蓄 ×
収入-貯 蓄=生活費 〇
ご相談者のように、保険や積立投資信託など、強制的に口座から引かれるものを活用するのは、貯蓄する仕組みとしては非常に効果的です。ただ貯蓄の対象を選択する順序も大事になってきます。
資産は4つに分けて、まずは「生活の土台」を作る
次に貯蓄対象を選択する順序についてみていきたいと思います。まず、中長期的に資産形成をする際に、資産を大きく4つに分けて考えます。
(1)流動資産
(2)保険
(3)安定資産
(4)成長資産
『流動資産』とは、いわゆる普通預金のように、何かあった時にすぐに使えるお金のことで、『保険』は、万が一の際に資産を取り崩さないために必要な死亡や医療保険などの保障です。この(1)と(2)が生活に最低限必要な資産で、生活をしていく上での土台となります。
この2つをしっかりと確保した上で、(3)(4)の安定資産、成長資産を検討します。『安定資産』とは、国債のように満期が来れば収益の確定するものや、個人年金保険など。『成長資産』は、株式や投資信託、外貨建て保険など、リスクはあるが成長する可能性のある資産です。
流動資産&保 険=【生活の土台】
安定資産&成長資産=【土台の上に積上げる資産】
ご相談者は、この【生活の土台】を準備する前に、外貨建て保険や投資信託の積立などを始めているので、手元貯蓄が増えず、生活に困窮するという状態になってしまっています。まずは、土台を作るのが先です。投資信託の積立をやめ、満期の短い自動積立定期など、流動性のある強制貯蓄からスタートしましょう。
また、奨学金の返済については、早めの返済をおすすめします。奨学金の返済は長期に渡ることが多いですが、じわじわと家計を圧迫したり、ゆくゆく住宅購入する際に住宅ローンの借入れにも影響しますので、あと5年以内に返済を完了させるくらいの目標を持つとよいと思われます。
「記録する」を継続して、カードを上手に使う
次にカード支払いの管理についてです。カードで支払うことでポイントが貯まったり、手元に現金がなくても支払いができるので大変便利です。
ただ、利用金額や何に使ったのかを把握しておかないと、思わぬ請求がきて焦ることも。また、カードによって引き落としのタイミングが異なります。複数のカードを利用していると、いつ、いくら引き落とされるのかが分からなくなり、さらに混乱してしまいます。
混乱を防ぐために重要なのは、「記録をする」ということです。習慣になるまでは面倒だったり、忘れてしまったりしますが、しっかりと家計管理をしたい場合は、記録することを習慣化しましょう。
記録するタイミングですが、家計は月単位で管理をします。いつ、何に、いくら使ったのかが把握できるように、「カードを利用した日」に記録することをおすすめします。月の収入に対して、月単位の利用金額を定めておけば、使い過ぎ防止にもつながります。
最近は、「家計簿アプリ」などで、スマホで簡単に管理ができるようになり、無料で使えるものも多くあります。金融機関と連携して資産を管理できるアプリや、レシート撮影型、手動入力型など種類も多様なので、ご自身で管理しやすいアプリを選ぶことができます。もちろん、アプリなどが苦手な方は家計簿で構いません。重要なのは、記録することを一時的なものにするのではなく、継続できるようにすることです。
継続するためには、貯蓄目標をはっきりさせることです。目標があいまいだと、なかなか続かなく、結果的に貯まっていないということになりがちです。ただ漠然と貯蓄したいではなく、いつまでに、いくら、何のために貯めるかなど、はっきりした目標を立て、そのための貯蓄計画を立てることを意識しましょう。