女性の依存症 背景に暴力 東京「ダルク女性ハウス」代表・上岡陽江さん 心身整え回復を支援

「依存の背景を見極め適切に支援することが大切」と語る上岡代表=長崎市内

 薬物依存症などに陥る女性の多くが、何らかの暴力の被害者だと言われる。生きづらさを抱えた女性の回復を社会はどう支えていけばいいのか-。自身も依存症に苦しんだ経験がある依存症回復支援施設「ダルク女性ハウス」(東京)の上岡陽江代表(62)が「処方箋」を語る。
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 小6から中3までぜんそくで小児病棟に入院した。そこで重病の子たちが次々に亡くなるのを目の当たりにした。ショックだった。生き残ったことに対する後ろめたさから、酒に溺れ、ぜんそくの処方薬を大量に服用して依存症になった。10代後半のころだ。
 26歳から依存症回復施設を利用し、酒も薬物も断つことができたが、40歳まで摂食障害に苦しんだ。施設で出会った女性の多くが虐待やドメスティックバイオレンス(DV)の被害者。心と体の痛みを何とか止めたくて薬物に手を出していた。「ハウス」を設立したのは、そんな女性たちが安心して暮らせる居場所をつくりたかったからだ。
 虐待を受けた人の4、5割は何らかの依存症を発症するとの説がある。特に女性の薬物依存症の85%は虐待やDVなどの被害者と言われる。彼女たちの社会復帰は簡単ではない。小さな子どもがいる場合、自身の依存症からの回復に加え、育児や仕事などの負担ものしかかる。だから「ハウス」では母子一緒に支援する態勢を整えている。
 刑務所出所者の社会復帰はさらに困難。女性受刑者は入所中、ホルモンバランスが崩れ生理が止まっている人もいる。精神的に不安定になり薬物を再使用するケースも。心身の調子を整えた上で回復支援に移るようにしている。
 法務省は2020年度、薬物使用の罪で服役する女性受刑者を対象にした「女子依存症回復支援プログラム」を札幌刑務支所で試験導入する。民間団体と連携した初のモデル事業で、出所後の孤立を防ぐ仕組みづくりが目的。刑務官の教育や受け入れ先の開拓などを手助けする予定だ。
 依存症は時代を映す鏡。時代によって依存対象は変わる。今多いのが、ホストクラブ通いで借金をつくって、せき止め市販薬に依存して自殺未遂を繰り返して…みたいな子たち。彼女たちも暴力被害など暗い過去を引きずっているケースが多い。発達障害が原因でいじめに遭って薬物依存に陥る人もいる。依存の背景をきちんと見極め、それぞれの問題を解決し回復につなげることが大切だ。
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 上岡氏は11月下旬、民間団体主催の講演のため来崎した。

 ■ダルク女性ハウス

 1991年12月、薬物・アルコール依存症の女性を対象に開設した日本初の民間回復施設。当事者同士のミーティングが中心で、利用者は入所、通所合わせて約40人。精神保健福祉士や看護師、児童福祉司ら多職種のスタッフで運営し、子育てや就労の支援もしている。

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