2019年シーズン最終戦まで全日本ロードレース選手権でチャンピオンを争った高橋巧は、2020年は世界選手権であるSBKスーパーバイク世界選手権へ戦いの舞台を移す。自身初のSBKフル参戦イヤーとなる2020年に向けて、高橋はどんな思いで望むのだろうか。
2017年に全日本ロードレースの最高峰クラス、JSB1000でシリーズチャンピオンに輝いた高橋は、2018年にホンダのワークスチームであるチームHRCへ移籍。移籍初年度は“絶対王者”とも呼べる中須賀克行に王座を奪われたため、2019年は逆転を誓う1年となった。
高橋はツインリンクもてぎでのシーズン開幕戦こそ中須賀に勝ち星を譲ったものの、第2戦鈴鹿の予選では唯一2分3秒台に入る圧倒的な走りで2連続ポールポジションを獲得。決勝でも後続を寄せ付けずダブルウインを飾ってみせた。
その後の第3戦SUGOでも連勝を決めた高橋はポイントリーダーとしてシーズン後半戦を迎えることに。しかし、高橋は後半戦が幕を開ける前に行われたテストで負傷してしまう。
この影響でシーズン前半戦のようにライバルを圧倒できなくなったものの、高橋は表彰台に上がるなど着実にポイントを獲得。最終戦鈴鹿には11ポイントリードのランキング首位として臨んだ。
迎えた最終戦鈴鹿で高橋はレース1&2ともにポールポジションを獲得して王座に王手をかけたかに思われた。しかし、決勝レース1ではまさかの転倒があり16位。王座を争う中須賀がレース1を制したことで、ランキングでの逆手を許してしまった。
続くレース2では高橋が意地のポール・トゥ・ウィンを決めたものの、中須賀が2位に入ったことで再逆転は叶わず。2度目の王座には手が届かなかった。
そんな高橋は2019年の悔しさを胸に、2020年はSBKへと主戦場を移す。SBK参戦の話を全日本ロード最終戦の前に聞いたという高橋は「2019年に全日本でチャンピオンを獲ってSBKへ、というのが自分のなかで最低条件でしたが、結果的に最後の最後でチャンピオンを逃すことになってしまいました」とシーズンをふり返った。
「チャンピオンを獲れなかったという経験は、逆にいい経験になったという言葉もいただいたので、それを今後に活かし、SBKでさらに成長していきたいと思います」
■未経験コースでの対応力を「試すいい機会」
2020年のSBKで、高橋はホンダのサテライトチームにあたる『MIE Racing Team(MIEレーシング・チーム)』から参戦。2019年11月のミラノショー(EICMA2019)に登場したホンダCBR1000RR-R FIREBLADE(ファイヤーブレード)SPを相棒にシリーズを戦うことになる。
「2020年のマシンについては、(ファンの)みなさんと同じ程度の情報しかありません」と高橋。
「ただ、ホンダがすごいバイクを作っているという話を聞いていて、実際にとんでもないバイクが出てきたと思います」
「新型なので実際に乗ってみないと、どういうマシンなのかもわかりません。今まで10年近く同じ仕様のバイクに乗ってきたので、新型へ乗り換えるのは大変ですが、うまく合わせられる柔軟性を持って戦いたいですね」
高橋が所属するMIEレーシング・チームは2台体制を構築することがアナウンスされているが、現時点でチームメイトは不明。高橋は「僕自身、初めてのSBK参戦になるので、誰が来ても先輩になると思う」としながらも、「当然チームメイトはライバルですから、誰が来てもいい。チームメイトのいいところをうまく盗み、勉強できればと思います」と闘争心をみせた。
「僕はSBKが開催されるコースをほとんど走ったことがありませんから、どこまで(素早く)コースに対応できるかを試すいい機会だと思っています。そのなかで結果を求めていきたいです」
「世界選手権で、レベルの高い選手たちが集まっていますから、全日本のように戦っても勝てないことは分かっています。当然、優勝を目指して戦いますが、現実的に自分がどの程度で戦えるレベルにあるのかも、わからない状況です」
「目標は(シーズンが)始まってから高く設定したいと思うので、まずは開幕戦を走ってからですね。その前にテストもあるので、そこで周りとのレベル差がどれくらいなのか、少しずつわかってくると思います」
高橋が相棒となるCBR1000RR-Rに乗るタイミングはシーズン開幕直前になるとの見方が強い。全日本でチャンピオン獲得経験のある高橋が、SBKでどこまで戦えるのか。2020年2月28~3月1日の開幕戦オーストラリアで、高橋にとって挑戦の1年が幕を開ける。