昔日の年忘れ

 時代が変われば、師走の光景もまた変わる。この時期は〈ごちそうを苦しくなるほど食べて、笑って、底抜けに楽しかった〉と往時を懐かしむ便りを読者の女性から頂いた。何十年か前の昭和の頃、会社の忘年会が近づくと、披露する一芸を考えるのが〈楽しみでした〉と▲最近のアンケートによれば、忘年会に「行きたくない」という人は8割を超えたらしい、と先日の小欄に書いたところ、女性は世の変化に驚き、同時に昔日の記憶がよみがえったという▲社員は数人ずつに分かれ、昼休みに一芸の練習を重ねたらしい。“本番”では二人羽織で笑わせたり、クリスマスソングを歌ったり…と、楽しいお手紙を読むうちに、遠い昭和から笑い声や喝采が聞こえてくる▲別の女性からは、ずっと昔は忘年会や社員旅行は当たり前でした、と便りを頂いた。日頃、夫の後輩の若い社員たちがご自宅を不意に訪ねることもあったという。もてなした時を懐かしむ言葉が手紙に並ぶ▲昨今、職場の年忘れの集まりはあまり好まれないが、人が集まり、心を温め合った昔がある。その頃を忘れられない人がいる▲クリスマス・イブの今日の夜、たまった年末の仕事も忘年会もひとまずおいて、家族や親しい誰かと過ごす人もいるだろう。忘れがたく、心温まる光景となることを。(徹)

© 株式会社長崎新聞社