元G長野&内海は苦戦、飛躍を遂げた広島一岡&DeNA平良 人的補償選手の移籍後は

広島・長野久義(左)と西武・内海哲也【写真:荒川祐史】

ロッテは小野、楽天は酒居をそれぞれ人的補償で獲得

 ロッテは19日、国内FA権を行使して楽天に移籍した鈴木大地内野手の人的補償として、小野郁投手を獲得したと発表した。一方楽天は国内FA権を行使してロッテへ移籍した美馬学投手の人的補償として酒居知史投手の獲得を発表した。

 日本球界でFA制度は1993年オフに導入された。人的補償は、FA宣言によって他球団に選手が移籍した場合、戦力低下の補償として移籍先球団から選手を獲得できる制度で、野球協約第205条の2に定められている。

 FA選手の前所属球団での年俸が上位1~3位(Aランク)か同4~10位(Bランク)の場合、人的補償が発生する。前所属球団は、移籍先球団が選んだ28人のプロテクトを外れた選手(外国人選手と同年ドラフト指名選手は除く)の中から、1人を指名して獲得できる。成長株の若手などがプロテクトから漏れ、人的補償で新天地に移る例も多い。

 人的補償によって移籍した選手では今季、12選手が現役でプレー。広島赤松は現役引退、西武高木勇は戦力外通告、ロッテ高濱は育成契約を結んだ。成績は以下の通り。

胃がんから復帰した広島赤松は現役引退、来季から2軍コーチに

○赤松真人(広島)
 2004年のドラフト6位で立命館大から阪神に入団。2年目の2006年には2軍で3割をマークし、2007年には1軍で28試合に出場した。2007年オフに新井貴浩の阪神移籍に伴って広島へ。移籍1年目から外野のレギュラーを争うと、2009年には137試合に出場し、オールスターにもファン投票で選ばれた。その後はレギュラーを奪われるも、代走や守備固めとして重用された。2016年オフに胃がんが発見され手術を受けた。今季限りで現役引退。来季は2軍コーチを務める。

○高濱卓也(ロッテ)
 2007年の高校生ドラフト1位で横浜高から阪神へ入団。小林宏之の阪神移籍に伴い、4年目の2011年からロッテへ。1年目に1軍デビューを果たしたものの、その後も定位置獲得とはならず。2016年に自己最多の53試合に出場したものの、腰痛が悪化した影響で今季は8試合出場。来季は育成選手として再起を図る。

○一岡竜司(広島)
 2011年ドラフト3位で沖データコンピュータ教育学院から巨人に入団。大竹寛の巨人移籍に伴い、2年目の2013年オフに広島へ移籍。移籍1年目の2014年から中継ぎ陣の一角として活躍し、2016年からのリーグ3連覇に貢献した。今季は33試合に登板して16ホールドをマーク。人的補償で移籍した選手の中で、最も成功を収めている選手といえるだろう。

○藤岡好明(DeNA)
 宮崎日大高、JR九州を経て、2005年の大学生・社会人ドラフト3位でソフトバンクへ。鶴岡慎也のソフトバンク移籍に伴い、人的補償として2014年に日本ハムへ移籍した。日本ハムの3年間ではわずか16試合登板に終わり、2016年途中にトレードでDeNAへ移籍。今季は32試合に登板して1勝1ホールド、防御率1.86の好成績だった。

○奥村展征(ヤクルト)
 2013年ドラフト4位で日大山形高から巨人入団。長打力のある内野手として期待されたが、2014年オフに相川亮二の巨人移籍により、NPB史上最短(プロ2年目)、最年少(19歳)でヤクルト移籍となった。移籍4年目の今季は74試合に出場、打率.199、1本塁打だった。

○平良拳太郎(DeNA)
 2015年にドラフト5位で沖縄・北山高から巨人に入団。2016年オフに山口俊の巨人移籍に伴い、人的補償でDeNAへ。移籍1年目の2017年に初登板初先発し、プロ初勝利をマーク。移籍3年目の今季は15試合登板(14先発)で5勝6敗、防御率4・11の成績だった。

○金田和之(オリックス)
 2012年ドラフト5位で大阪学院大から阪神入団。阪神では3シーズンで通算56試合登板、7勝1敗、防御率4.27の成績を残した。2016年オフに糸井嘉男の人的補償としてオリックスに移籍。移籍1年目の2017年には45試合に登板して4勝1敗、防御率4.15と中継ぎとして活躍した。しかし6試合登板(1勝0敗、防御率4.91)にとどまった。

○高木勇人(西武)
 2014年ドラフト3位で三菱重工名古屋から巨人に入団。ルーキーイヤーに26試合に先発して9勝10敗、防御率3.19の成績を残したが、年々、成績は下降。2017年オフに、巨人に移籍した野上亮磨の人的補償として西武へ。昨季はは8試合(3先発)1勝2敗、防御率8.69、今季は2試合、0勝0敗、防御率7.71に終わり、シーズン終了後に戦力外通告を受けた。

○尾仲祐哉(阪神)
 2016年ドラフト6位で広島経済大からDeNAに入団。2017年に11試合に登板したが、その年のオフに大和の人的補償で阪神へ。ルーキーイヤーのオフに移籍となった。今季は5試合登板、0勝0敗、防御率6.35だった。

元巨人で主力だった内海は1軍登板なし、長野も自己最少の72試合と精彩欠く

○長野久義(広島)
 2009年ドラフト1位でHondaから巨人に入団。入団1年目に打率.288、19本塁打をマークして新人王に輝く。翌2011年には打率.316で首位打者、12年に最多安打(173安打)のタイトルを獲得。ベストナイン、ゴールデングラブ賞をそれぞれ3度受賞するなど巨人中心打者として長く活躍した。昨年オフ、丸佳浩のFA移籍に伴い、人的補償で広島へ。今季は自己最少の72試合出場にとどまり、打率.250、5本塁打、20打点だった。

○内海哲也(西武)
 2003年ドラフトで自由獲得枠により東京ガスから巨人に入団し、長きにわたってエースとして君臨。入団3年目の2006年から13年までの8年間で7度の2桁勝利をマークし、2007年に最多奪三振、2011、2012年に2年連続最多勝利のタイトルを獲得した。2012年日本シリーズではMVPを受賞している。昨年オフ、炭谷銀仁朗のFA移籍に伴い、人的補償で西武へ。しかし今季は左前腕部を痛めた影響で1軍出場機会がなかった。

○竹安大知(オリックス)
 2015年ドラフト3位で熊本ゴールデンラークスから阪神入団。17年に1試合、18年に2試合に登板した。昨年オフ、西勇輝のFA移籍に伴い、人的補償でオリックスへ。移籍1年目の今季は10試合登板、3勝2敗、防御率4.50だった。今オフに右肘手術を受けた。

 まさに悲喜こもごも。広島一岡、DeNA平良らは新天地で飛躍を遂げた。一方、長野や内海は移籍1年目に苦しみを味わった。酒居と小野は新天地でどんなパフォーマンスを見せるだろうか。(Full-Count編集部)

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