実は親日家が多いマレーシアに、親子二代で移住している赤松さん一家。今では子どものほうが順応しているそう。ではなぜ赤松さん一家はマレーシアに移住を決めたのでしょうか。そこには「子どもの教育」ということが関係しているようです。
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まずはチャレンジ!あまり力まず海外移住にトライ
行政書士・経営コンサルタント(アクティス株式会社・行政書士赤沼法務事務所)の赤沼慎太郎さんは、現在マレーシアと日本を行き来する生活をしています。2人のお子さんは現地の日本人学校とローカル保育園に通学中。住まいはマレーシアの日本人学校のほど近く、スバンジャヤエリアにあります。
両親も赤沼さんが移住する数年前からマレーシアに移住して生活を楽しんでいて、ときどきお互いの家を訪ね合うこともあるそう。今回は妻の赤沼さやかさんとともに話をうかがいました。
──赤沼さんは日本国内で行政書士と経営コンサルタントとして活躍する傍ら、日本企業のマレーシア進出支援やマレーシア移住や留学を考えている人の支援もしているということですが、現在どのような生活スタイルなんですか?
赤沼慎太郎さん(以下、慎)今の仕事の中心は日本ですが、月の十日から二週間弱はマレーシアに滞在しています。今はインターネットなどの通信環境も充実しているので、マレーシアにいても日本の顧客とのやり取りに大きな不便はありません。マレーシア進出支援の事業は1年半ほど前から取り組んでいますが、多くの日本企業がマレーシアに興味をもっており、これからが楽しみな事業です。
妻と子どもたちはマレーシアで生活しており、私が日本にいる間はほぼ母子家庭のような感じで生活しています。両親はマレーシアに住んでいますが、それぞれ独立して生活していて、頻繁に会うわけにもいきません。なので、できるだけ妻の育児の負担も減らしたいという理由もあり、息子の通う日本人学校から近いスバンジャヤというクアラルンプール近郊のエリアに居をかまえ、現地での暮らしを楽しんでもらっています。2018年6月からマレーシアに住みはじめました。
──完全に日本の生活をたたんでマレーシアに移住したわけではなくて、2拠点の生活ということになのですね。
慎そうです。よく海外移住というと、思い切って決断したねとかすごいねといわれることも多いのですが、我が家の場合はそれほどカチッとした感じではなく、まずはチャレンジしてみようとあまり力まずに海外移住にトライしてみた感じです。なので、完全に日本の生活を引き払って拠点を変えているわけではないです。
先のこともおおよそはイメージしていますが、まず1年やってみたらいい感じにいったので、さらに3年やってみようといった感じですね。息子が中学生になることを見据えたタイミングが次の節目になるかなと思っていますが、子どもの成長は未知数なので、先を決め打ちしてはいません。
──そうはいってもなかなか思い切ったご決断だと思うのですが、何かきっかけはあったのですか?
慎マレーシアに興味をもったのは、私のビジネス的な興味もあるのですが、妻が海外生活に強い関心をもっていたことが大きいです。また私の両親が先にビザを取得してマレーシアに移住していて、マレーシアへの移住が比較的身近であったことも大きいですね。海外移住はいろいろ考えると、心配事などもありなかなか決断できないと思いますが、なんといっても勢いも大切だと思います。我が家の合言葉は「まずはチャレンジ」です。
──ご両親が先に海外移住をされているのですね。リタイア後ということでしょうか?
慎父は仕事を退職した後に、しばらくしてからマレーシアに移住しました。父はサラリーマン時代にドイツに赴任していたことなどもあり、インターナショナルな現場で仕事をしてきたという経歴もあります。そうしたこともあり、海外生活に慣れており、第二の人生を楽しんで、エネルギッシュに毎日過ごすためにマレーシアを選んだようです。
そういうシニアの人はマレーシアに多くいます。両親はスポーツ吹き矢や太極拳、アマチュア無線など多趣味なので、のんびり南国暮らしというよりも、趣味が充実していてとても忙しそうです。日本人にとってマレーシアがとても暮らしやすいことは両親を通じて知っていたので、最初から好印象でした。
子どものほうが順応性が高い
──移住に際し、奥様は不安はなかったですか?
赤沼さやかさん(以下、さ)私も夫の両親の様子を見ていたので、印象がよかったですし、なにより海外生活への憧れのほうが優先していました。もともと英語教育には興味があったので、息子も娘もインターナショナルな保育園に通わせていて、そこでの生活が子どもにあっている様子だったので、海外で生活しても楽しくやってくれそうだな、と。
現在娘は、マレーシアのローカル保育園に通っていますが、現地の友達と楽しく過ごしています。2020年は、インターナショナルスクールに進学します。
──2020年からインターナショナルスクールに進学するんですね。
さインター校への入学は何歳から入れるといいか、英語教育に触れさせるのは早いほうがとか、日本語が定着した高学年からのほうがいいとか、いろいろな説があるので迷ってしまうことが多いと思います。我が家の場合は、娘がローカルの保育園でも楽しくやっていたのを見て、この機会にインター校への入学を決めました。
──お住まいのマレーシア・スバンジャヤエリアはどのような居住区ですか?
さクアラルンプール(以下、KL)近郊のエリアで、日本人街といわれているモントキアラからもKL中心地からも車で30分くらい。日本人学校があるので、日本人も比較的多く住むエリアです。
買い物など普段の生活は、近所にスーパーや商業エリアがあるので便利な地域です。とくに「クランバレー」と呼ばれるKLとその近郊エリアにあるスーパーでは、日本食材が普通に売られており、買い物に困ることはほとんどありません。
マレーシアのスーパーの特色は、イスラム文化圏のため、イスラム教で禁じられている豚肉やお酒が普通の売り場ではなく、ノンハラルコーナーという別の売り場でしか売っていないという点です。お酒は日本で買うよりも高い。
スバンジャヤエリアは郊外なので、車中心の街づくりとなっていて、どこへ行くにも車が必要です。歩道の整備はあまりよくありません。車がないと不便ではありますが、マレーシアはGrabという配車サービスがあり、自分で車の運転ができなくても比較的便利に生活ができます。ただ、時間帯によっては渋滞がひどく、移動に倍くらいかかってしまいます。電車の便はよく、30分程度でKL中心地にいくこともできます。
KL中心地に比べると住宅の家賃も安めで、150平米くらいのファミリー向けのコンドミニアムが10~15万円くらいで借りれます。食費は日本の食材が日本で買うより割高ですが、ローカルの八百屋さんや商店を上手に利用してバランスよくやり繰りすれば、日本より生活費を抑えることができます。ただ、TV番組などでは日本の3分の1のコストで暮らせると紹介されていることが多いですが、実際はそこまでではないですね。
──とても暮らしやすそうですね。お子さんと地域の暮らしや人々とのの関わりはありますか?
慎子どもたちはすっかりマレーシアでの暮らしに慣れてくれていて、適応能力の高さにこちらも驚くほど。同じコンドミニアムに住む子どもたちと息子が放課後プールで一緒に泳いだり、サッカーをしたり、ベイブレード(駒のオモチャ)やスケートボードで遊んだり。身体を使った遊びでキチンとコミュニケーションしているんですよ。
一般的に日本人の子ども同士、ローカルの子ども同士で固まって遊ぶことが多く、あまり日本人とローカルの子どもたちが交わらない傾向にあるようなのですが、うちの息子がローカルの友達と遊んでいるのを見て周りの親は驚いたようで。うちの息子は友達をつくるのが上手なタイプなので、そういった面は親としてとても嬉しいですし、これからも大事にしてもらいたいと思っています。
実際、休日などに家族で街を歩いていたときにローカルの友達が息子に元気に声をかけてくれることも多く、仲がいいんだなってことがわかって嬉しくなりましたね。
──ローカルの子と遊べるなんて本当にたくましいですね。マレーシア人は親日といわれていますが印象はどうですか?
さ本当に彼らはフレンドリーだし、大人たちも「子どもは宝」という考え方も浸透しているので、すぐ笑顔で話しかけたり、飲食店の店員さんが子どもの頭を撫でてくれたり、よくかまってくれるんですよね。子育てにおいて常に明るい気持ちでいられる環境だと思います。タクシーに乗っていても、私が日本人だとわかるとテンションが高くなり、日本についての質問や自分の知っている日本のアニメや歌手などの話をしてくれたりします。
情報収集は現地でしたほうがいい
──お子さんたちを進学させるにあたって、事前情報の収集はどうされましたか?
さ事前に現地を見にきて情報収集をしました。ほかにもインターネットで調べたりもしましたが、ネットでの情報では限界があります。基本的に子どもたちにはそれぞれ、日本で受けてきた教育と地続きの形で、上の子には日本人学校、下の子にはローカル保育園を選びましたが、下の子の保育園探しは日本人向けの情報が少なく、選択に苦労しました。
結果的にチルドレンズハウス(The Children's House )という保育園を選びましたが、とてもいい保育園で満足しています。
──マレーシアの保育園はどんな感じなのでしょうか?
さ基本的に、保育園での友達や先生との会話は英語なのですが、マレー語やマンダリン(中国語)の授業も少しあります。娘の保育園には日本人が数名しかいなくて、同い年の日本人もいないので、クラスでは唯一です。そのため、保育園での会話は100%英語。そんな環境なので、マレーシアに来て1年くらいで娘は英語でコミュニケーションが取れるようになってました。子どもの対応力はすごい。
また、こっちに来て驚いたことの一つにお誕生日会があります。日本では、普通はお誕生日の子が友達からプレゼントをもらいますが、こっちでは、逆に誕生日の子がお友達にお菓子や文房具などのプレゼントを振る舞うんです。娘が毎月ちょっとオシャレなステーショナリーなどをもらって帰ってくるので、これはどうしたことかしらと話を聞いて、ようやくその風習を知ったのですが、カルチャーショックでした。そんなことひとつひとつも愛おしいというか、異文化に触れているなという実感があって楽しいですね。
──息子さんが通われている、マレーシアの日本人学校はいかがですか?
さ日本人学校は基本的に日本の学校と同じカリキュラムでやっているので、勉強はそれほど違わないと思います。ただ、日本人学校に通っていると、普段の会話は日本にいるのと同じようにほぼ日本語だけなので、英語の習得は進みにくいと思います。
ただ、息子の場合は先述の通りローカルの友達と遊んでいる中で、簡単な会話はできるようになっていますし、友達と会話するために英語に対するモチベーションが高く保たれている感じです。また、家でも英語の勉強には力を入れています。目標があったほうがいいので、英検の合格を目標として、マレーシア人の家庭教師をつけて勉強しています。お陰様で、マレーシアに来て1年くらいで3級に合格し、今、準2級の合格を目標に頑張っています。
息子も日本でインターナショナル保育園に通っていたので、小さいころから英語に触れていたこともあり、リスニングは得意でしたが、マレーシアに来てからさらに飛躍的に伸び、文法の勉強もすることで英語学力はマレーシアに来た当時よりも格段によくなっています。
──それは海外移住をした甲斐がありましたね。お子さんの成長がなにより励みだと思いますが、海外での子育てで不安は何かありますか?
さやはり主人が不在のときに、私一人で具合が悪くなったらどうしようという不安はあります。我が家は義理の両親が近くにいるので、いざというとき連絡を取り合えるので、精神的な支えにはなっているものの、普段は近所のママ友の助けがとても大きいです。
自宅の近くには日本語の話せるスタッフがいるクリニックもあり、子どもが風邪をひいたときなども安心です。そういった点を考えても大きな不安は少ないですね。
マレーシアは観光も充実 インスタ映えも
赤沼さんの住むコンドミニアムのすぐそばには、サウジャナゴルフ&カントリークラブという名門のゴルフコースがあり、トッププロのトーナメントも開催され、プロゴルファーの松山英樹選手や石川遼選手も来たことがあるようです。
KLとその近郊には多くのゴルフコースがあり、マレーシアはゴルフ天国とも言われ、ゴルフ好きも多く移住されてます。また最近は、インスタスポットとして注目されている”マレーシアのウユニ湖”と誉れ高い「スカイミラー」がKL中心地から車で1時間30分ほどの距離にあるなど、観光も充実しています。
教育移住を考えているご家族はぜひ一度、マレーシアを訪れてほしいです。筆者も赤沼さんご家族に導かれ、マレーシアに行ってみたくなりました。
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