選挙プランナー松田馨が、政治家を志しこれから選挙への立候補を考えている方や現職政治家の方へ選挙に勝つためのノウハウを解説していく『地方選挙 必勝講座』。
今回は候補者が活動していく中で、理解をしておくべき「政治活動」と「選挙運動」の違いを解説します。公職選挙法に基づく複雑な概念の為、選挙を経験した方でも正しく説明出来る方は少ないかもしれません。
日々の活動の中で常に意識するべき法律に関わる大切なことになりますので、この機会に正しく理解をしていただければと思います。
政治活動と選挙運動の違い
政治活動とは、公職選挙法において「政治上の目的をもって行われる一切の活動から選挙運動にわたる行為を除いたもの」とされています。
政治活動は原則として自由とされていますが、その中で選挙運動というものを規定し、例外的に厳しく制限をしています。
政治活動とは
これからあなたが活動をしていくにあたっては、当然のことながら「選挙での当選」を目的に活動していくことになります。しかしながら公職選挙法の規定では、選挙への立候補を表明し、当選するために投票を依頼する行為、つまり選挙運動ができるのは選挙運動期間中だけです。
告示日より前に投票依頼をすることは、事前運動として禁止されています(公職選挙法第129条)。そう考えると、全ての活動が制限されるような感覚を持たれるかもしれません。
ここが非常に重要なのですが、公職選挙法が厳しく制限をしているのはあくまで、「選挙運動」です。
選挙運動ではなく政治活動であれば、告示日までの期間に幅広く行うことができます。
政治活動については、日本国憲法で保障された国民の権利、主に「第19条 思想及び良心の自由」、そして「第21条 集会結社及び言論の自由」に基づくものとされており、原則として自由とされています。
では選挙運動とは?
一方、選挙運動とは「特定の選挙について、特定の候補者の当選を目的として、投票を得又は得させるために直接又は間接に必要かつ有利な行為」とされています。簡単に言うと
1、選挙が特定されること → 「来年の市議会議員選挙に」
2、候補者が特定されること → 「立候補する【候補者名】です」
3、投票を得るための働きかけ全般 → 「一票お願いします/応援してください」
というのが選挙運動です。
選挙運動の三要素
「当選を目的として、投票を得又は得させるために直接又は間接に必要かつ有利な行為」というのは、要するに「働きかける」ことです。
「一票お願いします」といった直接的な投票依頼でなくても、候補者の当選を目的に「よろしくお願いします」などの応援を依頼することも働きかけとみなされます。
これらは選挙運動の三要素と言われるのですが、言論であれ文書図画※1 であれインターネット上であれ、選挙運動が認められるのは選挙運動期間だけです。
※1:「ぶんしょとが」と読む。具体的には書籍、新聞、名刺、あいさつ状、ポスター、立札、看板、ちょうちん、プラカード、はがき、電報、スライド、映画、ネオンサイン、アドバルーン、塀や壁等に書かれた文字、路面の砂文字など
選挙運動の期間
選挙運動期間とは、告示日に立候補の届出が受理された時〜投票日の前日(24 時)までを指します。
例えば投票日が 2019年12月22日(日)に予定されている市議会議員選挙である場合は、2019年12月15日(日)に立候補の届出が受理された時〜12月21日(土)の日付が変わるまでが選挙運動期間となります。
また、選挙運動ができる時間帯を8時から20時までと勘違いされている方がいらっしゃいますが、これは街頭演説の時間規制です。選挙運動そのものは24時間認められています。
「選挙」と聞いて皆さんがイメージをされるであろう、たすきをかけた候補者が選挙カーに乗って名前を連呼している風景は、この選挙運動期間のものなのです。
活動のほとんどは「政治活動」期間
選挙運動期間は選挙の種別によって異なりますが、地方議会議員選挙の場合は5日間〜9日間しかありません。
選挙への立候補を決意したら、活動期間のほとんどは政治活動をしていくことになるのです。まず、この点をしっかりと理解してください。
選挙への立候補を予定している場合、全ての行動が「当選のためにやっている」と考えることもできます。
あなたも、支援者の皆さんも、何のために駅頭に立ってあいさつをしているのか、ビラを配っているのかと問われれば、「(最終的には)選挙に当選するため」と答えるでしょう。しかし、これでは選挙運動とみなされ、違反に問われてしまう可能性が高くなります。
告示日までの活動は、全て「政治活動」の範囲で行うことと、「これは政治活動としてやっている」と自覚して活動に臨むことが大切です。
明確な区別は難しい?
「政治活動」と「選挙運動」の基本的な考え方は以上となりますが、皆さんが実際に活動していく中でこの2つの明確な区別が難しい場合もあるかと思います。
これは政治活動は原則自由であり、かつ選挙運動の定義に解釈の幅があることに原因があり、選挙運動にあたるかどうかは各種活動の実態に即した正しい判断が必要となります。
スペースの関係上、本コラムに具体的な解説を載せることは出来ませんが選挙マニュアル本「地方選挙必勝の手引」にて活動に応じた詳しい説明を行っています。更に深く知りたい方はぜひご一読下さい。
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