長崎スポーツ この1年(8完) V長崎 初の天皇杯4強 最後に手にした一体感

天皇杯の準決勝鹿島戦、同じ思いを共有してJ1上位クラブを追い詰めたV長崎の選手たち=茨城県鹿嶋市、カシマスタジアム

 サッカーの天皇杯全日本選手権でV・ファーレン長崎がクラブ史上初、そして今年のJ2勢最高となる4強入りを果たした。12月21日の準決勝もJ1鹿島を相手に健闘。最後は2-3で敗れたが、リーグ戦の鬱憤(うっぷん)を晴らすかのような内容のある試合を見せてくれた。
 この激闘を終えた後、選手たちの表情は充実感に満ちていた。DF亀川諒史の言葉に、その理由がにじみ出ていた。
 「ここまでつないでくれた選手、託してくれた選手、託された選手がいる中で、本当にいい準備ができた。90分間それを出せた。僕は誇りに思っている」
 今のメンバーで戦える最後の試合で、ようやくチームが一つになれた。全員が同じ思いを共有できた一戦だった。
 天皇杯はリーグ戦で出場機会を得られない“サブ組”を中心に戦ってきた。2回戦は延長戦、3回戦はPK戦の末に辛勝。格下に苦戦したが、続く4回戦でJ1仙台を相手に金星を挙げると、準々決勝も甲府とのJ2対決を制した。クラブの歴史を塗り替える勝利になった。
 一方のリーグ戦。選手間の意思疎通を欠き、サポーターの期待に応えられない試合が続いた。J1復帰を掲げながら、12位で終了。満足できる結果ではなかった。
 天皇杯の準決勝は、リーグ戦の全日程が終了して1カ月後の開催だった。ここまで勝ち上がってきたサブ組にすべてを委ねるという選択肢もあったが、チームが選んだのはリーグ戦組との“ミックス”。中には4強入りに貢献しながらベンチにも入れず、今季限りでの契約満了を言い渡された選手もいた。
 そんな仲間たちの複雑な思いをくみ取り、選ばれた選手たちはベストの準備をして、ベストに近い試合をした。ピッチ上の11人だけではなく、結果的にベンチ外となったメンバーも最後までアピールしたからこそ、トレーニングは質の高いものになった。チーム全員が同じ方向を向いたからこそ、鹿島を追い詰めることができた。
 来季も選手は多数入れ替わる。また、一からチームづくりが始まるが、最後に手に入れた一体感を受け継いでいければ、J1への道は広がるはずだ。

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