テントで「ただ寝るだけ」なんて、もったいない!
2019年11月、ギミック好き、アウトドア道具好きに人気の<パーゴワークス>から発売された[ニンジャテント]。
「ただ寝るだけのテントではありません」とメーカーが語る通り、山や自然を移動するだけでなく、このテントをベースにしてじっくりと山や自然のなかで過ごす時間を味わいたくなるテント、というのが実際に使ってみた第一印象です。
まずは基本スペックをチェック
山岳テントによくあるX字型にポールを組むのではなく、2本のポールを2点で交差させる魚座型を採用。
エントランスは、出入りのしやすい長辺側に大きく設けられていいます。前室は、奥行きがあり、開口部のパネルを跳ね上げてタープ状の屋根になります。ここで自然を山を愛でながら過ごしてみようと誘われます。
テント内の幅は120cmあって、1人で使うならゆったり、寄り添って寝ても苦ではない関係なら2人でも問題のないサイズ。設営はポールを四角のグロメットに固定して、フックを掛けるだけの吊り下げ式。
【スペック】
・サイズ :120×220×105cm
・最小重量 :1,160g(フライシート、インナーテント、ポール2本)
・最大重量 :1,600g
超軽量テントに比べれば重いけれど、登山に使える十分な軽さを装備しています。山岳テントに必要な機能をパーゴワークス流のアイデアで昇華。山で快適な時間を過ごすためのこだわり満載。
それらの中で気になったものを、次に紹介していきましょう。
魚座型フレームを最大限に活用した広々空間
まず最初に「おぉ~」と感嘆したのが、魚座型のフレームワークです。
魚座型というのは、こういう「
」カタチのこと。2本のポールを2点で交差させるタイプで、山岳テントの多くで採用されているX字型に比べてテント内の圧迫感が少なく、強度があり、耐風性に優れています。
反面、ポールが長くなり、ポールを通すスリーブやポールを掛けるフックの数が増えるので、重量増は否めません。ニンジャテントは最重量1,160gと、その弱点を克服しています。
この魚座型を採用した理由をパーゴワークスのデザイナー・斎藤 徹さん(以下、徹さん)に聞いてみました。
「前室の居住性を高めるために魚座型にしました。ポールが前方に張り出すため、前後方向に距離を稼げるだけでなくテントの入り口付近に座った時、ちょうど頭上にピークが来て、圧迫感が少なくなっています。また、入り口の高さを稼ぐために、前ポールを後ポールより高くしました」
そうなんです! ポールを本体に配した時に前後の高さが違いに気が付いて、「ウォッ!」と驚きました。細かい! 細かいけれど、でもコレいい!!と、すぐに出入り口に座って頭上の調子を確認してしまいました。
気づきました? 2点の交点位置の大きな工夫
上の写真左側は私が所有する魚座型のテントです。パッと見は、似た作りのテントですが、2本のポールの交差する高さは、かなり違います。
そこで徹さんに「既存の魚座型テントに何らかの影響を受けているんですか?」と問うと、
「まったくありません。むしろ近い印象になるのは避けたいので、昔のカタログを見返して吟味しました」
とのこと。さらに、魚座型で設計する上で、もっとも苦心した点も聞いてみました。
「空間設計には苦労しました。特に同じ長さのポールの曲率を変えて、かつ理想的な位置で2点を交差させる作業には時間が掛かりました。ポールを1本足したり、長くすれば簡単なのですが、そこは軽量性と設営のしやすさにこだわりました」
確かに、ニンジャテントの方が交点が低い分、室内上部に幅があります。その分、下部のスペースがやや狭くなるのを、フライシートと背面側から出した細引きを連結して空間を広げています。わずかな差なのですが、このわずかな広がりが圧迫感を軽減してくれています。
つい試したくなるギミックで、テントから出たくなくなる?!
開放感あふれる前室は「自然のリビング」
徹さんの言葉を先に紹介した通り、前室の広さがニンジャテントの最大の特長です。幅53cmの[Zレスト]を置いても、すっぽり収まる奥行きがあります。この広いスペースは、単に荷物置き場を広くしたのではないようです。
というのも、エントランスのパネルを跳ね上げれば、写真のように前室に座って自然の中のリビングになるのです! 前室の広さは、ここに座ったり、テント内に座って前室に足を投げ出したりして寛いでほしいというメッセージなのだと感じます。
ちなみに撮影時は、近くに木があったので細引きを木に結んでパネルを上げましたが、トレッキングポールを柱にして上げることもできます。
景色を見ながらディナー、星空の下で一献
エントランスのパネルを巻き上げた状態でテント内から外を眺めると、その開放感をさらに感じられます。天気のいい日に、ゴロリと寝転びながら山の景色をゆっくり眺めるのが楽しみです。夜は星空を眺めるのもよさそうです。雄大な景色を見ながら、前室部分で調理や食事もできます。
多くの山岳用テントと違い、単に寝床としてテントを使うのではなく、山を楽しむための自分だけの秘密基地になってくれそうです。
寝転びながら、内側から換気もできる!
「ニンジャ」と名付けられている通り、このテント、忍者が住むからくり屋敷のようです。
前後の大型メッシュパネルやベンチレーションを備えていますが、特筆すべきは、背面に設けられたジッパーから手を出して、テント内に居ながらフライシートをたくし上げ、換気を促進できるギミック。面白すぎます。
世界初? 巻物に描かれた「テントの心得」が最高に楽しい!
ニンジャギミックは収納袋にも活きてます
テントの収納袋というと巾着袋か圧縮袋がほとんど。実用的ではあるけれど、遊び心をくすぐるようなものではなく、味気ない。でもニンジャテントは、遊び心満載です。
まず形状は「ニンジャ」だけに巻物状。広げると内側に設営方法やギミックの解説がプリントされ、本当に巻物です。
面白アイデアに込められた、こだわりと合理性
収納袋内側は細かく仕分けされています。2本のポールは別々に収納袋に設けられた左右のスリーブに、ペグや細引き、補修キットは小分け。テント本体とフライシートはゆったりサイズのメインスリーブに、ストレスなく入れられます。
ギア好きの私は、この収納袋だけでワクワクしてきます。ここまでこだわりを感じさせる収納袋って、これが世界で初めてなんじゃないでしょうか!
巻き方もラクです。メインスリーブの口が開いている側のポールを軸にして、クルクル。巻き上げると中の空気も抜けてコンパクになり、2本のテープをバックル留めするだけ。
アクセサリーも充実の標準装備
テント生地が30Dと薄いので、専用グラウンドシートが標準装備されています。細引きも2本、補修キットも備わり、ユーザビリティのよさ、メーカーとしてのきめ細やかさを実感できるでしょう。
補修キットにはシームシーラーも入っています。これはフライシートとフロアシートの縫い目に、ユーザー自身がシームシーラーを塗って、防水性を完璧なものにするためのものです。素材にシルナイロンを使っているため通常のテントのようにシームテープを貼れないという事情もありますが、その分軽く、経年劣化しにくいことを優先させたそうです。
ピークハントだけでない。想像力とアイデアで山を楽しもう
小型テント、特に山岳テントは、機能を削ぎ落としたストイックさがウリでした。もし、より高いピークを目指すだけなら、選ぶべきはそうしたテントです。
でも、ピークを目指すだけでなく、山の景色や空気をのんびり味わいたい、山で過ごす時間を移動だけで終わらせたくないと思うなら、[ニンジャテント]こそ選ぶべきです。装備されているギミックを自分なりに駆使して、新たな山の過ごし方を想像する楽しさがあるテントに思えました。正直、このテントほしい!
と思ったら、パーゴワークスの公式WEBサイトでのみの販売だったのですが、完売に・・・。
が、しかし、人気に応えて以下の日時に再販が決定いたしました!
ほしいと思った方、早い者勝ちです。
それでは皆さん、よい山旅を!