12月上旬の朝、佐世保市のハウステンボス(HTB)。坂口克彦社長は開園に合わせて入場口に立ち、来場者を出迎えた。
「ようこそ」。訪れた一人一人に声を掛ける。時には手荷物を預ける場所を案内したり、パンフレットを渡して見どころを紹介したりしていた。
5月に澤田秀雄氏から社長を引き継いだ。時間がある時は、ほぼ毎日立っている。従業員に教えている「現場主義」を自ら実践。「ここにいると、データを見るよりも来場者のことがよく分かる」と話す。
HTBが経営危機にあった2010年、澤田氏が社長に就任した。斬新なアイデアで数々のイベントを企画。来場者を伸ばした。開業以来、赤字が続いていた経営を黒字に転換。再建を果たした。
「カリスマから組織へ」。坂口社長は就任する際に経営方針の転換を宣言した。トップダウンではなく、現場の知恵を生かす考えを示した。
HTBの年間入場者数は減少傾向にあり、その歯止めが求められていた。このため坂口社長は、入場料金の実質的な値下げに踏み切った。「パスポート革命」と銘打ち、「1DAY」など各種パスポートで、アトラクションごとにかかっていた追加料金をなくした。
10月の導入当初は、前年同月の数字を上回る入場者数を記録した。しかし11月に入り、思うように伸びていないという。それでも坂口社長は「焦ってはいけない。地道に改革を進める」と語る。
一方の澤田氏は、HTBを再建した功績が認められ、佐世保市から名誉市民の称号を受けた。
顕彰式の会見で、マーケットが小さい上にアクセスが悪いことなど、HTBの弱点を指摘。「僕もたくさん失敗した。新しい社長も苦労が分かったと思う。苦労した上で、本当に喜んでもらえる施設へと脱皮できるはずだ」と期待を寄せた。
澤田氏は20日付で取締役会長も退任。株式上場に向け、親会社の旅行大手、エイチ・アイ・エス(HIS)との独立性の確保を図る。年明けには場内のリニューアルも計画。どう集客につなげるのか、坂口体制の真価が問われる。
長崎 この1年(5) ハウステンボス社長交代 組織経営 問われる真価
- Published
- 2019/12/26 11:23 (JST)
- Updated
- 2020/12/21 09:41 (JST)
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