三菱重工 立神工場増強へ 造船事業の持続目指す

 三菱重工業が、長崎造船所香焼工場(長崎市香焼町)を売却した場合、同造船所本工場(立神工場、長崎市飽の浦町など)と下関造船所(山口県)の造船設備を増強する方針であることが17日、関係者への取材で分かった。関連地元企業や労働者が多い造船事業の持続を目指す。
 本工場では自衛隊の艦艇や海上保安庁の船艇を主に建造・修繕し、下関造船所で建造できない大型フェリーにも対応している。香焼工場のドックを手放す場合、長崎の造船拠点は本工場だけになる。生産に関わる地元パートナー企業も多いだけに、付加価値の高い船舶に経営資源を集中させて事業を持続させていく方針とみられる。
 香焼工場は大島造船所(西海市)に売却する方向で検討中。同工場の主力製品である液化天然ガス(LNG)運搬船が韓国とのコスト競争に苦戦し、受注・生産が途絶えている。同工場には「100万トンドック」と呼ばれる建造ドックや修繕ドックがあり、どこまで売却するかは今後詰める。
 三菱重工の商船部門は昨年1月、エンジニアリング(工学)や設計、営業などを担う三菱造船(横浜市)と、工作主体で香焼工場に本社を置く三菱重工海洋鉄構に分社化した。下関造船所は三菱造船が所管している。両社は、欧州で普及している高級フェリー市場への参入や、国、県、長崎市と協力した長崎港での客船修繕事業の拠点化も目指している。

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