なぜ主婦層の7割は、就職氷河期世代支援に期待しないのか?

政府は就職氷河期世代の人たちを支援し、3年で30万人の正規雇用者を増やす目標を掲げています。

就職氷河期世代支援プログラムの概要には、支援対象について以下のように記されています。

「支援対象としては、正規雇用を希望していながら不本意に非正規雇用で働く者(少なくとも50万人)、就業を希望しながら様々な事情により求職活動をしていない長期無業者、社会とのつながりを作り、社会参加に向けてより丁寧な支援を必要とする者など、100万人程度と見込む」

上記にある100万人の対象者への支援は必要だと思います。しかしながら、就職氷河期世代に生まれたために辛い思いをした層を支援するにあたって、「30万人の正規雇用者を増やす」ことは、果たして適切な目標だと言えるのでしょうか?


働く主婦層の8割が氷河期世代

しゅふJOB総研が仕事と家庭の両立を希望する“働く主婦層”を対象に行った調査では、自ら就職氷河期世代に該当すると回答した人が約半数いました。(n=995)

有効回答数995人

就職氷河期世代とは、一般的に1993年~2004年に学校を卒業して社会に出た世代だと言われます。仮に高卒だった場合は33~44歳、大卒なら37~48歳くらいです。この年代層は、いま主婦となっている層と重なります。

実際、先ほどのデータを33~48歳の人だけで再集計してみると、実に80%が就職氷河期世代に該当すると回答していました。

氷河期世代“就活厳しかった”8割超

重ねて、「あなたが学校を卒業して社会に出た時、就職活動は厳しいと感じましたか」と尋ねたところ、「厳しかった」「やや厳しかった」を合わせて56.1%でした。その回答者を就職氷河期世代に該当する人とそうでない人に分けて比較したのが以下のグラフです。

就職氷河期世代に該当する人は、「厳しかった」「やや厳しかった」を合わせて81.0%に及びます。ほとんどの人が、厳しいと感じていたと言っても過言ではありません。

一方、就職氷河期世代に該当しない人は、「厳しかった」「やや厳しかった」を合わせて32.8%にとどまります。この落差を見るだけでも、就職氷河期の影響がいかに大きいものであったかを感じ取ることができます。

就職氷河期世代に該当する人からは、以下の声が寄せられました。当時のつらかった記憶が未だに消えない人もたくさんいるのだと感じます。

「バブル崩壊で就職口がなくなった」「本当に就職難だった」「新卒で希望職種に就けず、他業種を仕方なく選んだ人が多かった」「時期が違えば就職できた人もたくさんいた」

支援はすべきだが、効果は期待できない

では、働く主婦たちは就職氷河期世代への支援についてどう思っているのでしょうか。「就職氷河期世代に特化して支援することについて、あなたの考えに近いものをお教えください」と尋ねた結果が以下です。(n=995)

有効回答数995人

「支援すべきだし、効果も期待できる」「支援すべきだが、効果は期待できない」合わせて91.3%が、「支援すべき」と回答しています。

就職氷河期世代に該当する人とそうでない人とでも比較してみましたが、どちらも支援すべきと回答した比率が9割を超えていました。就職氷河期世代に該当する人はもちろんのこと、就職氷河期世代に該当しない人からみても、就職氷河期世代への支援は必要だと映っているようです。

そこで気になるのは、支援の効果です。しかし、「支援すべきだが、効果は期待できない」「支援すべきではないし、効果も期待できない」をあわせると、73.1%が「効果は期待できない」と思っています。

なぜ、支援の効果は期待できないのか?

政府が本腰を入れて支援に乗り出しているにも関わらず、効果が期待できないと感じている人が7割を超えているというのは衝撃的です。その理由を探るには、「効果が期待できない」と回答した人たちから寄せられた声に耳を傾ける必要があります。

「今更感がある」「その世代は子育てに忙しいです。子育てをしながらも働ける、採用してもらえる環境が整っているとは言えない」「人手不足の業界に押し込まれるだけかも?」「氷河期の人々はもう中年になっている」「男性前提に考えているのでは?当時、四大卒女子は、会社説明会にさえ参加させてもらえなかった」

当たり前のことですが、就職氷河期世代は男性だけではありません。もちろん女性も含めて正社員と呼ばれる働き方を希望している人がたくさんいることも事実です。

一方で、子育て世代であり、子育てや家事をしながら仕事と両立させたり、時短勤務しながらキャリアを継続・発展させていきたいと考えている人もたくさんいます。就職氷河期世代と一括りにしてしまうことで個々のニーズの把握が雑になり、せっかくの支援が有効に機能しないケースも想定されます。

そもそも、本来は就職氷河期世代が就活生だったころに必要としていた支援を10年も20年も経ってからどう行うのか。単に30万人の正規雇用者を増やすだけでは不十分であることは、明らかなのではないでしょうか。

© 株式会社マネーフォワード