甲子園“6連覇”中…縁起のいいパワプロ音楽、サウンドクリエイターの思い

パワプロシリーズのリードサウンドクリエイターを務める渡邊紀如さん【写真:安藤かなみ】

25周年記念コンサートで21日に東京公演、豪華演目をウインドオーケストラで演奏

「実況パワフルプロ野球」シリーズの誕生25周年を記念して、初の記念コンサートが開催されている。21日には新宿・東京オペラシティのコンサートホールで東京公演が行われるが、歴代のシリーズOP主題歌や作中で使用されている試合曲のメドレーなど豪華演目をウインドオーケストラによる演奏でファンに届ける予定となっている。

「25周年で何かできないかというところから始まって、『25年間で一度もコンサートをやったことがないよね』『ちょうどいいタイミングだからコンサートに踏み切らないか』『じゃあやりましょう』という流れで開催することになりました」と今回のコンサート開催にあたってのいきさつを語ってくれたのは、リードサウンドクリエイター・渡邊紀如(わたなべのりゆき)さん。パワプロシリーズの制作を音楽面から支えてきたクリエイターだ。

 兄の影響で音楽を始め、学生時代はバンド活動に打ち込んだ渡邊さん。バンド活動を続けるか、就職してゲーム音楽を制作するかで悩んだ末に2009年に(株)コナミデジタルエンタテインメントにコンポーザーとして入社。すぐにパワプロシリーズを担当することになり、「実況パワフルプロ野球 ポータブル4」(パワポタ4)での楽曲制作からそのキャリアをスタートさせた。

 パワプロチャンピオンシップステーマソング「Flying High」などを数々の楽曲を手がけた渡邊さん。中でも一番思い入れがあるというのが「パワプロ2016」のOP主題歌「Never-Ending tale」だ。「パワプロ2016」ではサクセス20周年ということもあり、パワフェス(パワフルフェスティバル)モードが誕生。「ゲームの主題歌はその作品の世界観を決める」。パワフェスで登場した熱盛宗厚という新キャラクターが作品を大きく盛り上げたように、OP楽曲や映像でもお祭り感を全面に出した仕上がりとなった。

パワプロシリーズのリードサウンドクリエイターを務める渡邊紀如さん【写真:安藤かなみ】

高校野球の応援歌は甲子園“6連覇中”「スタンドで聞いた時は感動しました」

 渡邊さんが「ちょっとした集大成にしたいなという気持ちがありました」と言う通り、OP映像の終盤には猪狩兄弟を始め歴代の人気キャラが勢ぞろいした。サクセス誕生20周年のメモリアルイヤーを彩った「Never-Ending tale」も、今回のコンサートではオーケストラのサウンドで披露されている。

 また、パワプロの作中で使われている楽曲のブラスバンドアレンジ楽譜は無料で配布されており、ゲーム中だけではなく実際の甲子園のスタンドも沸かせている。中でも大阪桐蔭・根尾(中日)の応援歌に使用されたことでもお馴染みの「かっせー!パワプロ」や「Brand New Sky」などは強豪校でも演奏され、パワプロの楽曲を使用している高校は現在甲子園で6校連続優勝中だ。渡邊さんも「もともと、主題歌をブラスバンドアレンジして、ゲームのモードの中で応援歌として使うということをやっていたんです。それが今、甲子園で現実に使われている。実際にスタンドで聞いた時は感動しました」と笑みをこぼした。

 プラットフォームの進化によって作品の中で再生できる音の幅も大きく広がり、応援歌だけではなくスタンドの歓声や打球音なども大きく進化をみせている。パワプロをプレーしながら、よりリアルに球場の雰囲気を体感することができる。頻繁にプロ野球の球場にも足を運んでいるという渡邊さんは「まだ再現できていない部分があると思っています。球場にいったら、球場で鳴っている音がある。空間の再現は追求していきたいです」と今後の作品制作への意気込みも語った。

 渡邊さんもトークゲストとして登壇予定の「実況パワフルプロ野球25周年記念コンサート」は、すでに大阪公演で大成功を納め、いよいよ21日に東京公演が行われる。場所は新宿・東京オペラシティのコンサートホール。オペラシティと聞いて、「かっちりしたドレスコードで行かないといけないのかな」と戸惑ったが、渡邊さんは「私服で大丈夫。なんならユニフォームでも問題ないです(笑)。気軽に来てください。親子での来場も大歓迎ですから」とその不安を一蹴してくれた。進化が止まらないゲーム音楽の魅力と、パワプロシリーズ25年の歴史を、直接会場で感じることができる。(安藤かなみ / Kanami Ando)

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