分断され憎悪に満ちあふれる世界、もはや政治では解決が期待できなくなってしまったこの時代を救えるのは音楽だけかもしれない。そんな気迫が伝わってくる最新アルバムです。まるで壮大なサウンド・トラックともいえるこの作品は、ロックというカテゴリを離れクラシック、フォーク、ゴスペル、アフリカン、アラビアン、聖歌にいたるサウンドを使って多様な社会を表現し、宗教や文化の違いがあっても同じ人間として理解し融和する事の大切さを訴えているのです。
表題の「エヴリデイ・ライフ」は、世界中で争いや悲劇が起こる今日、何もない普通の生活がいかに大切なのかを表しています。アルバムのコンセプトそのものと言える「アラベスク」では、あのフェラ・クティをオマージュしたアフロ・ビートにのせ“僕が君でもおかしくはない、君が僕でもおかしくはない”“同じものを2つの角度から見ているだけ、僕らは同じ血を分かちあっている”と歌い、同じ人間としての寛容と融和、隣人愛を訴えています。
(ワーナーミュージック・2700円+税)=北澤孝