浸水住宅の「床下」を救え 台風被害の多摩川流域

床下に潜り、工具を使って断熱材を取り外す作業。周囲には泥が付着していた=21日、川崎市中原区

 台風19号の大規模水害で深刻な影響が出ている多摩川流域で、浸水した住宅の復旧を支援する有志のボランティアチームが発足し、「床下」の清掃や消毒に乗り出した。カビの繁殖や健康被害を防ぐ上で欠かせないが、ぬれた家財や壁紙を除去するといった「床上」の作業に比べると見落とされやすく、対応が遅れているためだ。過去の水害で培った経験を生かしながら川崎市内などで独自にニーズを掘り起こし、暮らしの再建を後押ししている。

 「状態はいいが、わずかにカビがある。きちんと拭いておこう」

 21日、多摩川と武蔵小杉駅の間にある川崎市中原区上丸子山王町。浸水した住宅の床下に潜った神奈川レスキューサポート・バイクネットワークの沢田健介副代表が呼び掛けた。約10人で臨んだこの日の作業のリーダーで、11月末に産声を上げた「多摩川災害支援チーム」の中心メンバーだ。

 ボランティアはヘッドライトにゴーグル、マスク、手袋などを着け、交代で床下へ。体の向きを変えられないほど狭い空間で、付着していた泥を取り除き、板状の断熱材を取り外して丁寧にブラシをかけた。

 家人の男性会社員(56)によると、この住宅は台風19号で床上まで浸水し、「半壊」と判定された。被災後すぐに、泥水にまみれた宅内を清掃し、壁の内側で水を吸った断熱材を撤去。友人の協力を得てドリルなどで床に穴を開け、ポンプや除湿機を使って水抜きと乾燥作業を始めた。

 最高気温が10度ほどと冷え込んだこの日も1階の窓を開け放ち、送風機で床下に風を送っていた。

 「うちは台所や風呂が2階なので生活はできる。他の家はもっと大変なはず」と男性。作業を依頼したのは、周辺の支援に入っていたボランティアと偶然出会ったのがきっかけだ。「高齢者でなければ頼めないと思っていた。こうした作業は自分ではできない。本当に助かる」。消毒と乾燥を経て、28日にもボランティアが作業に入った。

 床下の作業は専門的な知識や技術が必要なため、ボランティアを派遣するかどうかは自治体によって判断が分かれている。川崎市の災害ボランティアセンターは対応せず、被災者からの活動依頼が少なくなったとして11月下旬に閉所されている。

 こうした現状を踏まえ、昨夏の西日本豪雨などで床下作業の経験があるボランティアらが支援チームを結成。フェイスブックで仲間を募りながら、主に週末を利用して活動している。

 ボランティアに対する技術的な講習を手掛ける「DEF TOKYO」の今田るり子事務局長は「西日本豪雨の被災地でも、いまだにカビへの対応があるようだ」と水害被災地での継続的な支援の必要性を強調。沢田さんは「床下に水が残ると、悪臭や呼吸器系への影響などが懸念されるが、まだ状況を確認していない住宅が多いのではないか。活動の裾野を広げ、作業できる人を増やしていきたい」と今後を見据える。

© 株式会社神奈川新聞社