サッカーの第98回全国高校選手権(30日開幕・首都圏各地)に3年ぶり22度目の出場を果たした名門、市船橋(千葉)で、3年のDF中村颯(そう)選手(18)=長崎県南島原市西有家町出身=がベンチ入りした。幼少のころから見守ってくれた祖父武久さん=享年(80)=と交わした「全国の舞台に立つ」との約束をかなえ、全国制覇を目指す。
中村選手は、2人の兄の背中を追うように小学2年でサッカーを始めた。体幹の強さを生かしたパワフルなプレースタイルに定評があり、小学校卒業と同時に親元を離れた。日本サッカー協会が中高一貫教育と連携し、世界に羽ばたく選手やリーダーを育成する「JFAアカデミー熊本」に進学し基礎を磨いた。
武久さんは家業が忙しい両親に代わり、地元サッカークラブの送迎をし、相談事に乗ってくれた。市船橋のセレクションに合格した時は「颯が『イチフナ(市船)』に行くとばい」と自慢の孫に相好を崩していたという。
順調なサッカー人生を歩んでいたが、1年夏に右肩を骨折。4カ月間のリハビリを強いられた。完治後も100人近くいる部員の中で、同級生らの活躍をベンチの外から見守った。2年の秋には武久さんが他界。最期には立ち会えなかった。
今年秋、同じポジションの選手が日本代表入りし出場機会が巡ってきた。11月2日の高円宮杯U-18プレミアリーグの対清水エスパルス戦に公式戦初出場。身長176センチ、体重70キロとDFとしては小柄だが、前線への多彩なキックやクロスボールで攻撃の起点となった。
波多秀吾監督(37)は「Bチーム降格後も腐らず、地道に努力していた。ここ最近すごく伸びた。今ではなかなか外すことができない状況」と評価する。
最後の全国大会には背番号「6」で登録。初戦=1月2日、日章学園(宮崎)=を前に中村選手は闘志を胸に秘める。「祖父の姿はスタンドにはないが、自分に言いたかったことは分かる。じいちゃん、行ってきます。天国でも見ててね」
亡き祖父との約束胸に 全国高校サッカー選手権出場へ 市船橋・中村颯
- Published
- 2019/12/28 00:04 (JST)
- Updated
- 2019/12/28 15:29 (JST)
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