ホンダ田辺TD 2019年F1総括(3):ベストレースはオーストリアGP「レッドブルの地元で力強い走りが見せられた」

 ホンダの田辺豊治F1テクニカルディレクターが、レッドブルとトロロッソの2チームとともに戦ったホンダの5年目のシーズンを振り返った。

──田辺さんにとって、2019年シーズンのベストレースは?田辺豊治F1テクニカルディレクター(以下、田辺TD):やはり、最初に優勝したオーストリアGPになると思います。いろんな状況が味方したとはいえ、レッドブルの本拠地で力強いレースが見せられました。また個人的には表彰台に上げさせてもらいました(笑)

──ホンダのスタッフが表彰台に上がったのは、2006年のハンガリーGPで当時、ホンダの社長を務めていた福井(威夫)さん以来でした。田辺TD:福井さんは、上がる権利がありました(当時はホンダがBAR買収してワークスチームとして参戦)。でも、それ以前はホンダのスタッフが表彰台に上がった記憶はありません。たぶん、第2期のときもなかったんじゃないでしょうか。

──確かにコンストラクターでないホンダのスタッフである田辺さんが表彰台に上がって優勝トロフィーを受け取るというのは、珍しい光景でした。田辺TD:表彰式が終わって、チームに『トロフィーはどうすればいい?』と聞いたら、『これはレッドブルで預かるから』って言われたので、すぐにお渡ししました。

──次に印象に残るレースは?田辺TD:当然、勝ったレースや最後の方のレースというのは記憶に新しいわけですが、やっぱり開幕戦の表彰台でしょうか。オフシーズンの結果を考えれば、トップ3チーム6台の中で、我々はその中で一番下だった。つまり、前に4台いるわけで、そこから表彰台に上がるためには2台を抜かないといけない状況でしたが、マックス(・フェルスタッペン)がきちんと走ってくれた。レッドブルとパートナーを組み、周囲の期待も大きい中、開幕戦でいきなり表彰台を手にしたことは、非常に励みとなりました。

──もうひとつ、挙げるなら?田辺TD:(ブラジルGPの)ワン・ツーですかね。レッドブル・ホンダとしての初のポール・トゥ・ウィン。トロロッソ・ホンダの2位も(ピエール・)ガスリーが常にセカンドグルーブのトップを走行し、いろんなことがあって最終的に2位。チームは違いますが、ホンダとしてはベストな結果が残せました。

──逆に残念だったレースは?田辺TD:日本GPですかね。鈴鹿という特別な場所で、日本のファンの方々、そしてホンダの従業員にレッドブル・ホンダに乗ってマックスが戦う姿を最後まで見てもらいたかった。しかし、(スタート直後の2コーナーでの接触によって)ダメージを受けて、それを果たすことができなかったことは非常に残念でした。

──2019年から2チームにパワーユニット供給を開始したわけですが、苦労と喜びは、どちらが大きかったですか。田辺TD:苦労以上に、今年の結果はうれしいかったです!!

──今年もありがとうございました。そして、1年間、お疲れ様でした。

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