梅野と小林が大接戦、投手は…データから最優秀守備賞を選出【投手・捕手編】

阪神・梅野隆太郎【写真:荒川祐史】

「1.02 FIELDING AWARDS 2019」を振り返る…捕手部門1位は巨人小林との接戦制した阪神・梅野

 米国では、データアナリストが選手の守備を分析し、その結果から優秀守備者を表彰する「Fielding Bible Awards」という賞が存在する。これに倣い、株式会社DELTAではアナリストの協力のもと、「1.02 FIELDING AWARDS」というNPBの優秀守備者を表彰する企画を開催している。今年でこの企画は4年目となるが、この結果をお伝えしたい。

「1.02 FIELDING AWARDS」では、今年は7人のアナリストが各々の分析手法で選手の守備貢献を評価。今季各ポジションを500イニング以上守った12球団の選手(投手の場合143イニング以上)を対象に順位付けし(1位:10点、2位:9点……)、最も多くのポイントを獲得した選手を最優秀守備者とした。今回は投手・捕手部門がどのようなランキングになったかを紹介する。

データで選出した2019年守備のベストナイン投手・捕手編【画像提供:DELTA】

 捕手部門では小林誠司(巨人)とのわずか1ポイント差の競り合いを制した梅野隆太郎(阪神)が選出された。梅野は1位票こそ小林より少なかったが、全アナリストから3位以内と安定して高評価を受けた。

「1.02 FIELDING AWARDS」では前回から捕手が捕球によって審判のストライクコールを誘発する“フレーミング”に対する分析・評価を解禁している。本企画を主催するDELTAが取得するデータは目視により取得したものだが、分析時の扱いに注意を払ったうえフレーミングを評価項目に取り入れたアナリストもいる。

 八代久通氏の分析では、小林がどのコースにおいても安定してストライクを獲得している様子が紹介された。中でも右打者のアウトロー、左打者のインローに当たるコースで多くストライクを獲得していたようだ。小林は前回の本企画でも1位を獲得していたが、今季も少ない出場機会の中で確かな成果を残していたようだ。そのほかには甲斐拓也(ソフトバンク)は低め、森友哉(西武)は真ん中に近いストライクゾーンへの投球がボールとコールされることが多いなど各捕手のフレーミングの特徴が紹介された。

 捕手の守備に関してはほかのポジションに比べ、データ分析の世界でも未成熟な部分が多い。分析・評価の手法が異なることで、アナリスト間で順位に差が出ることも多かった。

投手部門は阪神・西が1位、票が割れる中で昨年10位から大躍進

 投手部門は西勇輝(阪神)がトップとなった。捕手の梅野とあわせてバッテリーは阪神勢が選出されている。さきほど捕手はアナリスト間で評価に差が出ることも多かったと紹介したが、投手はその捕手よりもさらに評価が割れた。

 投手の守備評価というと、バントやゴロの処理や牽制などが想像されるだろうか。しかしそもそも投手の投球と守備は厳密に分けられるものではない。より良いバント処理を行うため、マウンドから素早く駆け下りられるよう投球した結果、ボールカウントが増えれば、守備が投球に作用したと考えられる。投球と守備は地続きになっているのだ。

 こうした実態を考慮した結果、アナリストの市川博久氏は投球もすべてひっくるめて評価するというラジカルな手法を採用した。結果、ほかのアナリストの間では評価が高くなかった山口俊(巨人)に1位票を投じている。それぞれのアナリストで評価の手法だけでなく、どこまでを守備と考えるかにも違いが生まれたことで順位付けには大きな差が生まれた。しかし結果的には牽制やバント処理において堅実に高評価を得ていた西が1位となっている。

 ただ西も前回は17投手中10位と2年続けて高評価を得たわけではない。ほかのポジションの野手はシーズン1200イニングを超えて守ることもあるのに対し、投手は多くても200イニング程度。イニングが少ない中での争いとなるため、年によって大きく順位が変わる傾向は今後も続いていくかもしれない。(DELTA)

DELTA
 2011年設立。セイバーメトリクスを用いた分析を得意とするアナリストによる組織。書籍『プロ野球を統計学と客観分析で考える デルタ・ベースボール・リポート1・2』(水曜社刊)、電子書籍『セイバーメトリクス・マガジン1・2』(DELTA刊)、メールマガジン『Delta's Weekly Report』などを通じ野球界への提言を行っている。集計・算出した守備指標UZRや総合評価指標WARなどのスタッツ、アナリストによる分析記事を公開する『1.02 Essence of Baseball』も運営する。

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