ドラマ「白い巨塔」の衝撃… 田宮二郎は財前五郎に殉じたのか?

1979年 1月6日 テレビドラマ「白い巨塔」最終回が放送された日

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大学病院の真っ黒な内幕を描いた「白い巨塔」

2003年に放送された唐沢寿明版もよかったが、私にとっての『白い巨塔』は、1978年に放送された田宮二郎版だ。教授選や医療ミスなど、それまでの病院ドラマでは描かれなかった大学病院の内幕というのが斬新だった。

なかでも印象的だったのが、田宮演じる財前五郎が、手術をした日の夜、必ず愛人の家に寄るくだり。血を見ると女性を抱きたくなるのね… と、小学生だった私はちょっとドキドキした。

ただ子供には、太地喜和子演じる、愛人・花森ケイ子の魅力がよくわからなかった。この人、色っぽいけど、美女ってわけじゃないしなぁと。それと、五郎の悪のブレーンとなるオジサンたちが策を練る、料亭の場面の長さったら。あぁ、また料亭か! オジサンたち、話長いんだよ、とテレビの前でぶつぶつ言った気がする。

テーマ曲はテレビドラマ・アニメ主題歌の巨匠 渡辺岳夫

教授選を経て、後半は医療ミス裁判がストーリーの中心となり、さらには五郎が病に蝕まれる様子が描かれる。ドラマの内容は、深刻で重たい。だが、こうした内容に反して、テレビドラマ・アニメ主題歌の巨匠、渡辺岳夫が作ったテーマ曲は清々しく軽やかだ。

「財前教授の総回診が始まります」(シリーズ前半は東教授の総回診)という女性の声の後にこのテーマ曲が流れてくると、ワクワクする。回を重ねて、ストーリーが重たくなればなるほど、このテーマ曲が救いになってくる。唐沢版のオリジナルテーマ曲とラストに流れる「アメイジング・グレイス」も悪くなかったが、私には田宮版の清々しさがぐっとくる。

時を経て実感できた田宮版ドラマ「白い巨塔」の魅力

唐沢版放送の翌年、フジテレビのCSチャンネルでこの田宮版が一挙放送された。26年ぶりに観た田宮版の料亭場面、めちゃめちゃおもしろいじゃないの! 金子信雄、曽我廼家明蝶、小沢栄太郎、小松方正といった海千山千の曲者たちのやり取りが最高。ここでは、さすがの財前五郎もほんの若造という感じだ。ちょこんと隅っこに正座し、曲者たちの会話に素直に相槌を打つ五郎が、かわいくさえ見える。

そして、太地演じる花森ケイ子の魅力にもやっと気がつく。色っぽい妖婦なのに、ときに菩薩にも童女にも見えるケイ子。五郎の本心を見抜き、発破をかけたり皮肉を言ったりしながらも、五郎を母性で包み込む。

母一人子一人で育ちながら、医師として大成するため、財前家に婿養子に入った五郎だが、実は母親思いで仕送りや電話を欠かさない。ケイ子を愛人にしたのも、母恋しのマザコンゆえなのかな… と思えてきた。

最終回を待たずして、猟銃自殺を遂げた田宮二郎

78年放送時、最終回の放送を待たずに、田宮二郎は猟銃自殺を遂げる。なんだかほんとに財前五郎になっちゃったのかな、当時私はそんなことを思った。まるで、役に殉じたみたいだ。そういえば、田宮の本名は柴田吾郎というらしい。

生きていれば、田宮は今年2019年の8月で84歳。老境に入った財前五郎、いや田宮二郎を見てみたかったなぁと、今も時々思う。

※2018年7月29日に掲載された記事をアップデート

カタリベ: 平マリアンヌ