高校中退ゼロへ議論 教育関係者ら支援法探る 横浜

パネルディスカッションには教育関係者らが登壇した=横浜市神奈川区

 高校中退のさまざまな背景と生徒支援について考える「中退ゼロを目指す!高校生支援のためのシンポジウム」が25日、かながわ県民センター(横浜市神奈川区)で開かれた。教員や学習支援の関係者らがパネルディスカッションを行い、現場の体験を踏まえながら意見を交わした。暴力防止の活動を行う認定NPO法人エンパワメントかながわの主催。

 県立永谷高校長の河合俊直さんは「いろいろな課題を持つ生徒が多く、外部の団体とも連携している」とし、同校の中退者数などを例に挙げながら現状を説明。「『学校を続けたいが、中退しなければいけない』という生徒をゼロにするための支援が必要」とした。

 外国にルーツを持つ生徒を支援する認定NPO法人「多文化共生教育ネットワークかながわ」事務局長の高橋清樹さんは、日本語指導が必要な高校生の状況を語った。「生徒への日本語指導の未整備、家庭の厳しい状況などから中退率が高い」と解説したうえで、「神奈川はそういった生徒を最も積極的に支援している。効果について調査しており、成果を全国に伝えたい」と話した。

 東京都立高校でスクールソーシャルワーカーを務める岩倉智久さんは、1週間に3校を訪問し、教員ではない立場で生徒と「何でもあり」の話をしている。「ずっと趣味の話をしていた生徒から、あるとき急に核心の話が出た」などの事例を挙げながら、「人と同じなら安心という社会を何とかしたい。高校生が生きやすい社会は誰もが生きやすい」と力を込めた。

 県教育委員会高校教育課の唐川和彦さんは、10代女性の44%がデートDVを経験しているというデータを挙げ、県の相談事業や防止対策などを紹介。さらに「定時制高校の教員時代にタロット占いを覚え、占ってほしいという生徒に勇気と未来につながる言葉ばかり掛けていた」と体験談を語り、「現場の先生にはそういった変化球も覚えてほしい」と助言した。

 エンパワメントかながわ理事長の阿部真紀さんは「(それぞれが)つながることで高校生、子どもたちを応援し、暴力、貧困の連鎖を断ち切ることを皆さんとやっていきたい」と締めくくった。

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