現代では再現不可能? なカースタントいっぱい! 伝説の刑事ドラマ「西部警察」
破壊した車両は約4,600台、ガソリン使用量は約12,000L、火薬の量は約4.8t、撮影で飛ばしたヘリコプターの数はのべ約600機、ロケ地4,500箇所、壊した家屋は320軒、さらに始末書の数、45枚……。この数字は何かというと、刑事アクションドラマ「西部警察」のデータです。
日曜午後8時という、家族団欒の時間に毎週放映されるTVドラマでありながら、現実の警察活動ではありえないほどに拳銃やショットガンをぶっ放し、敵もバズーカや手榴弾をどこからかふつうに調達して応戦し(笑)、逃げる犯人のクルマと街中で堂々とカーチェイスやカースタントを行ない、警察の車が猛烈にカッコイイチューニングマシンという破天荒さなどから、今や伝説のポリスアクションとなった西部警察。1979(昭和54)年から1984(昭和59)年の5年間に、「パート1」から「パート3」まで3部にわたり全236話が放映されました。
何しろ第1話から銀座に装甲車が登場しちゃったんですから、驚きです。今ではもうこんな映像、二度と作ることはできないと思います。その意味でも、まさに伝説のTVドラマなのです。
日本中の若者・子供たちが日産ファンにさせられたほど、影響力の強い番組だった
私ごとながら、放映当時の筆者は“多感な”小学生から中学生の頃。放映時間になると毎週TVにかじりつき、食い入るように観たのを思い出します。小さい頃から日産やスカイラインが好きだったのですが、西部警察ではスポンサーの日産が車両提供を行なっていたため、このドラマで強烈な印象を与えられ、日産愛にブーストをかけられました。
本コーナーでは、厳選した3つの場面を筆者のイラストとともにご紹介します!
現金輸送車が空を飛ぶ!? 「西部警察」第10話『ホットマネー攻防戦』
[(https://www.amazon.co.jp/gp/product/B00UUM5X3M/ref=aslitl?ie=UTF8&camp=247&creative=1211&creativeASIN=B00UUM5X3M&linkCode=as2&tag=autocone06-22&linkId=b393dc6de50894fc839c1ee6ed9bc165)まずは西部警察パート1の第10話(昭和54年12月16日放映)『ホットマネー攻防戦』です。
西部警察ファンならもう「ああー、あのシーンだ」って頭に浮かんじゃうかも。話自体はネタバレになってしまうので割愛しますが、230型セドリックバンの現金輸送車が、クライマックスで大ジャンプ。追っ手(も、230型セド/グロ)を振り切り、悠々と道ゆくクルマを飛び越えてゆくあの場面です。なぜこんなシーンが展開されて、結末はどうなったのか!? が気になりますよね!
ちなみにこの大ジャンプシーンは、江東区辰巳付近で撮影されました。どうして道にジャンプ台があるの? っていうツッコミは無しでお願いします(笑)。
なお、230型セドリックバンは「城西警備保障」のクルマ(※この回では車体表記なし)なのですが、西部警察では城西警備保障が悪党に襲われるのは定番。たぶん、日本で一番多く襲われた警備会社なのではないかと思われます(涙)。
日産車が日産のディーラーで大暴れ! 「西部警察パート3」第33話『仙台爆破計画~宮城・後編~』
続いて、これも伝説の名シーンと銘打たれる、西部警察パート3の第33話「仙台爆破計画~宮城・後編~」(昭和58年12月25日放映)から、追い詰められた犯人車が日産ディーラー内で暴れまわり、最後は建物の上から…という「一連の場面」です。
当時大人気だった西部警察は、パート2とパート3において、ファンへの感謝の意味も込めて、日本各地16道府県で11回の「全国縦断ロケ」を実施しました。その際、ロケ先の地元企業や日産ディーラーが捜査に協力することが多く「仙台爆破計画~宮城・後編~」でも、日産サニー宮城(現:日産サティオ宮城)の本社屋がロケに使用されました。この回ではそんな捜査協力のくだりもまたいい味出してます。ぜひDVDなどで観て欲しい! ちなみに仙台ロケは全国縦断ロケの第9弾です。
犯人車がミニカーとして製品化されるほどのコアな人気
これまたストーリーは書きませんが、一連のカーアクションシーンもとにかくスゴイ!
仙台市内を逃げ回ってきた犯人の白い330セドリックが、とあるきっかけで(このあたりも面白いシーンです)日産サニー宮城に逃げ込むと、宮城県警のパトカーや西部署のSUPER Z、スカイラインRSターボ軍団らも続いて敷地内で追いかけます。
その犯人車のセドリックがいかにもぶわんぶわんと柔らかそうなアシなのに(とある理由で)ロールバー入りなせいか、ドリフト時にもやけに切れの良いコーナリング姿勢を魅せてくれるのも注目ポイント(笑)。
その間、犯人のクルマは整備中のサニーにぶつかってドアを外したり、撮影当時まだそんなに古くなかったはずのスカイライン・ジャパンGTパトカーとクラッシュしたり、日産「スタンザ」の看板を突き破ってみたり、もうやりたい放題。撮影協力メーカーのクルマや宣伝の看板を破壊しちゃうなんて、今では考えられないですよね(笑)。
[(https://www.amazon.co.jp/gp/product/B00J85BV8I/ref=aslitl?ie=UTF8&camp=247&creative=1211&creativeASIN=B00J85BV8I&linkCode=as2&tag=autocone06-22&linkId=d01ec4639070a18a6ded1f49b197dd50)そして追い詰められた犯人は、最後に……おっと、ここからは実際に映像を観てのお楽しみ! イラストでは、その結末を少しだけ描いておきましょう。なおマニアックなことに! この時の「日産 セドリック SGL-Eエクストラ」がTOMYTEC(トミーテック)から製品化されているというから驚きます。それだけこの作品のコアなファンが多いということでしょう。
これぞ伝説中の伝説、フェアレディZの運河越え! 「西部警察」第104話『栄光への爆走』
3つめは、これも外すことができない名シーン「フェアレディZの大ジャンプ」。
パート1・第104話「栄光への爆走」(昭和56年11月15日放映)で披露されました。犯人が乗ったS30型フェアレディZが逃走する際、なぜか工事現場に突入、そしてなぜか工事現場にあったスロープを使って、運河を越える大ジャンプを敢行するのでした。フェアレディZは見事に運河を飛び越す……かに見えるのですが、実際のカースタント撮影では着地の際に姿勢を崩し、派手に車体後部をクラッシュしてしまいます。でも放映された次のシーンでは……いやいや、やはりこの先の顛末は観てのお楽しみ。
なお劇中、フェアレディZが2シーターになったり2by2になったりするのはご愛嬌です(笑)。
豪快過ぎるカースタントにただただ拍手
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この大ジャンプ、フェアレディZに乗っていたドライバーは大丈夫だったのか、と心配になる程にクラッシュするのですが、運転していたスタントマン・三石 千尋氏は、脊髄圧迫骨折で40日も入院することになりました。
ロケ場所は都会のど真ん中、港区芝浦。今も当時のまま残る東京ポートボウル至近の道路から、幅30m(現在は護岸工事で幅が狭くなっている)もの芝浦運河を飛び越えたのですから、ただただ驚き。
ちなみにそのアクシデントシーン自体も、のちのTVシリーズのオープニング映像にてしっかり放映されているあたりも豪快過ぎます(笑)。
[イラスト&レポート:遠藤 イヅル/撮影:株式会社石原プロモーション・トミーテック/イラスト:遠藤 イヅル/製作著作:株式会社石原プロモーション]
昭和の刑事ドラマをこよなく愛する山本シンヤが徹底解説
団長(渡哲也)率いる“大門軍団”の刑事達と、それを見守る木暮課長(石原裕次郎)が、極悪な犯罪に立ち向かう姿を描く伝説のポリスアクションストーリー『西部警察』。そのシリーズ全話が「西部警察40th AnniversaryコンプリートDVD-BOX<ファイナルエディション>」として限定発売された。自動車研究家にして、昭和の刑事ドラマをこよなく愛する山本シンヤが“ファイナルエディション”を徹底解説する!