DNP、経産省、NEDOがRFIDを活用し、食品ロスの解決と新たな購買体験の創出

「食品廃棄物等の利用状況等(平成28年度推計)」によると、2016年度に発生した食品ロスは約643万トンだった。

食品ロスというのは、本来食べられるにも関わらず捨てられてしまう食べ物のことだ。その食品ロスが2016年度で約643万トン発生したが、廃棄した主体を一般家庭と食品関連事業者(食品製造業、食品卸売業、食品小売業、外食産業)に分けて考えた時、一般家庭からは291万トン、食品関連事業者からは352万トンの食品が廃棄されている。

食品廃棄物等の利用状況等(平成28年度推計) source:食品ロスポータルサイト

食品関連事業者が何を廃棄しているのかというと、傷が入っていたり、小さかったり、変形していたりする規格外品や外食産業であれば食べ残しなど、やむを得ず廃棄しなければならないものもある一方で、返品や売れ残りといったサプライチェーン上の無駄に起因するものもある。

サプライチェーンというのは、原材料の調達されてから商品が消費者に至るまでの生産・流通プロセスをいうが、このプロセスに無駄が発生している原因の1つが「情報の分断」と言われている。サプライチェーンを担うプレイヤーをメーカー、中間流通、小売に分けて考えてみたとき、メーカーは中間流通の倉庫の状況がわからず、また、小売店の販売動向もわからない。

そのため、メーカーはいつ、どれだけの商品を生産してよいか分からず、商品を過剰に生産してしまう場合がある。過剰に生産されると、中間流通・小売は、ゆくゆくは返品あるいは廃棄される商品を運んだり、売ろうとする。このように各事業者間での情報が分断していると、無駄が生まれやすく、返品や廃棄といった食品ロスを引き起こす。

そこでメーカー、中間流通、小売の情報の分断を解決する手段として、RFID(電子タグ)が期待されている。RFIDとは、無線を利用して非接触で電子タグのデータを読み書きする自動認識技術だ。商品に電子タグを取り付けることで、離れていても個品単位での情報管理が可能となる。

RFIDのイメージ source:経産省

個品単位の情報を収集できれば、製造・在庫情報や配送状況、生活者の購入状況などをサプライチェーン全体で共有でき、無駄を削減できるとして、その効果が期待されている。

このような背景を踏まえて、大日本印刷株式会社(以下、DNP)、経済産業省、国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構、は2019年2月12日~28日に「RFIDを用いた情報共有システムの実証実験」を行った。そして12月26日にDNPは同実証実験の成果報告書を公開したと発表した。

同実証実験では、RFIDを用いることで、前記の通り商品の所在や状態をサプライチェーンプレイヤー全体で把握・共有し、業務効率化や廃棄・返品等の無駄の削減を実現することだけでなく、新たな消費購買体験の創出も期待できるとしている。報告された成果は大きく4点ある。

1. 店舗でのRFID活用によるダイナミックプライシングと広告配信効果を検証
2. RFIDを用いた家庭内サービスの体験
3. 電子タグの取り付け位置のガイドラインを公開
4. 国際標準EPCISに準拠したデータ共有モデルを策定

DNPは今後もサプライチェーンの効率化やスマート化に向けてRFIDの実装を推進していくようだ。

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