映画『へヴィ・トリップ/俺たち崖っぷち北欧メタル!』- 実はシリアスなテーマを内包しつつ、徹底的に、堂々とした、抱腹絶倒、爆笑の音楽映画!

映画の邦題にはガッカリすることもあるが、『ヘヴィ・トリップ/俺たち崖っぷちの北欧メタル!』って邦題、いい! 『HEAVY TRIP』を片仮名にしてダサいサブタイトルを付けて、コレがピッタリ! 本当に常に崖っぷちなのだ。

メタルが盛んな国、フィンランドとノルウェーの合作である本作。舞台はフィンランドの何もないド田舎。幼馴染の4人の若者がメタル・バンドを組んでいる。バンド名はIMPALED REKTUM(インペイルド・レクタム/直訳:直腸陥没)。結成から12年も経つのに一度もステージに立ったことはなくオリジナル曲もない。腰まで伸ばしたロン毛は反骨精神の証のつもりだけど、村のヤンキーにホモとヤジられ、ヤジられても立ち向かうこともできないヘタレっぷり。メンバーの仕事は介護士だったり家業のトナカイ解体を手伝ってたり。村を牛耳るのは中古車ディーラーでオールドスクールなロック・バンドのボーカルの女たらし。こいつに気に入られないと村で唯一ライブができる店のステージに立てない。

そんな生活の中で遂に一曲のオリジナル曲が誕生。コレが傑作。たまたま出会ったノルウェーの巨大メタルフェスのプロデューサーにその曲のテープを渡し、フェス参加が決定! ……かどうかは映画を観てほしいのだが、夢が近づいてきた時のイキイキとした4人。気づけば村の人々も4人を応援している。ホモとヤジったヤンキーも、「バカにして悪かった」と声をかけてくる。夢を持つことさえも夢のような何もない村で、4人は希望の光になったのだ。しかしメンバーの一人が事故で亡くなり、失意の底に落ちる4人。バンドは解散。このままでいいのか? いいわけがない!

小さな村から飛び出し、ポンコツ車でノルウェーの巨大メタルフェスの会場へと旅立つ4人。進む道には高い山、果てしない海と空。北欧の大自然。そこで出会う人々。

音楽映画でありロードムービーであり青春映画。そして、何もない田舎で夢を持つこと、持ち続けることの厳しさと素晴らしさというシリアスなテーマを実は内包しつつ、徹底的に、堂々とした、抱腹絶倒、爆笑のコメディ映画。

監督のユーソ・ラーティオ、ユッカ・ヴィドゥグレンは本作品が初の長編映画。音楽担当はフィンランドを代表するヘヴィメタル・バンド、ストラトヴァリウスのラウリ・ボラー。

巨大メタルフェスを目指すと決めたら、夢を目指すと決めたら、前だけを見て進むのだ!(text:遠藤妙子)

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