今季の疲労は来季に影響…連投データで分析、救援陣の負担を抑えられた球団は?

西武・平井克典(左)、巨人・田口麗斗【写真:荒川祐史, Getty Images】

来季のパフォーマンスにも影響を与える今季の疲労、最も負担が小さい球団は?

 2019年シーズンも終わり、現在選手たちはオフを迎えている。フレッシュな状態で来季を迎えるためにもこの時期に身体を休めることは非常に重要だ。ただ過酷なシーズンを戦い抜いた野球選手が完全にリフレッシュするのはそう簡単なことではない。

 特に投手はそうだ。前年に登板が多かった投手が翌年に疲労を持ち越し、パフォーマンスを落とすというのもよく見る光景である。今回は各球団で連投がどの程度行われていたか「連投データ」に注目し、負担を推測。どの球団がうまくブルペンを運用できていたか、また来季に向け投手陣にどの程度のダメージが残るかを考察してみたい。

チーム別連投数【画像提供:DELTA】

 イラストは2015-19年の5年間に、各球団で2連投以上の登板が行われた回数を数えたものだ。ここでの連投は連続した日付で登板を行ったものを指している。移動日など、試合がない日をはさんだ連続試合登板はカウントしていない。

 まず球団別に見る前に、全体の傾向を把握しておきたい。2015年にNPB全体で1091回あった連投は、2018年は1258回、今季は1374回と右肩上がりだ。今季はパ・リーグの規定投球回到達投手がわずか6名にとどまったことが話題になったが、先発が多くのイニングを投げられないツケは救援陣にまわってきている。

 次に球団ごとに2連投以上の回数を見ていく。ここでは5年間の球団別連投数の平均(99)より少なく抑えられたものは赤、多くなってしまったものは青で着色した。今季でいうと、ロッテの連投が86回と飛び抜けて少なかったようだ。前年の101から大幅に減らしている。

 一方、巨人は前年の79回から126回に、日本ハムは87回から12球団最多の130回に連投が増えている。ともに主力先発に不調や離脱があった球団で、ローテーションの柱がなくなることの影響の大きさを感じさせる。日本ハムに関してはショートスターターなど、特殊な投手運用を行った影響もあるかもしれない。

 西武は平井克典が12球団個人最多の30回の連投をこなしたが、チームとしては111と特別多いわけではなかった。ソフトバンクは2015年、2016年と連投が60弱と非常に少なかったが、2017年以降は倍近くに膨らんでいる。近年は負担が大きい運用が続いているようだ。

チーム別3連投以上登板数【画像提供:DELTA】

よりチーム方針が出やすい3連投データで見てみると…

 ただ143試合をこなす中で2連投を避けてシーズンを戦い抜くのは非現実的だ。ある程度の連投が発生するのは仕方ない。しかし2連投なのか3連投なのかでは負担に大きな違いがあるはずだ。ここではよりチームの方針が出やすいと思われる3連投以上に絞って、さきほどと同じように2015-19年の球団別データを見てみたい。

 今季の3連投以上に注目すると、ここでもロッテが非常に目立っている。2018年に21回あった3連投以上の登板は、今季6にまで減少。多くの球団で20回前後3連投以上があったことから考えると、連投を避ける意識を非常に強く持っていたことがうかがえる。ちなみにロッテ救援陣の投球回は2018年の440回1/3から今季は479回1/3に増加していた。そうした中でこれだけ連投を減らすのは至難の業だ。

 ロッテは今季から吉井理人コーチが投手コーチに就任している。投手のコンディションへの理解が深い吉井コーチの巧みなブルペン運用の成果がこうしたデータに表れているのかもしれない。イラストを見ると、吉井コーチが在籍した2015年のソフトバンク、2016-18年の日本ハムも11以下と3連投以上の登板を少なく抑えることに成功していた。

 さきほど今季最も連投が多かったと紹介した日本ハムは、3連投以上においては10とロッテに次ぎ少なかった。2連投までは仕方ないが、3連投以上に関しては厳しく管理する方針がチームで徹底されているのかもしれない。

 巨人は3連投以上の登板が27とひときわ多い。特に田口麗斗は7月6日から今季のNPBで唯一の5連投をこなしたほか、同じく7月後半に4連投をこなす機会もあった。優勝争いの中でやむをえない部分もあったのかもしれないが、もう少し負担を減らしながら戦いたいところだ。チームはオフにチアゴ・ビエイラ、エンジェル・サンチェスと外国人投手を補強している。ほかの投手陣の負担を軽減するためにも彼らの活躍は欠かせない。

 すでに述べたように近年NPBの連投数は増加している。もし今後もこうした状況が続けば、救援投手のコンディションをどのように管理するか、ブルペン運用は以前にも増して重要になるだろう。試合単体を観戦するだけではなかなか気づきにくいが、シーズンを通すとこれほど大きな差が生まれる。この差が来季以降にどのように影響してくるか注目したいところだ。(DELTA)

DELTA
 2011年設立。セイバーメトリクスを用いた分析を得意とするアナリストによる組織。書籍『プロ野球を統計学と客観分析で考える デルタ・ベースボール・リポート1・2』(水曜社刊)、電子書籍『セイバーメトリクス・マガジン1・2』(DELTA刊)、メールマガジン『Delta's Weekly Report』などを通じ野球界への提言を行っている。集計・算出した守備指標UZRや総合評価指標WARなどのスタッツ、アナリストによる分析記事を公開する『1.02 Essence of Baseball』も運営する。

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