終活も「おひとりさま」時代に突入?“実現型”エンディングノートの衝撃

独居老人の孤独死など、少子高齢化社会ならではの事象が社会問題化しています。そんな中、単身者や身寄りのない「おひとりさま」向けに「終活」を支援する信託商品の取り扱いを、三井住友信託銀行が開始しました。

死後事務に必要な資金管理をするだけでなく、万が一の時の身の回りのことをワンストップで提供するといいます。実際にどんなことに対応してくれるのでしょうか。


TwitterやFacebookの削除も

12月17日から三井住友信託銀行が取り扱いを始めた「おひとりさま信託」では、SMS(ショートメッセージサービス)による安否確認や、葬儀や資産、訃報連絡などを記せる「エンディングノート」を提供します。

2020年3月からエンディングノートをデジタル移行

専用のエンディングノートに記入した内容を、デジタルデータ化して厳重に管理。銀行やクレジットカードの解約など、状況の変化に合わせ、PCやスマホで内容をいつでも上書きできるのが特徴だといいます。

エンディングノートに記入できるのは、葬儀の方法、家財の管理、財産、ペットの手配など。「おひとりさま」用に内容が絞り込まれています。

その中で特に目を引いたのが「SNSやデジタルデータ等デジタル遺品の削除・解約」という項目です。Apple、Google、LINE、Facebook、Instagram、Twitterと、各種のデジタルプラットフォームが一通りリストアップされています。

SNSアカウントや写真データなど、遺族に取り扱いが難しいとされる「デジタル遺品」の削除も一任できるというわけです。

従来のサービスと何が違う?

三井住友信託銀行・人生100年応援部の谷口佳充部長は「『パソコンやスマホのデータを確実に削除してほしい』『ペットに天寿をまっとうしてほしい』といった希望は、生前に準備が難しい」と分析します。

従来はそれぞれについて個別に相談する必要がありましたが、「当社と安心サポートのワンチームで、資金管理と終活サービスをワンストップで提供できます」(同)。

資金管理は同行が担当して、死後事務は同行設立の一般社団法人「安心サポート」が請け負う仕組みになっています。

「エンディングノートは、実現してくれる人がいないと単なるノートになる。これ(おひとりさま信託)は、記載いただいたものをそのまま実現できる『実現型』のエンディングノートです」と、谷口部長は胸を張ります。

メインターゲットは60歳前後の女性

こうした信託商品を提供する背景には、単身世帯の増加があります。2020年は3世帯に1世帯が単身世帯となり、2040年には2.5世帯に1世帯にまで増えると予測されています。一方で、高齢者の増加に伴い、葬儀などの「ライフエンディング市場」も拡大しています。

同行の調査によると、終活をしていない人でも「何から手を付けていいかわからない」「終活ですべきことがわからない」と不安に感じている人もいるといいます。また、男性と比べて女性のほうが関心が高いということがわかりました。

特に男女で差が出た項目は「遺体を見つけてもらえるか」「家財の処分をしてもらえるか」「公共料金・電話・クレジットカードの解約」「スマホ・PCなどの保存データやSNSがどうなるか」。全般的に、女性のほうが10%程度高く、不安に感じるという調査結果になったといいます。

おひとりさま信託のメインターゲットは、60歳前後の女性。最低で300万円以上の預け入れが必要で、信託報酬として設定時に3万3,000円(税込み、以下同)、死後に11万円と契約年数×6,600円が徴収されます。

現在は300万円を一括で預け入れる必要がありますが、今後は積立型などの方式の導入も検討しているといいます。今後も増えづける「おひとりさま」 。終活をワンストップ化することで、死後の不安を軽減することができるでしょうか。

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